2013年8月24日土曜日

ポコ太の・第2回・小ネタ☆スペシャル

お詫び
前回のエントリー最後の武道館公演の項にて
重要な部分がスッポリ抜け落ちていました。
今回のエントリーと同時に "追記" という形にいたしましたので、ご確認ください。
(元の原稿に比べ、いやにすっきりしたなぁと思っていたらこのザマよ)





さて今回は一度やったきり、とんとさっぱりだった
『小ネタ☆スペシャル』の第二弾です。
前回は "小ネタ" と言いつつ "中ネタ" くらいに膨らんでしまったので、
今回こそ真の "小ネタ" を目指して出発進行!






--------------------------------------------






(小ネタ No.02-1)

[ご機嫌な歌声 ~誰か奴を黙らせろ~]



TMN 終了時に出されたボックスセット
『TMN GROOVE GEAR』に収録されたデモテイクによって一気に有名になった
小室哲哉の "ステンレス唱法" と木根尚登の "デタラメ英語唱法" 

このうち小室哲哉の "ステンレス唱法" は
実はライブでも行われていることが判明した。



DVD「TMN EXPO ARENA FINAL」をお持ちの方は
「THE POINT OF LOVER'S NIGHT」を見ていただきたい。


2番サビ直前の、全員がユニゾンで演奏するキメフレーズ部分。
画面に小室哲哉は写っていないが、左側の方の音に注目してみよう。

小室哲哉のヘッドセットマイクが on になっていて
演奏と一緒に『♫ダダスダンダン』と歌っているのが分かる。


このDVDの元ネタがWOWOWの生中継映像だったからこそのハプニング(?)



絵面としてはこの辺























一度気づくと、はっきりと聞こえるようになる。
というか、





        正直うるさい(笑)








--------------------------------------------






(小ネタ No.02-2)

[武道館演出は集大成]



1987年6月に行われた 初の武道館公演「FANKS CRY-MAX」
この時の演出にはそれまでのライブの集大成という意味合いもあったという。


冒頭から飛び交うレーザー光線は1984年12月の「パルコライブ」から。
また、DVDには収録されていないがコンサート中盤で打ち上がった銀煙弾は
1986年8月の野外ライブ「FANKS "FANTASY" DYNA-MIX」から。

木根尚登によるハーモニカ演奏も
「FANKS "FANTASY" DYNA-MIX」以来であった。


「FANKS "FANTASY" DYNA-MIX」の「Give You A Beat」ラストで打ち上がるのが『銀煙弾







そう言われてみると、あれだけ鮮烈なイメージを焼き付けながら
レーザー演出は「パルコライブ」以来、使われていなかった。


ちなみに、1990~91年の「RHYTHM RED TOUR」は
TMNへの変化を印象づけるため、
打ち合わせの初期段階からプログラミングされた照明を使わない方針が
決まっていたそうで、レーザー演出も使われていない。
(オープニングのスクリーン上映も準備されていたが、
 同様の理由でゲネプロ時にカットしたそうだ)


また1994年のTMN終了ライブでもレーザーは使われていない。
そう考えると実際にレーザー演出が使われたライブはあまり多くないことになる。
TMのイメージとレーザー演出はとても良く合うと思うだけに残念である。





また、映像化に恵まれていたせいで木根尚登=ハーモニカ演奏のイメージが強いが
TMN以前の "旧" TM NETWORK時代は意外と少ない。
(デビューライブでのハーモニカは
 小室哲哉によるキーボード演奏であることはすでに述べた




なお余談ではあるが翌年1988年、東京ドームがオープンした為、
武道館の『Rockの殿堂』『ブレイクの証』としての位置づけは、やや揺らいだ感がある。
そういう意味において1987年に初武道館公演を果たしたTM NETWORKは
 "滑り込みセーフ" だった気がする。






--------------------------------------------






(小ネタ No.02-3)

[光の魔術師 ~照明コントロール~]



1986~87頃のインタビューで盛んに言われていたのが
この鍵盤で照明をコントロールするという話。


が、なにしろ『GB』にしろ『キーボード・マガジン』にしろ、
微妙に話題違い なため、
その詳細はあまり詳しく語られていない。
(『照明☆マガジン』でもあればいいが、そんな本、中高生が買わないよなぁ…)


そこで当時の細切れの情報をつなぎ合わせ、その実態にせまってみよう。






まず大きく分けて2つに分かれる。






電圧でコントロールする方法と、MIDI信号でコントロールする方法だ。
機材に明るい人ならば
アナログ・シークエンサーとデジタル・シークエンサーとの違いと同じだと気づくだろう。





この話題が最初に出た1986年の野外ライブ
「FANKS "FANTASY" DYNA-MIX」では電圧でコントロールする方法だった。

これは音声を電圧に変換する方法で照明をスイッチングし
さらにボルト数によって複数の照明の点灯する順番をもコントロールしている。

このシステムはそのまま1987年3~5月の
「FANKS! BANG THE GONG TOUR」でも使われている。
ただし、この装置は結構大掛かりなものだったようで
会場によっては設置できない場所もあった。






これが6月の武道館公演ではMIDI信号でコントロール出来るようになった。
 "MIDI信号でコントロール出来る" ということはつまり
シークエンサー(この時はYAMAHA QX1)に
音データと一緒に "照明データ" を打ち込めるということだ。

YAMAHA QX1
























実際、武道館公演では2台のシンクロさせた『QX1』(8tr×2台 = 16tr)の内、
2tr を "照明データ専用トラック" として使っている。


オープニング「Get Wild」イントロ部分の『ゲゲゲゲゲゲゲゲゲ』に
完全にシンクロした照明はその賜物だろう。当時としては、なかなかの見どころだった。
現在メンバーは『ゲゲゲゲゲゲゲゲゲ』中ですので、お静かに願います。





























ただし、先の電圧コントロール方式も併用されていて
サラウンドで音が会場中を駆け巡るのに連動して照明が点滅するのはこの方式だった。



これは単純に機材の都合。



小室哲哉本人としては、この時点で全てMIDIコントロールにしたかったようだが、
MIDIコントロール用の新しい機材がまだ試作品の段階で、
仕方なく安全策をとった模様だ。



そのため武道館公演では電圧信号、電気信号、MIDI信号が入り乱れる
カオスな状態 だった。






さて、さらに重箱のスミを突くが
武道館公演では通常の照明に加え、レーザーを電圧でコントロールすることが可能になった。
ただし、通常の照明の場合は一回の信号で点灯・消灯が出来たのに対し
レーザーの場合は点くタイミングと消えるタイミングを
独立してコントロールしなくてはならない。

つまり一回点けて消すのに、二回信号を送らなくてはならなかった。







ところで、この項の冒頭に『鍵盤でコントロール』と書いたが、
照明用の鍵盤が用意されているわけではない。

また、このエントリーを書くにあたり、ポコ太のひっくり返した資料類には
『僕(小室哲哉)の所からコントロール』という言葉は頻繁に出てくるものの、
この表現では手弾きなのかシークエンサーなのか判別できない。

ざっくり言えば
・電圧コントロール方式 → 手弾きのシンセにリアルタイム反応。
・MIDIコントロール方式 → シークエンサーのプログラム自動演奏。
と思えばいいだろう。


電圧コントロール方式もシンセから出た音声信号が
装置を通すことによって電圧に変化し自動でシンクロしてくれるので、
ライブ中に小室哲哉がなにか特別細かいことをしているわけではない。








どうだろう?
読んでいて頭が痛くなった かもしれない。


なぜここまで複雑なことをするかといえば
小室哲哉の口癖である『驚かせたい』の一言に尽きるのだろうが、
もう一つ、 80年代という時代は音楽機材等がものすごいスピードで進化した時代
(先月出来なかったことが今月には可能になっている)であり、
その中に身を置く人間としては、
この時代独特の高揚感や万能感があったのだろうと指摘しておきたい。




なお1987年冬からの「Kiss Japan Tour」では
このシステムよりはるかに高度なプログラミング可能な照明器具
『スターライト』が導入され、全て、MIDIコントロールとなった。







--------------------------------------------






さて "小ネタ" のネタを書き出しているうち
結構な数になったので、次回も小ネタスペシャルの予定です。
そこで今回のラストはクイズで〆たいと思います。




TM NETWORKの楽曲の中でライナーノーツに記された歌詞と
実際に歌われている歌詞が一部違う曲があります。
どの曲でしょう?

ライブバージョンではありません。
もちろん未発表曲でもありません。
通常のアルバムに収録されていて、
そのアルバム付属の歌詞カードと実際の歌が違うものです。

ヒント・ TMN以前、"旧" TM NETWORK 時代の曲です。
答えは次回の『小ネタ☆スペシャル』で。
さぁ、みんなで考えよう!



なお次回のエントリー更新まで、この件に関するご質問は一切お答えできません(笑)



んじゃ、また。






2013年8月11日日曜日

“愚か者” 〜その挫折と栄冠〜

直近のエントリーで
『機材の話はしばらくしません!』と宣言しておきながら、
舌の根も乾かぬうちに機材関連のエントリーをします。



しかし、今回に限ってはポコ太は悪くない。


だからポコ太は悪くないのだ…。
          悪くないのだ…。
                  悪くないのだ…。




さて言い訳も済んだところで
楽しい楽しい機材の話に移るとするかねぇ。
ヘッヘッヘッ、奥さん寄っといで…悪いようにはしませんぜ…ヘッヘッヘッ






今回のテーマは
[何故、87年のツアーで
「Fool On The Planet」は演奏されなかったのか]





-----------------------------




果たされない約束の予感


小室哲哉はアルバム「Self Control」レコーディング終了直後のインタビューで
「(ツアーでは)もしかしたらアルバム収録曲10曲、全部やるかもしれません」
と語っていた。


だが実際の『FANKS! BANG THE GONG TOUR』では
アルバム「Self Control」中、「Fool On The Planet」だけが唯一演奏されていない
(「Spanish Blue」はツアー中盤、
  新曲として「Get Wild」が割り込んでくるまでは演奏されていた)




この件について、以前のエントリーでふれた『キーボード・マガジン』1987年4月号
『FANKS! BANG THE GONG TOUR』リハーサルの取材記事に
興味深いことが書かれていた。
(なお本記事は例の『キーボード・マガジン』電子書籍版にも
 めでたく再掲されたので、ぜひご覧いただきたい)



該当部分を引用してみよう。

(このツアーでは)サンプラーだけでも4台あって、Emax、イーミューⅡが各1台。
 S50が2台。「Fool On The Planet」などのボイスが厚く重なる曲では
 このうちの3台が同時に使われる事にもなる。

                      -引用ここまで-





ちなみに、この記事内で唯一出てくる曲名が「Fool On The Planet」

ここまで具体的に書かれているということは、
少なくともこの時点ではツアーでも演奏する予定で、
打ち込みだけではなく、バンドと合わせるところまでやっていたのだろう。





それが何故、本番では脱落してしまったのか?






-----------------------------




青く揺れる惑星に立って


ここで今一度、アルバム「Self Control」収録のオリジナル版を聴いてみよう。






この曲のサウンド面の特徴としては、なんといっても
小室哲哉入魂☆の多重コーラス だ。



冒頭から聴ける、この分厚いコーラスは小室哲哉が1人で24chも重ねたもの。
そう、すべて生声。声をサンプリングして鍵盤で弾いたのではないのだ。
このコーラス録音だけで丸一日かかったという。(喉は大丈夫だったのだろうか?)


結果は御聴きのとおり。
この曲の持つエモーショナルな広がりと力強さに見事に貢献している。




「Time Passed Me By」では当初、アコースティックギターのみという
物悲しいアレンジにされて、思わず文句を言った木根尚登も、
これには大満足だったのではないだろうか。





-----------------------------




理想と現実


しかし、この拘りがアダとなる。
Aメロ以外の全ての箇所にわたって録音されている
この「アー」や「ウー」をステージで再現するには
膨大な量のメモリを積んだサンプラーが必要となる。



先に引用した記事によれば
このツアーで用意されたサンプラーは全部で4台。
これだけあれば出来るような気もするが
同引用部分の最後「3台が同時に使われる事 "にも" なる」という部分に注目してほしい。




つまりこの4台のサンプラーは
同時に使うことが本来の目的ではないのである。




4台あることの意味は、例えば2台を現在演奏中の曲に使っている間に
次の曲で使うサンプルを空いている2台にロードする。
つまり自転車操業をするための複数台なのだ。




自転車操業というと聞こえが悪いが
1985年「Dragon The Festival tour」の時はその自転車操業さえ出来ず、
コンサート中ずっと綱渡りの状況だったことは既に述べた





ちなみに1986年の「FANKS DYNA☆MIX tour」では
サポートキーボードの白田朗ブースに当時の新製品 AKAI『S900』が導入されたものの、
この時期からフレーズサンプル(『Come On Let's Dance!』や『Give you a beat!』など)の使用が大幅に増えた為
小室ブースのサンプラーと合わせてもメモリが到底足りず、
曲によってはAメロで使うサンプルは小室ブース、
サビで使うサンプルは白田朗ブースという風に、
1曲中でも分割してロードされていたらしい。

さらに白田朗は演奏しながら自分でロードしなくてはならず、
2台あっても状況的には大して改善されていなかったようだ。







ここがマニピュレーターブース。画像は武道館公演だがツアーでも同じ位置。






















マニピュレーターブースへ指示を出す小室哲哉



































-----------------------------





先客あり


さてこのサンプラーというと思い出すのが
元祖・サンプラーの塊曲「Your Song」である。


1987年『FANKS! BANG THE GONG TOUR』のウリのひとつが
この「Your Song」初演奏であった。




セットリストを見ても特にツアースタート時点では

・M04 Rainbow Rainbow(打ち込みを使わない生演奏 & サンプラーも未使用)
・M05 Your Song(打ち込み & サンプラーてんこ盛り)
・M06 1974(打ち込みを使わない生演奏)
・M07 パノラマジック(打ち込みを使わない生演奏)
・M08 Time Passed Me By(3人のみのアコースティックコーナー)
・M09 Here, There & Everywhere(3人のみのアコースティックコーナー)

となっており「Your Song」が 特別待遇 となっていることが分かる。





おそらく、この「Your Song」周辺で一度
すべてのサンプラーを同時に使い切ったのではないだろうか。
これは機材的な意味での中休みであるアコースティックコーナーが控えていたから出来た事、
というかそれを目的に組まれた曲順だろう。


ちなみにツアー中盤から「パノラマジック」と「3人コーナー」の間に
「Get Wild」が差し込まれるが、この時の「Get Wild」では
サンプラーは使われていないようだ。





-----------------------------





師匠の存在感


さて、このエントリーすら主役の座を「Your Song」に奪われつつある
幸薄い「Fool On The Planet」


先に述べたように「Your Song」初演奏は
周辺の曲の協力と犠牲(?)の下に成り立っている。


演出的な面、または機材トラブルに見舞われた事態を想定したトラブル防止という面からも
1つのコンサート(特にツアー)の中でこのような、ある意味
偏った箇所 をいくつも作るわけにはいかない。





もはや自分の席はないのか?
うろたえて辺りを見渡す「Fool On The Planet」


あった!あと1カ所だけ後の事を一切考えないでよい場所がある。


       最終曲だ!!


ラストの曲ならば後の事を気にせず、
全てのサンプラーの全てのメモリを使いきることが出来る!!








            が、しかし…







この時期のTMのコンサート・ラストナンバーといえば、
そう、古参の「ELECTRIC PROPHET」師匠
物凄い形相でこちらを睨みつけているのだ。







   この時点で彼の夏は終わった。(高校球児風)






結局「Fool On The Planet」はコンサート終了後、
客出しのBGMとして使われることに…。

あんまりと言えば、あんまりである。





-----------------------------





栄冠は君に輝く(引き続き高校球児風)


しかし、ここでの敗北が同年6月、武道館公演での
TM NETWORK 史上、初のアンコール曲
という栄冠に繋がる訳だから、
人生(?)何が幸いとなるか分からない。


今見ても圧巻のスモーク演出























この時、ポコ太のいた1階席正面からは、まるで一枚の絵画のように見えていました。



































武道館公演はツアーに比べ
Emax、イーミューⅡが各1台ずつ増強され

・Emax 2台
・イーミューⅡ 2台
・S50 2台

の計6台となったのも追い風になったのだろう。
           赤字部分 13.08.24 追記




おそらくこの時は、打ち込み & サンプラー使用最終曲の「Self Control」が終わり
「ELECTRIC PROPHET」のイントロに移った瞬間、マニピュレーターブースでは
『大サンプルロード大会』が始まっていたはずだ。



「Fool On The Planet」の演奏がはじまり、
次々と再生されていくサンプルたちを見ていたスタッフにとっては、
花火大会最後の大打ち上げをみる花火職人のような気持ちだったろう。
























ちなみにこのときの演奏では、
Drumより先行してBassが入る & 途中でDrumが一時的に抜ける箇所がある為、
Bassの日詰昭一郎もヘッドフォンをして
コンピューターからのクリック音をモニターしている。






-----------------------------





いかがだったでしょう。
今回は『世界名作劇場』というか『小公女』のようなオチがついたエントリーでした。
やっぱり人間生きてれば、いいこともあるもんですね。



ちなみにこの時の「Fool On The Planet」武道館 ver. と
翌年の「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」ver. では
サンプラーの使い方ひとつとっても
全然違うアプローチがなされていて興味深いのですが、この件についてはまたいずれ。





んじゃ、また。