2016年8月14日日曜日

[ラストまであと2回] コロシアムと「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 地の巻

前回からずいぶん間が空いてしまいました。
ミツカワです。



この「TM NETWORK の重箱のスミ!」は本エントリーを含め、あと2回のため、
今回も内容を詰め込みすぎました。
いつもの事とは言え、スクロールのしすぎで腱鞘炎にならないように、お気をつけください。

とにかく内容が多いため、とっとと始めますが、
このエントリーはシリーズの為、いきなり読んでもなんのことやら分からないと思います。
まだお読みでない方は、こちらから順にお読みください。

・コロシアムを暴け・下準備編 /「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 前編
・コロシアムを暴け・下準備編 /「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 中編
・[ラストまであと3回] コロシアムと「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 天の巻





一応ですが、先に 当シリーズの前提を2つ。

・代々木3公演のうち、初日(1988年3月14日)は収録が行われていない(根拠はこちら

・CD「TMN COLOSSEUM」の制作には、メンバー3人が関わっていないため、
 新しく演奏されたパーツは無く、基本的に有り物の素材を切り張りして作っている。



また前回同様、ここでは当エントリーの主題である、1988年春に行われたアリーナツアー
「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」のことを『KDD』と表記します。

では最後の「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」編、
スタート!!












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♫ 1988年3月15日(代々木公演二日目)の映像

各曲を個別に見る前に、長いことほったらかしにしてあった、この件にふれておこう。
DVD「FANKS the LIVE 2」における3種類の映像素材
・1988年3月15日 - 代々木公演二日目
・1988年3月16日 - 代々木公演三日目
・1988年4月4日   - 広島公演
の内、代々木公演における2種類の見分け方である。


なお前回でも念を押したが、ここでの検証は全て
CD「TMN GROOVE GEAR」に収録されたKDD関連曲4曲

「SELF CONTROL [LIVE VERSION]」
「NERVOUS [LIVE VERSION]」
「ALL-RIGHT ALL-NIGHT [LIVE VERSION]」
「DON'T LET ME CRY [LIVE VERSION]」

に付けられた “1988年3月16日収録” というクレジットがスタート地点になっている。
この公式クレジットが誤っていた場合、
このエントリーの筋立ては全て崩れ去ることをお断りしておく。




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その上で結論であるが、素材として収録された1988年3月15日・16日の内、
このDVDに使われている 映像は大半が16日のもの である。
(音声は完全に16日のもの)

この根拠は非常に単純で、


Aコース

3月16日とクレジットがある「TMN GROOVE GEAR」に収録された「All-Right All-Night」と、
このDVDのアウトテイクである ビデオ「FANKS the LIVE 4」に収録された
「All-Right All-Night」の音が同じ。

その ビデオ「FANKS the LIVE 4」収録の「All-Right All-Night」において、
映像と音がズレているカットは全て広島公演のもの。

つまり「All-Right All-Night」における代々木公演の映像は、ほぼ全て16日のもの。


Bコース

同じく3月16日とクレジットがある「TMN GROOVE GEAR」に収録された
「Self control」「Don't Let Me Cry」にのっている音割れノイズと同種のノイズが、
「TMN COLOSSEUM」収録の「Resistance」「Self control」にも発生している。
前エントリー参照

その「Resistance」と同じく、DVD「FANKS the LIVE 2」に収録された
「Resistance」の音声部分にも同じ場所、同じ量、ノイズが発生している。
前エントリー参照

その音声素材は、同日、つまり3月16日の収録である可能性が高い。

以下、Aコースと同じ。
その音声と映像がズレているカットは全て広島公演のもの。

よって、代々木公演の映像はほぼ全て16日のもの。


Cコース
上記2曲に限らず、このDVDの最初から最後まで、
音とズレていると気付いた映像は、全て広島公演のものであった。



こう見ると、音声・映像、共に、
むしろどこに、パッケージにクレジットされている
 “1988年3月15日” の素材が使われているのか疑問 だ。

先に強調しておくが、今回見ていく3曲には “3月16日以外の素材” も使われているが、
それらは いずれも3月15日のものではない。




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では、15日の映像は使われていないのだろうか?
というと、そうでもないのは以前みたとおり
あまりに微妙なカット ↓ だが…。



































そこで最後に、その他の 3月15日の映像ではないか?と疑われる、
(でも多分違う)
カットを紹介しておく。




♫〜 下手側のカメラ

気になったのは代々木公演の映像に映っている、下手側(舞台向かって左)に設置された、
この大きな三脚に設置されたカメラだ。


























これは上手側に設置されたカメラのようにタイヤが付いているわけではないので、
その大きさから見ると移動させるには、それなりの手間がかかるようにみえる。

にもかかわらず、設置場所が映像によって変化しているのだ。








コンサートスタート時(まだ幕が閉まった状態)




























コンサート前半




























コンサート後半





























ただ、これだけでは何とも言えない。

というのも、この DVD「FANKS the LIVE 2」は、収録曲のバランスが、
異常なほどコンサート前半に偏っており、後半は最終「Human System」1曲のみ。
(「Children Of The New Century 〜 KOMURO keybord solo」から「Human System」までは、
  途中7曲も飛んでいる!

これ以外の後半曲としては、当時の特典ビデオ「FANKS the LIVE 4」収録の
「All-Right All-Night」が存在するのみだ。

その「All-Right All-Night」にしても
「Children Of The New Century 〜 KOMURO keybord solo」からは3曲飛んでいるので、
これだけあれば、この大きな三脚を担いで移動させる事は可能だ。



さらに実際のライブとDVDでは
「Kiss You」⇄「Resistance」
「Time Passed Me By」⇄「Telephone Line」
曲順が組み替えられている

これでは実際の流れが見えてこない。







♫〜 木根尚登のドリンク

さて、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
映像チェックをしていながら、すっかり忘れていたのだが、以前小ネタで
"木根尚登のドリンクが1曲目にして落下する" という話を書いたことを思い出した。

『そうだ!これほど判りやすい収録日シンボルはないじゃないか?!』

というわけでまずは、1曲目でロストしたドリンクがどの時点で復帰するのか確認した。
結果、このDVDに収録されている曲の中では
「Telephone Line」の時点で復帰していることが判る。


ということは1曲目「Be Together」の2番から「Telephone Line」までの間、
つまり「Resistance」「Kiss You」の映像(注)で、
木根尚登のラックの上にドリンクが乗っていれば、
それは 落下した日とは違う公演日の映像 ということになる。



というわけでドキドキしながら再度、該当箇所をじっくり見直したのだが、
結果 "ドリンクのある映像" は全て広島公演のものであった。

もちろんこれは、木根尚登の背後のラックの上が確認できるカットのみの話なので、
これをもって、代々木ではほぼ単日の映像しか使われていないと断定するわけにはいかないが、
やはり代々木の映像は大半が3月16日であり、
使われていたとしても、3月15日のものは補助的な役割にとどまっていると言えるだろう。




 (注)ただし、DVDではこの後に収録されている「Time Passed Me By」も、
    本来の曲順では「Telephone Line」の前に演奏されていた。
    しかしこの曲の映像には、木根尚登ブースが一切映っておらず、
    残念ながら判断はできなかった。

    このDVD収録曲中、唯一この曲のみ、
    広島の映像が使われず代々木公演の映像だけで構成されている
    これは以前指摘したように、
    ツアー中盤からこの曲における小室哲哉の立ち位置が変わったため、
    映像を混ぜることが出来なかったのであろう。

    なので “代々木の別日映像” を検証するにはうってつけの曲なだけに、
    このドリンク判定が使えないのは残念だった。





ではここからいよいよ本題。 

CD「TMN COLOSSEUM」収録の "B群" 3曲
・Fool On The Planet
・Beyond The Time
・Be Together
を個別に見ていこう。










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「Fool On The Planet」


前回は「TMN COLOSSEUM」収録のKDD音源の中で、
2曲(「Resistance」「Self Control」)に発生していた音割れノイズに注目したが、
もう1曲、これとは別種の不可解なノイズがのっている曲がある


それが「Fool On The Planet」である。


歌が終わった後、エンディング部分に注目してほしい。
4:13 と 4:24 の2箇所で、かなり大きく “ボコッ”
『異音』ともいうべき音が入っている。


当初、自分の印象としてはマイクに何かが触れたような、
あるいは大きな風圧がかかったような音に聴こえた。
通常であれば、ボーカルマイクでよく発生するような音だ。

しかしこの部分、宇都宮隆は既に歌い終わっている
もしボーカルマイクにのったノイズなら
オフにしてしまえばいいだけ なので、
この “ボコッ” という音がボーカルマイクに起因するものとは考えにくい。



では、これはどこで発生したノイズだろうか?。
ここでヘッドフォンを着け、腰を据えて聴いてみると別の理由が浮かび上がってきた。




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以前、こちらのエントリー"アリーナツアーに切り替わるタイミングで、
幾つかの曲に補助的に、打ち込みのシンセベースが導入された" と書いた。

この『試験』を経て、同年8月の東京ドーム公演から人間のベーシストが消え、
全編打ち込みのシンセベースに切り替わるわけだ。



この異音。
どうも、その シンセベース絡みではないか? と思われる。

問題の箇所を聴いてみると、このエンディング部分、
かなり低域でシンセベースが鳴っている



…のだが、なぜか 7〜8小節目だけ空白になっている。

ここで終わったのかと思ったら、9小節目にはまたシンセベースが入ってきて、
不自然というか、トラブルの臭いがプンプン する。
で、この空白部分の頭に例の “ボコッ”(2回目)という音が入っているわけだ。(譜面参照)



また、その前のエンディング 1〜2小節目では、入っているのかどうか分からない程、
薄い音だったのが “ボコッ”(1回目)という音の後
3小節目からは急に可聴帯域のボリュームが上がっているようにも聴こえる。

歌い終わってからの12小節





























この状況を鑑みるに、この “ボコッ” という音の正体は、
収録時にレコーダーがシンセベースの重低音についていけず、
クリップを起こした音 なのではないだろうか。




どちらにせよ、この部分は単に曲のエンディングというだけでなく、
2枚に渡る CD「TMN COLOSSEUM」全体のエンディングにもあたる部分である。
ここに「Fool On The Planet」を置いたのは、制作側もそれを意識したに違いない。

にもかかわらず、この異音は一度気付くとかなり目立ち、興ざめさせてしまう。

こういうところこそ、本来なら修正すべきだと思うのだが、
なぜこのノイズが素通りしてしまったのか、理解に苦しむ。




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さて、異音以外のところを見てみよう。

同じくエンディング部分についてであるが、この「TMN COLOSSEUM」版では
既に Bass 担当の日詰昭一郎は演奏を終えている。

だが代々木3公演を終えた後、次の名古屋公演からは、
彼もこのエンディング部分に音を加えることになる。
Drum のシンバルロール(これは代々木の時点で既に行われている)に合わせ、
スライドアップを挿入という、演奏というよりは “雰囲気モノのSE” といった感じの音だ。

つまり、このプレイの入っていない「TMN COLOSSEUM」収録の音源は、
代々木3公演での演奏ということになる。
またその他のパートも、多くが前回の3曲同様 3月16日 のテイクで間違いない。



例えば3月16日の演奏で、1番特徴的な(判りやすい)ところは、
全ての演奏が終わった後、1人残った小室哲哉の演奏する “アー” というボイスサンプルが
A → E→ A(オクターブ下)
という、半ば投げやりなフレーズで終わる ところだ。




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ところが、ここからが前回分析した3曲と異なる部分なのだが、
この「TMN COLOSSEUM」版「Fool On The Planet」には
"3月16日以外の音" が混ぜられている



まず、はっきり言えるのは 歌が違う。

こう言い切る根拠は単純明快。
実際の3月16日は歌詞を間違えていた からだ。


この日の宇都宮隆は、1番のAメロを

♫〜 星の降る小高い丘まで
   今すぐに君を連れて行く
   窓越しじゃ物足りないから
   今すぐに君を連れて行く ⇦ (正しくは ♫〜 できるだけ夜空の近くへ)

と、歌ってしまったのだ。

そんなわけで、この「TMN COLOSSEUM」版は、ボーカルが差し替えられているのだ。
この件は、次の「Beyond The Time」でもう一度、触れる。




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またもう一点、注目すべきところがある。

この時のライブアレンジで特徴的な、本来2番にあたる所を丸ごとカットして、
マルチテープからサンプリングした小室哲哉による多重コーラスを延々流す箇所があるが、
ここで聴けるサンプリングコーラスは、
編集、および差し替えである。



まず前提として、あまり言及されないがこの長い間奏部分。
これでも実際の演奏より、短く編集されているのである。

「TMN COLOSSEUM」版 → 28小節
         本来の演奏 → 32小節

このようにそもそも尺をいじっているわけで、素材そのままでは使えないのだ。




それを踏まえた上で、ここに入っているサンプリングコーラスを2種類に分ける。

まずは
♫〜 You might think  ♫〜 just a dream
という原曲サビのコーラス。

これは別日の演奏に差し替え、あるいはCD制作時に後付けされた可能性が非常に高い。
実際のツアーでも、この歌詞付きのコーラス自体は流れていた。
ここでは "3月16日以外のテイクに差し替えた” 可能性を指摘している

つまり、もともと流れていた ♫〜 アー や ♫〜 ウー などのコーラスの上に、
後付けで歌詞付きのコーラス部分を『盛った』のではないかということだ。


一聴して判るが、この歌詞付きのコーラスだけ、
バックの ♫〜 アー や ♫〜 ウー などのコーラスとは別物の、
ド派手なディレイがかけられている
実際のライブではこんな派手なエフェクトはかけられておらず、
これは確実に スタジオで加工したもの だ。

また実際のツアーではワンセットで流れていた
♫〜 Make a wish ♫〜 make it true というパーツが、
この「TMN COLOSSEUM」版には欠けている。




さらに背景の ♫〜 アー や ♫〜 ウー というコーラスも、
別の日のテイクと差し替えている可能性がある。
実際の3月16日は、もっとモジュレーションを深くかけたり、
メロディーっぽく弾いたりして、少々サイケデリックな感じであった。




個人的には両方とも全取っ替えされていると見ているが、これに関してはあえて断定しない。

というのも、このサンプリングコーラスはサラウンドで会場を駆け巡っていたため、
聴き手の位置によってそれぞれ聴こえ方が違い、これが正解という実態が掴みにくい。
「TMN COLOSSEUM」で聴かれる音は、
あくまで CD (2ch) 用に再構築したものである。
(これに関しては DVD「FANKS the LIVE 1」における
 「Get Wild」「Maria Club」のイントロも同様)

ただ先に書いたように尺が異なっている以上、手が加えられている事は確実だ。




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ここまでお読みいただいたように、前回取り上げた “A群” 3曲と異なり、
今回取り上げる “B群” 3曲は、それぞれ DVD「FANKS the LIVE 2」の音声トラックと、
同様の素材(3月16日分)を使用しつつも、
一部、あるいは大胆に別日のトラックと差し替えられていることが特徴だ。

では、次の曲を見ていこう。












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「Beyond The Time」

この曲は非常に興味深い。

以前「Ipanema'84(TMN COLOSSEUM での表記)」を取り上げた際
ボーカルの声質に関し “初視聴時に違和感を覚えた曲がもう1曲ある” と書いておいたが、
それがこの「Beyond The Time」である。
極端に言うとヘリウムガスを吸ったような声に聴こえ、ギョッとしたのだ。

そもそも小室哲哉の発言によれば、
この曲のAメロ・Bメロにおけるメロディーというか音域は、
"宇都宮隆の暖かみのある中音域を活かす" という意図で組み立てられていたはずだ。

ところがこの「TMN COLOSSEUM」版では、その中音域の膨らみがバッサリと欠け、
ペラペラの声になっている。

同じような声質の「Ipanema'84」に裏があったように、
この曲にも 何かしらの細工が施されている と思われる。




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まずは “なぜ、そんな細工をする必要があったのか?” という点。
その理由は非常に単純だ。

実はこの曲の素材が収録された3月16日の公演にて、
宇都宮隆は2番の歌い出しを 入り忘れてしまい、
空白になってしまったのだ。


具体的に言うと ♫〜 夢と言う船に導かれて 〜 という部分は無言で、
 ♫〜 過ちの 〜 から歌い出している。

さらにその後も動揺したのか、
♫〜 いつかまた 戻れる日がある 〜 と歌うべきところを 
♫〜 この胸を 君に差し出して
と間違えてしまい、結局 2番のAメロ全体がグダグダ になってしまった。


「TMN COLOSSEUM」制作時にこの空白部分を補うため、
別のところからボーカルを持ってきたのだ。
そして、そのテイク違いの辻褄合わせのために声質を整えた結果、
違和感のある声になってしまったと思われる。


ここまでは「Ipanema'84」と同じ。
しかし、この曲の本当に興味深いのはここからだ。




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せっかく差し替えたのに、その差し替えた、
2番の歌い出しの歌詞が間違っている


♫〜 愛という ←「TMN COLOSSEUM」版
♫〜 夢という ← 正しい歌詞


普通に考えれば、修正するのにわざわざ歌詞を間違えたテイクを持ってくる理由は無いわけで、これはつまり、
修正用として用意できた別素材が、
歌詞間違いをしたテイクしか存在しなかった、
ということを示唆しているわけだ。



というわけでこの “別素材” が、いつ、どこでの収録テイクなのかは、
 ♫〜 愛という〜 と間違って歌ってしまった日・会場が解れば、
パズルが一気に解けるはず(注)なのだが、
このエントリー執筆時点では、残念ながら解らなかった。
ご存知の方はぜひお教え下さい。

 (注)もっとも『予備の録音テープは山程あるけど、
    全部歌詞を間違えてました!てへ♡』という可能性が無いとは言い切れないが…
    言い切れないが… 言い切れないが…




ただ調べたところ、少なくとも
DVD「FANKS the LIVE 2」ジャケットにクレジットされた 3月15日(代々木公演2日目)では、
ちゃんと ♫〜 夢という〜 と歌っていたので、なぜここから流用しなかったのか?
DVDに15日の映像がほとんど確認できなかったことも合わせ、
かなり不可解 な部分である。


これはかなり穿った見方であるが、3月15日分は映像なり音声なりに問題があり、
そのために急遽、メインの3月16日分に対する予備素材として、”最終公演一つ前” という
微妙な日程の広島公演の撮影をしたのでは?という深読みも成り立つ。
(先の「Fool On The Planet」のシンセベース由来の異音を聴けば、
 前日の15日分ではもっと録音に問題が起こっていたという可能性も考えられる)



そして “代替パーツが別の1公演分しかない” ということは、
先の「Fool On The Planet」における差し替えパーツも、
この ♫〜 愛という〜 と歌ってしまった公演日と同じ日が出処という可能性が高い。




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木根尚登のコーラスも、一部差し替えられている。

3月16日の公演では本来2カ所、歌詞を間違えていた。
以下の通りである。

1:33  ♫〜 君だけが信じる全てだから →  [修正後] 望む
1:45  ♫〜 You can change your future 時の向こう → [修正後] destiny




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さて、ここまではヴォーカルに注目してきたが、それ以外の演奏パートに関しても見ていこう。
この曲の公演日毎の判りやすい違いとして、イントロとアウトロ が挙げられる。


イントロ最初の8小節は小室哲哉の手弾きによるもので、公演毎に微妙に異なる
左手を入れるタイミングが違ったり、装飾的なフレーズを付けたり、
途中からオクターブ上にしたり、コードをベタで抑えているだけの時もあった。


エンディングに関しては、バンド演奏が終わった後、
シングルCDバージョンで聴かれるような、
不穏なシンセストリングスのフレーズも小室哲哉の手弾きだ。
ここも公演日によってはかなり引っ張る日と、あっさり終わる日があった。
(「TMN COLOSSEUM」版はお聴きの通り、あっさり終わっている)


また、トリートメントされて、ほとんど目立たなくなっているが、
3:16  ♫〜 You can change your future 闇の向こう
で左側に聴こえる小室哲哉のミスタッチも3月16日独特のものだ。


以上の点から見ると、少なくとも、
小室哲哉の手弾きパート + 松本孝弘の特徴的なギターソロは3月16日のものである。




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では、歌以外の演奏は全て3月16日のものかというと、そうではない。
まず注目すべきは2番の終わりだ。



この「TMN COLOSSEUM」版では2番終了部分の “ウー” というボイスサンプルの直後に
“ゴーッ” というSE が入っているが、
これはアリーナツアー終盤になって加えられた音である。

この部分、代々木を含むツアー序盤から中盤までは、1小節間丸々無音であった。
しかし実際に演奏してみると、この1小節は意外と長く感じられたようで、
観客側には曲が終わったのかと戸惑う様子も見られた。
そのためSEを加えて隙間をなくしたと思われる。

つまり この部分(瞬間)は、ツアー終盤の音 が使われている。



しかしだ。
その直後、再びバンドが in してきてから最後のサビが始まるまでの8小節。(3:45 〜 4:02)
ツアー終盤になると、この部分で小室哲哉がソロを弾くようになる。

しかしこの「TMN COLOSSEUM」版では特に目立つ動きをしていない。
つまり ツアー終盤のテイクではない ことになる。


という訳で、この部分だけを見ても「TMN COLOSSEUM」版は、
複数公演の演奏をチャンポンして作ったトラックということになる。




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もう一つ、3月16日の演奏ではないものがある。
Drumトラック だ。

このアリーナツアーの中でも「Beyond The Time」は発売直後の新曲中の新曲である。(注)
それもあってか、他の演奏曲に比べてもアドリブ要素が少なく、
かなり原曲に忠実に演奏されている。

 (注)
 ・「Beyond The Time」シングル発売 1988年3月5日
 ・「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」1988年3月14日 スタート
 (このページ ↓ 順番を間違えてます。どなたか権限のある方、修正願います。
  単語記事: BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を超えて~




しかしここで、
イントロ部分のDrumの入り方 (0:16) に注目していただきたい。

原曲では2拍目に入るスネアのショットが「TMN COLOSSEUM」版には無く、
3拍目からスタートしている。














  原曲での Drum in 部分。赤丸で囲ったところが「TMN COLOSSEUM」版では欠けている。




これはライブアレンジではない。

通常、この部分はツアースタート時から最終日まで変化することなく、
原曲に忠実に演奏されていた

つまり「TMN COLOSSEUM」で聴けるテイクは、
ただ単に、山田ワタルが本来の2拍目から入りそびれてしまっただけと思われる。


で、問題なのは3月15日(代々木公演2日目)も16日(代々木公演3日目)も、
この部分は原曲通り演奏されていたということだ。
なので、当初は16日の演奏から何らかの理由で、
頭のスネア2発を削除しただけかと思ったのだが…



しかし、その後の演奏にも16日と異なる部分が見つかった。
その部分が、1番の最後の小節だ。

「TMN COLOSSEUM」版には3拍目の裏に Tom が一発入っている (2:02) が、
これは ツアー中盤以降の特徴 だ。
Tom では無くスネアの時もあったようだが、
どちらにせよツアー序盤の時点では、ここに仕掛けは組み入れず、
原曲通りストレートに演奏されていた。


この2点から見ても、
この Drumトラックは代々木公演のものでは無い。




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以上まとめると、この「TMN COLOSSEUM」版「Beyond The Time」は、
複数のテイクをツギハギして作られている
片方(小室哲哉の演奏など)は3月16日のテイクで間違いないが、
もう一方はいつのテイクだろうか?



・3月15日は歌詞を間違えていなかった。(なのに、それは使われていない)
・“ゴーッ” というSE部分が存在している。
・Drum トラックの特徴。

という点から、この予備テイクは代々木体育館3公演のものではない。
もう少し踏み込むと、SEやDrum の項で触れたように、
ツアーもかなり終盤のものと思われる
ただし最終日ではない。

となるとやはり、DVD の映像と同じく、
『4月4日 広島サンプラザホール』のテイクが使われているのだろうか?




なお、この曲でも3:42のところで “プツップツッ” と2回、プチノイズのような音が入る。
ただこれは収録時のノイズではなく、
この “ウー” というボイスサンプル自体に付いていたノイズのようだ。












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「Be Together」

さて自分としては、この曲こそがKDD関連曲に限らず
「TMN COLOSSEUM」全体で見ても1・2を争う問題曲だ。

本題に入る前に、まずはこれを。


前回書いたように、 DVD「FANKS the LIVE 2」ではバッサリ☆カットされていた
木根尚登の声が、このコロシアム版では無事サルベージされている


また DVD「FANKS the LIVE 2」版の方が、若干テンポが遅く、その分時間が長い
ただこれは以前「イパネマ '84」で指摘したのと同じく、
制作時期の違いからくるマスターテープの状態や再生機器の違い程度のことで、
テイク違いというわけではない。




———————




さて、KDD演奏曲に関しては DVD「FANKS the LIVE 2」と
CD「TMN COLOSSEUM」で収録曲が3曲被っているが、
前回見たように他の2曲「Resistance」「Telephone Line」が、
基本、同じテイクのミックス違いでしかないのに対し、
この曲はDVD収録のテイクとははっきり異なる。

自分は1992年8月21日午後2時(その瞬間、時計を見たので憶えているのだ)
このCDを初めて聴いたのだが、冒頭流れてきたオープニングSE音から
『これはDVDと同じ音声だ…』と思いこみガッカリしていたところに、
全然聴いたことのない演奏 が始まって、かなり驚いた。



ただし、今回改めてじっくり聴いたところ、さらに驚く羽目になった。
これだけ印象が異なるのにも関わらず、
冒頭の『Welcome to the FANKS!』を含む、
歌、ギター、ベース、ドラムはDVDと同じテイクだったのだ!!
その差から DVD とは丸ごと別日の演奏だと思っていたので、今になって再び驚いた。




ちなみに、この印象的な『Welcome to the FANKS!』は、
代々木公演終了以降、派手なディレイがかけられるようになり
『Welcome to the FANKS! FANKS! FANKS!…』となる。

ここからも、この「TMN COLOSSEUM」版、
および DVD の『Welcome to the FANKS!』部分は、
代々木公演のテイク であることが判る。




ということは、この「TMN COLOSSEUM」版は、
DVDと同じ音声素材(3月16日・代々木公演3日目の演奏)から、
小室哲哉のパートだけを丸ごとカットして、
ショルダーキーボードの演奏と差し替えてあるのだ。

これについては当時、ライヴ・スタート直後から、
小室哲哉がショルダーキーボードでフロントに飛び出してきた公演日があった…

という情報を見たか聞いたかしたような憶えがあるのだが、
どの雑誌だったのか、あるいは別の媒体だったのかも含め、あまり自信がない。
もし、ご記憶の方はお教え願いたい。




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ところで、派手なショルダーキーボード・プレイに耳を奪われがちであるが、
もう一つ、この「TMN COLOSSEUM」版にはDVDのテイクと大きく異なる点がある。

それは曲全体にわたって、
固めのエレピっぽい音色によるコードバッキングが加わっている点だ。
この音色は地味ではあるが、かなり存在感がある。

個人的には、このバッキングの存在が
「TMN COLOSSEUM」版「Be Together」のカラーを決定付けているように感じる。
特に1番Bメロの ♫〜 2人だけがリアリティー の部分に裏打ちで入る所など、
他の「Be Together」では味わえない、おしゃれ感を演出している。





















また、そのフレーズをじっくり聴くと、
・繰り返しが少ない。(コピペではない)
・全編に渡って、バッキングパートにしては、かなりアグレッシブに動く。
という点に耳がいく。

この辺りを聴くと、小室哲哉の特徴である、
全編、手弾きで一気にデータ入力(して、一気にクオンタイズ)したトラックのようだ。




———————




このパートが加えられた理由は簡単に推測できる。

小室パートが通常と異なり、単音しか弾かなくなった結果、
Aメロなどで誰も和音を弾いていない状態が生まれているからだ。
本来、こんな時こそ木根尚登の出番 だと思うのだが、
彼はこの部分では一切ギターを弾かず、ボーカルに専念している。




だが、このバッキングパート。
元素材の出所となると、全くの謎 である。

この(擬似)LIVE CD「TMN COLOSSEUM」が制作・発売された1992年の時点で、
「Be Together」が演奏されたのは以下の通り。

・Kiss Japan Tour(ホールツアー)
・KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX
・STARCAMP TOKYO(東京ドーム公演)
・CAROL TOUR(ホールツアー)
・Camp Fanks!! '89
・RHYTHM RED TMN TOUR

ご覧のように「EXPO」関連以外では毎回演奏されているものの、
いずれのツアーバージョンにも、このようなバッキングは入っていない

特に「CAROL TOUR」(ホールツアー)での同曲は、
「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」のアレンジがそのまま流用
(ただしベーシストがいなくなったので、Bassパートは新たに打ち込み)されており、
最初はここを疑ったのだが、違うようだ。

また、アルバム「humansystem」収録のオリジナルバージョンについてであるが、
確かにこのバッキングパートとよく似た音色・フレーズが入っているのだが、
リズムが細く異なっている
よって、ここからパーツを流用して、貼り付けたというわけでもない。






となると考えられるのは、このエレピ・バッキングは、
ショルダーキーボード・プレイ時の公演専用に用意されたパートであり、
「TMN COLOSSEUM」制作時にショルダーキーボード・パートと、
ペアで移植されてきたという可能性だ。


ただ何故、わざわざ2つのテイク(3月16日 + x月x日)を、
混ぜ合わせる必要があったのかは謎 だ。


DVD「FANKS the LIVE 2」を聴くと、
小室哲哉パートに前回指摘したのと同様の音割れノイズが発生している。
(例えば2番直後のギターソロ部分・左側)
これを回避するため、小室哲哉パートを一旦、全削除したのだろうか?

ただそれなら “小室哲哉パートのみ移植” などとせず、
どうしてショルダーキーボード・バージョンのテイクを、ドラムやギターなど、
丸ごとそのまま収録しなかったのだろうか?




これこそ、ミツカワ個人の考える「TMN COLOSSEUM」最大の謎だ。

真相は闇の中であるが、どちらにせよ、
このようなレア・テイクが聴けたのは素直に嬉しかった。
(で、テンションが上がったところで、
 次曲の「Resistance」がDVDと同じテイクでガッカリしたのだが…)




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最後に余談であるが、DVD「FANKS the LIVE 2」での同曲の修正に触れておく。
「TMN COLOSSEUM」版では、丸ごと差し替えられた小室哲哉のキーボード・パート。

本来、3月16日での演奏は、ギターソロが終わった後、
全員でキメのリズムを演奏する部分の後半で、リズムを大きく崩してしまっていた
このテイクが活かされている DVD「FANKS the LIVE 2」では、
この部分がうまく修正されているが、よく聴くとその痕跡を聴き取ることができる。



ちなみに音の修正は効いても、映像がそのままではすぐにバレてしまう。
このDVDではご丁寧に、
その瞬間だけ小室哲哉からカメラが外れる。

これだけでも随分と音の乱れが気にならなくなるものだから、
人間の感覚なんていい加減なものである。




小室哲哉をフィーチャーしていた映像が…




























問題の箇所では、こんな映像(しかも広島公演)に…
この瞬間の小室哲哉パートをよく聴くと、乱れているのが判る。




























問題箇所が過ぎた途端、また映像は小室哲哉に…





































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さて次回の企画で、このTM NETWORK の重箱のスミ!」いよいよファイナルとなります。
最後の企画は、以前お伝えしたように「小ネタ☆スペシャル」とさせていただきます。


ただ現在困っているのが、この小ネタ。
いざという時(?)のために、結構貯め込んであった んですよね

だもので、その中から3つ選び出すというのがなかなか難しく、
正直申しまして、1エントリーに詰め込むのには無理がある状況です。
しかし2回に分けてエントリーするのには、やはり時間がなく


というわけで非常に歯切れが悪いですが、
次回のエントリーかどうかはともかく、
『次回の企画』でファイナルなのは間違いありません。

またしばらく間が空きますが、最後まで全力投球いたしますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

またコメントいただく方々にお返事できずにすみません。
その分、小ネタ放出という形でお返しさせていただきます。



んじゃ、また。