2017年2月12日日曜日

ディスコミュニケーション 〜「Thrill Mad Natural」て、どんな曲?



皆様、お久しぶりです。
今更ですが、2017年あけましておめでとうございます。


昨年は長期入院を3回も繰り返してしまい、
また目も包帯で塞がれた状態が続いたため、更新もままなりませんでした。

楽しみにされていた方には、申し訳ありません。

自分としても『重箱blog終了まで、あと2回』と言いながら、
一向にケリをつけることができず、もどかしい日々を過ごしていました。



そんな中、どうせあと2回は「小ネタ☆スペシャル」なんだから、
全部を一度にではなく、小ネタ1つずつを書き上がった順にアップしていけばいいじゃないか!
と思いつき、早速執筆に取り掛かったのですが、
これが大誤算!!

どんどん記事の内容が膨れ上がり、
「小ネタ」どころではなくなってしまいました。



よって今回は番外エントリーとし、
「小ネタ☆スペシャル」はこれとは別に、
予定通り、あと2回更新いたします のでご安心ください。


では、今回も重箱のスミを突きまくります!






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一時期、偶然ながらも初対面の方に
『「Thrill Mad Natural」はお好きですか?』
と問われることが、やたらと続いた。

ミツカワも一応、れっきとした大人 なので、事を荒立てるような真似はせず、
『ええ、好きですよ』と、涼しげな表情で簡潔に答えていたのだが、
実はその裏で、どうしようもないモヤモヤが溜まっていった。




それが、今回のテーマである
『そもそもTMに「Thrill Mad Natural」という
 タイトルの曲は存在するのか?』という問題だ。






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先にぶっちゃけたことを言うと、今現在、これほどこの呼称が一般化している以上、
存在する、としか言いようがない。


すなわち…

1990年冬〜91年春にかけて行われた「RHYTHM RED TMN TOUR」の模様を収録した
DVD「RHYTHM RED LIVE WORLD'S END I」

ここに収められた、シンセ・小室哲哉とドラム・阿部薫による、
掛け合い的なインストルメンタルのこと を、
世間(?)では「Thrill Mad Natural」と呼んでいるわけだ。






















































これは初発のビデオ時代から、そうクレジットされているので 間違いではない。

また、この演奏自体はそのままの形で、
1990年12月「RHYTHM RED TMN TOUR」スタート時から存在していた。

ここでミツカワが問いたいのは、
ではツアー・スタート時から「Thrill Mad Natural」というタイトルは、
"この演奏" のためのものだったのか?
ということだ。






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少々、分かりづらいので細かく説明しよう。


まず一般のファンの中で "このタイトル" と "あの演奏" が一体化したのは、
1991年3月に当該ビデオが発売された時から だろう。
ビデオのパッケージには "あの演奏部分" について、
はっきりと「Thrill Mad Natural」とクレジットされていたからだ。


もちろん「Thrill Mad Natural」というタイトル自体は、ツアースタート時から、
雑誌等、各メディアにて発表されたセットリストにも存在はしていた。

ただ、その時点では
"あの演奏" を「Thrill Mad Natural」と呼んでいたファンはいなかっただろう。



 何故か?



ここで「RHYTHM RED TMN TOUR」のセットリストの一例(注)を見てみよう。
「Thrill Mad Natural」の前後を確認してほしい。

 (注)このツアーでは公演日によって、セットリスト後半部分がかなり変更された。
    ただ、本項目には関係ないので割愛する。ここに載せたのはツアー初日のもの。







































まず押さえていただきたいのは、このセットリストから分かるのは
「Secret Rhythm」と「Time To Count Down」の間が
「Thrill Mad Natural」である、ということでしかない ということだ。


なぜこんな、持って回った言い方をするかというと、
この「Thrill Mad Natural」に該当する部分が、
実際のコンサートでは10分以上あった からだ。
しかも、その内容は1つの演奏(1曲)ではない。


この部分もツアー中に、内容・時間共に細かく変化したのだが、
ここではまず、前曲「Secret Rhythm」の終わりから、
次曲「Time To Count Down」スタートまでの、基本的な流れを見てみよう。






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全体は大きく4つに分けられる。
ここでは便宜上、番号をつけて呼ぶ。




 [演奏 - その1]

「Secret Rhythm」演奏終了後、メンバーは舞台を去り、
ステージ上には葛城哲哉1人が残される。

ここで、まずは葛城哲哉による文字通りの1人舞台が始まる。

ツアー開始当初は単にギターソロコーナーだったのだが、
すぐに彼の生声によるシャウトも加わるようになり、その後は
実質、葛城哲哉パフォーマンスショーコーナー になっていった。
このパートはツアーが進むにつれ、どんどん長くなり最終的には4分程度にまで育った。

特筆すべきはホール公演だけでなく、アリーナ公演になってもマイクを通さず、
生声でやりきっていた(!)ことだ。

ステージも客席も真っ暗な代々木体育館の舞台上、一人ピンスポットを浴びながら
♫〜 Tokyo Baby ! とシャウトする葛城の姿は圧巻で、
実のところミツカワにとっては、このライブで一番印象深いシーンだった。

この葛城哲哉ソロコーナーの終わりで、小室哲哉と阿部薫が舞台に戻ってくる。




 [演奏 - その2] (DVD収録パート)

ここで演奏されるのが、DVDに収録されている "例の演奏" である。
以降 [演奏 - その2] と呼ぶ。
これはDVDのままなので割愛する。

なおリハーサル(公開リハーサル「The Formation Lap」を含む)時点では、
この演奏直後、間髪を容れず高速のドラムが始まり、
それに合わせ、小室哲哉のアドリブ風シンセソロが演奏されていた。
しかし、実際のツアーでは演奏された形跡がない。




 [演奏 - その3]

前の演奏から引き続き、ここから小室哲哉のソロコーナーが始まる。
基本的にはTMやソロの作品をシンセで演奏するといった形である。

「天と地と」や同サウンドトラックの曲、「SEVEN DAYS WAR」
またツアー途中から(小室哲哉曰く「勝手に指が動き出して」)
「A Day in the Girl's Life」も演奏されるようになった。
ツアー最終日には、ここで「天と地と」のサビを本人が歌ったそうだ。

この演奏が終わると、待機していた阿部薫、葛城哲哉、浅倉大介も加わり、
注目すべき次の演奏 が始まる。




 [演奏 - その4]

ミドルテンポの演奏の上で葛城哲哉のギターがメロディーが奏でる、
ロックバラードといった風合いのインストルメンタル。
「天と地と」の様な、オリエンタルで大陸的な雰囲気も感じさせる。

ここは演奏メンバー・内容ともに、ツアー終了後の4月に行われた、
北九州スペースワールドにおける小室哲哉ソロコンサートの原型と言えるだろう。


この [演奏 - その4] は [演奏 - その2] のような、
楽器同士のセッションといった体のものではなく、
イントロ ー Aメロ ー サビ といった構成があり、
独立した楽曲として成立している。
さらに間奏部分ではギターソロからシンセソロまで用意されていた。


少なくともミツカワは、他でこの曲を聴いたことがない。
同時期の Mr.マリック「Psychic Entertainment Sound」や
「天と地と」サウンドトラック等との関連性を疑ったが、やはり違うようだ。

ということは、
このツアーのために制作された "名も無いインストルメンタル曲" ということになる。
同様の例としては、1986年のホールツアー「Fanks Dyna☆Mix」の
小室ソロコーナーで演奏された、アップテンポのインストルメンタル曲がある。




3分以上かけてこの曲が演奏された後(ツアースタート時のセットリストでは)
小室哲哉のピアノが鳴り響き「Time To Count Down」からライブ後半戦がスタートする、
というのが全体の流れだった。

途中書いたように、この「Thrill Mad Natural」は
 [演奏 - その1] 及び [演奏 - その3] 部分が、ツアーが進むにつれ時間がどんどん伸び、
最終的には全体で15分近くにまでなった。






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ここまでの説明で、ミツカワが抱き続けていたモヤモヤが分かっていただけただろう。

つまり「Thrill Mad Natural」とは、特定の演奏につけられた曲名ではなく、
「RHYTHM RED TMN TOUR」内での『コーナー名』
だったのではないか?
というのが、当時から今に至るミツカワの見解だ。



ただし最初に書いたように、
ここまで [演奏 - その2] 単独の曲名として一般化してしまった以上、
もう、事実上の曲名と言えるだろう。

そのこと自体に意義はない。

ただそのことによって、実際のツアーで行われていた
「Thrill Mad Natural」の実態がその影に隠れてしまったため、
この場に書き残そうと思った次第である。






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さてここまでは、ミツカワが当時からもんもんと考えていた個人的見解である。
では、オフィシャルではこの「Thrill Mad Natural」、どういう解釈なのだろう?



ここで2つの資料を引っ張り出してきた。

 1つはツアースタート時にヤマハから発行された「SPEED OF SOUND」
 「RHYTHM RED TMN TOUR OFFICIAL SOUND GUIDE」と銘打たれたガイド本だ。

 もう1つはツアー終了後に発行された藤井徹貫氏著のドキュメント本。
 「TMN “RHYTHM RED” TOUR DOCUMENT」



特に後者。

熱心な重箱blogの読者の方なら、この本にまつわる
の滲むようなエピソードがあったことをご記憶だろう。

ミツカワは以前、こちらのエントリーで、
そのコンサート演奏部分にまつわる
全内容をリストアップし再構成する という 苦行 を行ったことがある。
(現時点で『人生における無駄な時間 ワースト10』に、見事ランクインしている)


そう!
実はその際、このエントリーを書く日が来ることを見越して、
リスト内に「Thrill Mad Natural」用の別項を作り、
密かにその関連記述をリストアップしていたのだ!!





というわけで、ここからは 満を持して送る、
『そこんとこオフィシャルではどうなの?!』コーナー!






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まずはツアースタート時点ではどうだったのか?
「SPEED OF SOUND」より、
セットリスト各楽曲解説から「Thrill Mad Natural」部分を見てみよう。





































冒頭に "異色のナンバー" と書かれているので1曲として扱われているのかと思いきや、
その後を読むと、
・葛城哲哉のソロコーナー
・小室哲哉のソロコーナー
・小室哲哉と阿部薫による [演奏 - その2]
3つが内包されていることが分かる。

(コーナーの順番が違うが、これはまだツアースタート前なので、
 リハーサルを元に執筆されているからであろう)

というわけでツアースタート時点では、
例の [演奏 - その2] 単独で「Thrill Mad Natural」、という扱いではなく、
[演奏 - その1] 及び [演奏 - その3] を含んでいる ことが分かる。






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次にツアー終了時点ではどうか。


お読みになった方はお分かりだろうが、この「TMN “RHYTHM RED” TOUR DOCUMENT」は、
オフ日や移動日なども含めた、あくまでツアー全体のドキュメント本なので、
各楽曲が一覧できるようなものではない。

公演日によっては 演奏内容にほとんど触れていない日さえある。

また、ハッキリと曲名を書かないまま描写が続く文章もあり、
リストアップする際には、非常に気を使った。(というか、すり減った)



その上で、確実に「Thrill Mad Natural」のことを描写していて、
なおかつ本エントリーの参考となる部分を書きだしたのが、次のリストである。

鍵となるのは、当時『TMN 第4のメンバー?!』とまで言われた
謎のロボット「ガルボア」に関する演出部分 だ。























 ここでなんと、驚くべき大どんでん返しが起こる!!





[P.31]
 ガルボアが姿を現わす。
    〜中略~
 そこから葛城哲哉のギター・ソロ、
 小室哲哉のキーボード・ソロ(ドラムとのセッション 〜「天と地と」)
 が終わるまで静止する。
    〜中略~
 「Thrill Mad Natural」の最後でガルボアは再び動き始める。
    〜中略~
 そして、ステージ脇へと姿を消す。



[P.44]
 ギター・ソロ 〜 キーボード・ソロから続くインスト「Thrill Mad Natural」の後ろに
 「Good Morning Yesterday」が入った。



[P.97]
 ガルボアがステージから去る「Thrill Mad Natural」を短く、〜

(ページナンバーは後から発売されたペーパーバック版とは異なるので注意)





まず [P.31] [P.97] に書かれている "ガルボアの退場シーン" は、
上記 [演奏 - その4] 部分での演出 である。

一応(伝わったかどうかは別として)実際のライブでは、
完成したもののすぐに動かなくなってしまったガルボアが、
メンバーたちの奏でる [演奏 - その4] によって再生し、
舞台を去っていくという演出になっていたわけだ。

(なので、[演奏 - その2] しか収録されていないDVDでは、
 前曲「Secret Rhythm」で登場したガルボアのその後がうやむやになってしまっている



この記述を見る限り、このドキュメント本でも
[演奏 - その4] を「Thrill Mad Natural」として扱っている ことが分かる。




問題はここからだ。

[P.31] では [演奏 - その2] を、
小室哲哉のキーボード・ソロの一部(ドラムとのセッション)として扱っている。


その上で [P.44] を読むと、
「Thrill Mad Natural」という曲は [演奏 - その4] のことであり、
[演奏 - その1〜3]  は、単なるギター&キーボード・ソロ に過ぎず、
=「Thrill Mad Natural」には含まれない、
という風にも読めてしまう!!





         まさかの展開…





…ただである。


はっきり言ってしまうと、この件に限らず当ドキュメント本の記述には、
全体に渡って かなり揺れがある と感じる。

そもそも執筆にあたって、
藤井徹貫氏の中に「Thrill Mad Natural」の確固たる定義付けがあったのかも疑わしい。
また 誤植が非常に多い ことも、以前のエントリーで指摘した通りだ。


しかし、それでもガルボアの退場シーンに言及している以上、
やはり [演奏 - その4] は間違いなく「Thrill Mad Natural」であるという認識 なのだ。






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さらに補足しておくと、[演奏 - その2] は先に書いた
1991年4月・北九州スペースワールドでの小室哲哉ソロコンサート「THINK of EARTH」にて
「SPACE WORLD(注)」と称された曲の1部分として演奏されている。
 (注)翌年のV2ライブで演奏されたものとは同名異曲。

これを見ると、ツアーの時点では小室哲哉自身も独立した一曲というより、
"パーツ" 程度の認識 だったのではないかと思われる。








































     小室哲哉ソロコンサート「THINK of EARTH」の様子。
     「RHYTHM RED TMN TOUR」の終了から1ヶ月にも関わらず、
     この時点で既に、MOOG SYSTEM 35 / ソリーナ / ハーモナイザーなど、
     次ツアー「Tour TMN EXPO」の機材セットが完成していることに驚かされる。







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以上2冊の記述をまとめると、オフィシャル的な観点から見ても
「Thrill Mad Natural」というのは、[演奏 - その1 〜 その4]  までを含む、
全体のコーナー名として設定されていた と言える。

実際、ビデオのクレジットも、
読み手次第で "曲名" としても "コーナー名" としても、どちらともとれる わけだ。


結局、オフィシャルでの設定はなく、
ビデオ発売後にファンの間で [演奏 - その2] の曲名として広まったものが定着し、現在に至る…
というのが真相ではないだろうか。

もっと言えばファン同士の間でも、お互い確認していないだけで、
Aさんは "コーナー名" として発言し、それを聞いたBさんは "曲名" として受け取るという、
すれ違いの会話をしている可能性もある。


さて、
あなたの「Thrill Mad Natural」は一体どちらだろうか?






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最初に紹介した『「Thrill Mad Natural」はお好きですか?』という質問に、
『ちょっと待ってください!あなたの仰っている「Thrill Mad Natural」とは
 〜ウンヌンカンヌン〜』などと言わなくなった最近の自分を省みると、
あー、俺も大人になったなぁ… と思います。



まあ、TM関連に対して言わなくなっただけだけどね。
特撮関連だと もっと悪化してる 気がするけどね…。


『ちょっと待ってください!あなたの仰っている「ハカイダー」とは
 「人造人間キカイダー」に登場したライバルキャラクターのことを言っているのか、
 それとも「サンダーマスク」第6話に登場した…湯hrjg:;h;fpkg:slhんk、p@:!!』




       …はぁ、はぁ、はぁ、




また次回まで、お時間をいただきます。
なかなかコメントのお返しも出来ませんが、ありがたく読ませていただいております。

んじゃ、また。







1つ書き忘れていたので、追記いたします(2017年2月13日 午前2時30分)

TM関連の楽曲を管理する「音楽出版ジュンアンドケイ」では、
[演奏 - その2] に対し「Thrill Mad Natural」が曲名として付けられ管理されています
ただこれは、ビデオに収録され商品化されたものを、機械的に追認しているに過ぎません。

夢物語ですが、もしもこの先
「RHYTHM RED TMN TOUR」が全収録されたDVDなどが発売された場合、
どのような曲名が付けられて管理されるのか、興味あるところです。