2014年4月28日月曜日

速報レポート / ツアー『the beginning of the end』

!Attention!
ネタバレ成分は控えめになっておりますが、
お体に合わない場合はただちに使用を控え、医師にご相談ください。




ついに始まったツアー。
『TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end』
昨日4月27日、最初の地となる
府中の森芸術劇場での2日目の公演を観てまいりました。





レポートに入る前におことわりを。


実は今回、ポコ太は『ツアーをまっさらな状態で楽しみたい』と考え、
4月22日発売のアルバムもシングルも買いませんでした。
買わないどころか、
試聴すらしませんでした。

ついふらふらと解禁直後に「LOUD」を聴いてしまったことを悔い、
今回は誘惑に負けないため、さらにTMの曲自体を聴かない
『TM断ち』という荒行を行いました。

前エントリーのコメント欄によせてくださった興味深い事例の検証のため、
「Carol (Carol's Theme II)」を聴いた以外は「Maria Club」も「Kiss You」も
「Tomorrow Made New [EXPO ver.]」も無い、
空虚で色彩のない日々…。



ライブ直前の3日間程は、もう禁断症状が出るような状態。

仕方がなく『そうだ!似たようなものを…、似たようなものを聴こう!』と思い、
クリィミーマミのエンディング
「LOVEさりげなく」(※)を繰り返し聴いていました。
        (※)編曲 - 西村昌敏 ギター - 松本孝弘

























    → 結論として、やっぱりTMとはちょっぴり違うような気もします。





しかしそのおかげで、この日は最初から最後まで、
かなり新鮮で様々な驚きを得ることができました。

とまあ、このようにかなり特殊な環境で臨んだ奴の書いているレポートですので、
そこはご了承ください。





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今回は昨年のライブとは異なり “ツアー“ 

しかもまだ始まったばかりなので、
どこまで書いていいのか、正直迷うところです。

というのも、アルバムとシングルが出た時点で、
演る曲目はネタバレしているわけです。
なので、いきなり踏み込んだことを書きますが




「DRESS2」は全てやる。ただし、ウチ1曲は日替わり要員。
            +
 数は少ないが「DRESS2」以外の曲も演奏する。




皆さん気になるのは、やはり「DRESS2」以外の曲だと思うのですが、
その中の1つは、まさかのアルバム「Major Turn-Round」から、あの曲が!

新たな歌詞やメロディーを付加されていて、これはもうLive アレンジを超えて、
ニューバージョンと言っていいのではないでしょうか。
3人だけで演奏したので「DRESS2」のテイストとは異なるのですが
このツアーの見所は、ひょっとするとこの曲かもしれません。


尚、この日(4/27)は「金曜日のライオン」をやらなかったのですが、
ただ「小室ソロコーナー」~「次曲のイントロ」の繋ぎ部分で、
この曲のシンセブラスのリフを弾いていました。





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開演前の舞台には幕が下り、会場にはランダムに既存のTM曲が流されています。
この選曲が「FAIRE LA VISE」「69/99」
「雨に誓って」「月の河 / I Hate Folk」などなど、頭を抱えるほどランダムすぎ!
まあ、ココは日によって違うのでしょうが…。

さて「REASONLESS」を聴いて、
すっかり鬱な気分になったところで、
いよいよ本編スタートです!




まずはスクリーン上映あり。約5分弱。
そして大歓声の中、幕が上がります。


姿を表した舞台セットを見たポコ太は思わず「おぉ」と声をもらしてしまいました。
特に趣向をこらしたとか、奇抜なものでは無く、むしろシンプルなデザインなのですが
「そう来たか!」と思わせるものがありました。


今回は久しぶりに舞台上手に木根尚登、下手に小室哲哉という配置。



これ以降、曲順、演出等はバレ防止のため詳しくは書きませんが
ツアータイトルからも推察できるように、
今回のツアーは昨年のさいたまアリーナと完全に地続きとなっています。

ということで小芝居あり。
ただ今回は役者さんではなく、宇都宮隆と木根尚登が演じることとなります。


いつものこととはいえ、小室哲哉のムチャぶり企画のせいで、
舞台に背を向け、何やらデータを確認しながらパソコンのキーを打つ2人の姿を見ていると、
「TM NETWORKと言えど、
 楽な仕事じゃないんだなぁ」
と感じました。(←率直すぎる感想)





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演奏曲数、少なめ。
しかしライブは2時間。

つまり、
・イントロ ← 長え~よ!
・間奏 ← 長え~よ!
・曲と曲の間のつなぎインスト ← 長え~よ!


アルバム「DRESS2」でのアレンジも十分長いですが(←今、初めて聴きながら書いている)
これに、どこまでがエンディングで、どこからが次の曲のイントロか分らないような
 “つなぎ” のインストが挟まるため、ポコ太としては大歓迎なのですが、
歌を聴きたい人には微妙かもしれませんね。





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宇都宮隆。
あれだけの大病の後なので、決してまだまだ本調子では無いとは思いますが、
少なくとも舞台上で見る限りは、元気な姿に戻っていました。
歌声はもちろん問題無し!
ハンドマイクで前に出てくるシーンもあり。

ただ先に書いたように、インスト部分が長いため、
しょっちゅう舞台袖にはけていました。



小室ソロコーナーあり。
いつものパターンでいろんな曲のイントロなどを、さわり程度に弾くようなものです。
ただこの日は残念ながら、1台のシンセの高域が音割れを起こしていて、
聴いていて不快な部分がありました。
弾いている本人も左耳のイヤーモニターをいじっている姿が見られ、
おそらく分かっていたんだと思います。

そのためかどうか、全体としてかなり散漫な印象が残りました。



しかし、これが引き金になったのか分りませんが、
この流れからの次曲「Get Wild」冒頭のフレーズサンプリングプレイ中、
(ジャンジャン・ジャンジャンね)で、とんでもない事が!





これは今後、あちこちの会場でやるようなこととも思えないので、
ネタバレを恐れず、はっきり書きますが、

3段積みキーボードスタンドの1番上に置かれた Roland「V-Synth GT」に向い、
小室哲哉、右足を振り上げ





      まさかのハイキック!





観客もどよめきます。

このシンセの置かれた高さは、小室哲哉のちょうど脇くらいでしょうか?
年齢を考慮せずとも、なかなか凄いパフォーマンスだったと思います。
小室哲哉さん、30年目にして新境地!
さぁ、早く吉川晃司のシンバルキックと競演するのだ!





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今回の小室ブースに置かれたシンセは全部で8台。
Studiologic「Sledge」など、ここのところ定番となったシンセばかりでした。

またそのうち2台には昨年と同じように、それぞれiMacが今回は2台ずつ、
計4台が繋がれていたのですが、このiMac、スタンド部分が外され、
おそらく特注のスタンドにより、かなり角度がつけられていました。
(ちょうどノートパソコンを全開にしたような角度)

そのため昨年はともすると
「Live中にネットをする人」
のような画になっていましたが、
今回はなかなか、さまになっていました。

iMacは客席に背を向けていたため、その画面を見ることは出来なかったのですが、
音から判断するに、相変わらず reFX「NEXUS2」は、使われていたようです。 




それと最後の方で気付いたのですが、
ライブ終盤で木根尚登が久しぶりにYAMAHA「GX-1」を弾いていました。
ちょうどDVD化が発表された「Live TOMATO」(88年の方)でも弾いていた、
白いボディのものです。(コレ↓)
























あ、そうそうハーモニカも吹いてましたよ!





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アンコールはありません。

どころか『アンコール!』と叫ぶ余地すら与えられません。
有無を言わせぬ形で、気づいたら終わっています。





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全体としては、まだ『シナリオ通りに一つ一つ進めている』
といった部分が垣間見え、固い感じは拭えませんでした。

これはツアースタート直後であれば、いつのときも同じであり、
この後全国を巡り、どのように成長して還ってくるかを
楽しみに待っていようと思います。




この日、残念だったのは、スピーカーから出てくる音、
いわゆる『ハコ鳴り』がライブ序盤は、あまり良い音ではないように感じたことです。

ただ、ギャーギャーうるさいだけで、芯も、深みも無い印象で、
正直『ああ、こんなものか』と思ったのですが、
それが5曲目の後半くらいから急に音の芯が見え、
腹にバスドラの音がズンズンと響く様になりました。
ひょっとしたら途中で改善されたのかもしれません。



パンフレットは非常に資料性高し。
過去のアルバム1枚ずつに3人それぞれがコメントするなど、
読み物として非常に充実しています。
あまりに充実しすぎて、もう逆に
「今までのパンフは何だったんだよ!」
という怒りが湧いてしまう困った一品です。

なお会場で配布されたリーフレットには、
すでにこのツアーのDVDが発売予定として告知されていました。





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最後に1つだけネタバレします。



おい、誰が「MALIBU」のニューバージョン
なんか作ってくれと頼んだ(笑)!




んじゃ、また。






2014年4月21日月曜日

メモリアルエントリー / Thank You TM NETWORK!

ポコ太です。

この『重箱 Blog』はこちらにも書いた通り、
80年代のライブ活動を中心に据えたものなので
30周年にあたって、特になにか書くつもりはなかったのですが、



   気づいたら書いちゃってた (///∇//) ♪〜



ので up します。








その前に、New Single『LOUD』についても書いちゃえ!


イントロの時代がかった『大プログレシンフォニー』には驚かされたものの、
歌が始まってからは『ずいぶん "ベタな曲” だな』と思っていました。
が、2番を聴いてひっくり返った。




  えっ…この曲、Bメロから始まってたの!?




仮に1番の構成を [Aメロ→サビ] だとすると、
2番は [サビ→Aメロ→サビ] ということになりますが、
2番の冒頭『♪とめどなくあふれる~』はメロディーこそ [サビ] と同じですが、
Keyが違うこと。バックの音数の少なさや、コーラスが重ならないところを見ると
やはりこれは [Aメロ] として扱われていると思われます。(これ自体は割とあること)


しかし、となると2番は [Aメロ→Bメロ→サビ] という標準的な構成となり、
そこから逆にたどると、やはり1番が [Aメロ] の存在しない
 [Bメロ→サビ] という構成だったことに…。

2番に [Aメロ] が無いというのはよくありますが、1番に [Aメロ] が無いというのは、




       ド変態じゃん!




しかし、こんなド変態の構成を "ベタな曲” に思わせてしまうというのは、
なかなかちょっと真似できるものでは無いですよね。








ところで前作「I am」では
イントロ→ U2「Where The Streets Have No Name」
♪I am a human~ → Human League「Human」♪I'm only human~

と、ともに80年代の大ヒット曲を意匠として取り込んでいるように感じていたのですが


今作では ♪Loud,Loud,Loud,Shout it Loud~ が
Tears For Fears「shout」の ♪Shout, shout, let it all out~
を、これまた想起させる…。






























と思ったら、2012年/渋谷イベントでのデモ段階では
♪Shout, Shout, Shout, Shout it Loud~ となっていますね。

やっぱりそういう意図があるのだろうか…。







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さて今回のテーマは
  [Thank You TM NETWORK ~ 
    大切なことは「Tomorrow Made New」と
      「Beyond The Time」が教えてくれた]







皆さん!
皆さんは、普段お聴きの様々な楽曲がどのように制作されているか、
どんな作業工程があるのか、よく御存知でしょう。

ただ、

・作詞
・作曲

これは誰でも、どんな作業か具体的に想像がつきますよね。


しかし、その後

・編曲
・mix
・マスタリング

この辺になると、下に行くに従って次第にブラックボックス化され、
なんとなくは分かるものの、いまひとつ何をやっているのか、
それがどんなに重要なのかピンとこない、というのが実情ではないでしょうか。



ポコ太も本格的に楽器に触れたのが、20歳を過ぎてからと、
かなり遅かったため、ずっとそれがどんなに重要な作業なのか、
頭では分かっているつもりでも、胸の奥底では

『と言ったって、大切なのは
 結局やっぱり "詞とメロディー” でしょう』

と、思っていた時期があります。



今回は、そんなポコ太が
TMの楽曲によって気づかされた、いくつかのこと。
その体験談をもって、ささやかではありますが、
30周年をお祝いさせていただこうと思います。







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~ 編曲および音色の重要性 ~



まずはこのコメントに目を通して頂きたい。


  パノラマジックと比較して欲しいのですが、コード進行はほとんどいっしょです。
  アレンジと音の使い方の違いで、アウトドアと、
  さらに大気圏外との差みたいなものを感じてもらえますか?


これは1986年5月、スコアーハウスから発行されたバンドスコア「VISION MELODIES」
に掲載された「FANTASTIC VISION」に対する小室哲哉自身のコメントである。




「パノラマジック」と「FANTASTIC VISION」、
実際のコードネームは表記上かなり違うのだが、
ここでベースラインが…とか、構成音が…とか言い出すと、
あっという間にめんどくさい話になって、話の趣旨から逸れるので、
このコメントの要点部分のみを端的に表現してみた。
コード進行が同じという事は、つまりこういうことである。
(口に何か含んでいる場合は注意!フイても知りませんよ)





意図的にメロディーを変えたのは ♪た~かく、た~かく~赤字部分のみ
その他はビックリするほど、違和感無くハマりました。

このように、和音の流れが同じような曲というのは山ほどありますので、
見つけたら、皆さんもやってみましょう。楽しいですよ!
ちなみにポコ太は「10 YEARS AFTER」のカラオケを流しながら、
気が付くと「Maria Club」を歌っていることがあります。







話を戻す。
つまりこの2曲、作曲者は違うものの作曲の初期段階では
似たような雰囲気の曲だったということが分かる。


しかし、CDに収められた完成版は小室哲哉のコメント通り
・「FANTASTIC VISION」→ アウトドア
・「パノラマジック」      → 大気圏外
見えてくる景色が全然違う
これはすでにイントロの時点からなので、歌詞の違いだけによるものでは無い


とても興味深い事例ではあるのだが、
しかし1986年当時、ポコ太はまだ楽器をやっていなかったので、
コード進行云々のところが、いまひとつ意味がわからず、
ただ何となく "大切なことを言っている” という印象だけが残っていた。







そして時は流れ1991年9月、アルバム「EXPO」の発売日。


































手に取ったCDのクレジットに「Tomorrow Made New」の名を見つけたものの
すでにライブビデオに収録されていたせいで、
特にありがたみを感じず、期待もしていなかった。

むしろこの曲は、本アルバムのコンセプトである
『月とピアノ』に沿っていないのではとまで感じていた。








しかし、しかしである。
今でもその瞬間をはっきりと思い出せるのだが、
曲が始まってわずか2小節で、ポコ太の体中に電流が駆け巡った。





    [RHYTHM RED tour ver.] と
    見えてくる景色が全然違う!!





それは確かによく知っている「Tomorrow Made New」ではあるものの、
全く知らない「Tomorrow Made New」でもあった。
しかも先の例とは異なり、今回は同一の曲 である。
それが編曲ひとつでこれだけ印象が変わる(変えられる)というのは衝撃的であった。



そしてその瞬間、先に挙げた「パノラマジック」と「FANTASTIC VISION」に対する
小室哲哉のコメントが、時を超えてフラッシュバックしたのである。

この頃ちょうど鍵盤に触れ、曲作りにのめり込みはじめたポコ太は、
1986年のコメントの意味を、
ようやくはっきりと認識した。



また、[RHYTHM RED ver.] を LIVE ver. ではなく、デモ ver. と捉えると、
[RHYTHM RED ver.] → [EXPO ver.] の変化が、
神の手(制作者の意図)を垣間見る様で、大変興味深かった。




具体的に、どう手が加えられたのか?
それによって見える画がどう変わったのか? については、
次回に それはもうネットリとやる として、
ポコ太にとって「Tomorrow Made New [EXPO ver.]」というのは、
この貴重な "気づき" を与えてくれた恩人の様なものなのだ。

それゆえ、いまだにポコ太は「Tomorrow Made New [EXPO ver.]」に足を向けて眠れない。
って、どっちの方角だよ!







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~ ちょっとブレイク ~



先の動画のような『同じコード進行に、違うメロディー』
その後、小室哲哉は意識的にこの手法で、
あえてコード進行を固定し曲を量産するようになる。

彼の代名詞ともいえるコード進行
『Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ』である。
「Get Wild」「Human System」「悲しいね(渡辺美里)」など、枚挙にいとまがない。
また、一部を変形させた「Love Train」の様な曲も多い。

これはコード進行を固定することにより、一聴しただけで誰が作ったか分かるようにする『ブランド化戦略』だ。



実際にはそんなに特殊なコード進行では無く、例えば BOØWY の「MARIONETTE」や
意外なところでは「君をのせて(天空の城ラピュタ)」など、
他の作曲家の曲でもよく見られるものだったのだが、
小室哲哉がしつこく、しつこく、使い続けることにより、
いつしか『小室進行』などと言われる様になったのは御存知のとおり。


しかしこれは "ワンパターン”  "クドくて拒否反応が出る” 
などの批判も産み出すことにもなった。
また本人はそのつもりがまったく無いのに、このコード進行を使ったために
『小室の真似』と言われてしまう、巻き込まれ型の被害者を産むことにもなった。



もちろん、これらの曲は先の動画と同じく "メロディーのとりかえっこ” が可能だ。
そう、「Get Wild」のカラオケに合わせ
「君をのせて」を歌うことも…だ。
(やってみると頭がクラクラしてきますよ)




ただ、実際にコードとメロディーの関係を鍵盤で追ってみると、
9thから始めたり、終点をsus4に変形させたり工夫している様がうかがえる。
意外と気にしていたのか?(笑)→ ワンパターン批判





さて次は、もう一つの "気づき" の話。







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~ mix 作業の重要性 ~



話はさらに数年前、1988年12月にさかのぼる。
ここでの主役はアルバム「CAROL」に収録された
「Beyond The Time (Expanded Version)」だ。
何が "Expanded" なのかは一切不明 だが…。



実はこの曲、アルバム「CAROL」の中で、
唯一、日本でレコーディングされた音で構成されている。
つまりシングル版と素材(楽器演奏やボーカルのテイク)は同じだ。
それだけにその後の作業、つまり
『mix 作業の効果』を知るには最適 である。



「Beyond The Time」は、シングルが同年3月に発売されてから、
このアルバムに収録されるまで
  "シングル版しか存在しない期間= 予習期間 
 が、かなり長かった ため、初めてアルバム版を聴いたとき、
素人のポコ太にも、シングル版との違いがはっきりと分かった。



曲の一番最初の部分。

シングル版では『ジャ~ン』と塊で聴こえた音が、アルバム版だと
ギターの弦、1本1本の隙間が見えるとでも言えばいいのだろうか、
『ジャラ~ン』と聴こえてきたのだ。







その瞬間、今までさんざん聴いてきたシングル版とは
全く違う景色が、ポコ太の前に広がった。


シングル版が、スクリーンに映った
"どよ~んと曇った宇宙" (変な表現だが)とするなら、
アルバム版は "どこまでも広がる広大で澄み切った宇宙に
自身が放り込まれたよう" な印象を受けたのだ。

さすがガンダム。
まさに『どっちを向いても宇宙。どっちを向いても未来』だ(←それ違う番組)
まぁ、映画の内容を考えると "どよ~んと曇った” 方が合っている気もするが…。







       なぜ同じ素材を使っていながら、
     ここまで印象が異なるのか?







あわてて聴き直してみると、
このイントロ部分だけでも、かなり違いがあることが分かった。


例えば、シングル版では右端でチキチキと鳴っていた
打ち込みのハイハットがバッサリカットされ
さらに和音を抑えていた鍵盤の音は、はるか彼方に押しやられている。

こうしてできた音の隙間から、シングル版では聞き取りとれなかった、
一つ一つの音の余韻が聴こえてくるようになったのだ。


特に、先にも書いた『ジャラ~ン』と和音を弾いたギターの音程が
その後ずり下がっていく部分の余韻は、
シングル版では味わえないみずみずしさを湛えている。


また、0:18 から入ってくる歪んだギターの音も、
シングル版では目の前で鳴っているのに対し、
アルバム版ではまるで遠雷のような響きをたずさえている。


さらに、Bメロからスタートするスネアの音も、シングル版では息がつまるというか、
まるで目の前に立ちふさがるような鳴り方をしていたのが、
アルバムでは、自然な余韻が付加けられ、ほどほどに後ろに下がった結果、
ボリュームを上げても耳が痛くならない。



実はポコ太、シングル版の時点ではたいして興味のなかった曲(※)だったのだが、
このアルバム版はぐいぐい引き込まれてしまった。

  (※)これは曲の良し悪しではなく、
     シングル発売当時、大量にオンエアされていた映画のCMの印象が強過ぎて、
     『TMの曲』というより『ガンダムの曲』というイメージだったため。









「Beyond The Time (Expanded Version)」の特徴というより
これはアルバム「CAROL」全体にも通じる話だが、

 ・前後・左右・上下・奥行きの幅が広い。
 ・それぞれの音に付加された余韻が自然。
 ・高域のみずみずしさ。
 ・低域のふくよかさ。

などなど、これはもはやアルバム用の mix というより、
アルバム「CAROL」を担当した、
スティーブ・ナイによる添削指導
という様相を呈している。

事実、小室哲哉自身まずこの曲をテスト的にミックスしてもらった結果、
アルバム「CAROL」のミキシング・エンジニアは、
スティーブ・ナイで間違い無いと確信したそうだ。








TM NETWORK には申し訳ないが、ポコ太にとって
アルバム「CAROL」の主役は、
このスティーブ・ナイと、
録音を担当したスティーブ・ジャクソン である。


1曲目「A Day In The Girl's Life」冒頭のシンバルロールから始まり、
どの曲を聴いていても、つい曲ではなく
1つ1つの "音そのもの” の美しさに耳が奪われてしまう。






同じく mix という意味では「Seven Days War」における
スネアドラムの音色の違いにもかなり驚かされた。

シングル版がシングルらしく派手な『パーン』という音に対し、
アルバム版では『スタン』と落ち着いた音になっている。

これはアルバムを通して聴いたとき、他の曲との違和感が無いように、
また、アルバムを通して聴き続けた時、耳が疲れないようにという配慮だろう。
これも決して音を録り直したのではなく、Mix の違いによるものだ。







逆に言えば、
mix ひとつでここまで印象が変わってしまう、
というのは恐ろしいこと とも言える。






我々が "レコーディング" と聞くと、アーティストの作曲シーンや、
演奏や打ち込みをしている姿を思い浮かべがちであるが、
実はその後で、ガラッとイメージが変えられてしまう可能性があるのだ。

アーティストが mix エンジニアの選定にナーバスになったり、
わざわざ mix をするためだけに、海外に行く意味がよく分かるだろう。





ポコ太にとって、
この「Beyond The Time (Expanded Version)」以前と以降では、
mix に対する認識が180度変わった。
ありがとう
「Beyond The Time (Expanded Version)」!
僕は君のことを(普段、全然聴かないけど)決して忘れない。





ただ最初の出会いが、この『最高峰の音』だったため
これ以降、今に至るまで mix 作業に対する強烈な苦手意識も植え付けられてしまったが…。

おのれ「CAROL」!!(←浮き沈みの激しい人)







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~ マスタリング作業の影響力 ~



最後に、マスタリングについても簡単に触れておこう。

マスタリングに関しては、曲毎の音量、音質を整えるといった静的なものから、
積極的に音にアプローチするといった様々なスタンスがあり、
なかなかその効果を文章で表現するのは難しい。


一般的な認識だと
・音量・音圧が上がる。
・細かい音が聴き取りやすくなる。
といったところだろうか。


ここでは、それだけではない
マスタリングの大切さ(恐ろしさ)を感じ取れる例をひとつ挙げておく。







・Welcome to the FANKS!
・TM NETWORK THE SINGLES 2 (初回生産限定盤)


両ベスト盤に収録されている「We Love The Earth」を聴いてほしい。
ざっくり言ってしまうと「~ SINGLES 2」版より「Welcome ~」版の方が
曲全体の重心が低く、落ち着いた感じになっている。



特に顕著なのが Bass だ。

・「~ SINGLES 2」版ではかなり “fat” な鳴りをしていて、
  Vocal のすぐ下にピッタリとくっつく様に位置している。
・「Welcome ~」版では落ち着いた音に調整されており、
  Bass 本来の、かなり下の位置に収まっていて、
  結果的にVocal とBass の間に空間が生まれている。

ポコ太の好みとしては断然「Welcome ~」版なのだが、
オリジナルに近いのは「~ SINGLES 2」版だ。
これは先に書いた
マスタリング作業に対するスタンスの違い だろう。



その他、イントロ頭から鳴っている、リズムマシン(TR-808)のKick の音に注目すると

・「~ SINGLES 2」版ではオリジナルに近い “トン・トン “
・「Welcome ~」版では “ドゥン・ドゥン“ + 高域で “ジー・ジー“ 。

と、その鳴り方が違うのが判るだろうか。
(判りづらい場合、スピーカーやイヤホンなど環境を変えてみてください)



このように、mix 作業を終えた以降でも、
まだ全体のイメージを左右してしまう工程があるということだ。
マスタリングにまでアーティストが神経を使う理由が、
少しは分かっていただけただろうか?










さて、この「We Love The Earth」に限らず、
総じてポコ太は「Welcome to the FANKS!」の音に好感を持っている。…のだが、






 「ただしジャケットデザイン…テメーはダメだ!」 






























         「Welcome to the FANKS!」2004年12月リリース

































      The Chemical Brothers「Singles 93-03」2003年9月リリース







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というわけで、いかがだったでしょう?
ほんのちょっぴり、メモリアルにふさわしい内容だったでしょう?

実は、この他にも書ききれなかったことがいくつかあるのですが、
(なんせ30年ですもんね)それはまた、いずれ。

兎にも角にも、
TM NETWORK 30周年、おめでとうございます。





さて次回は、いつもの路線に戻るよ!
いよいよ「Tomorrow Made New」 [RHYTHM RED ver.] VS [EXPO ver.]
ガチンコ対決だよ!!


んじゃ、また。