2013年1月31日木曜日

クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 復活編



今回のテーマに深く関わることなので最初に告白しておく。
実はわたくし、ポコ太は
この「初期Live ver.」があまり好きではない。


これだけの長文を書き連ねたあげくに
身も蓋も無いこと言ってごめんネ。


その理由だが
CD ver.はサブタイトル (Get Away) のとおり
夜の街を疾走している雰囲気がお気に入りなのだが、
この「初期Live ver.」は疾走感どころか
どこかほのぼのとした『牧歌的』とさえ言える
雰囲気を漂わせているからだ。



閑話休題



さて今回は前回よりさらに一歩踏み込む。
前回同様、ここからは完全に
ポコ太の推測であることをお断りします。



「クロコダイル・ラップ編」最終回のテーマは
[なぜ製作途中にサビのメロディーを変えたのか?]




キーワードは2つ。
ブルースハープ (ハーモニカ) と、
先ほど挙げた『牧歌的』という言葉だ。



まずブルースハープから見てみよう。


CD ver.の「クロコダイル・ラップ」に
ブルースハープは入っていない。


だが Rhythm Red tour のビデオでも見れる様に、
この曲のライブ演奏では
常にブルースハープのイメージが付いてまわる。


木根尚登の演奏がなかなかハマっていて、
まるで彼の見せ場をつくる為の
ブルースハープ起用に思えるが、実はそうでは無い。


なぜなら以前、指摘した様に
デビュー当時のライブでは小室哲哉自身が
シンセをハーモニカの音色で演奏していたからだ。



つまり少なくとも、この曲の作曲者である
小室哲哉の中には
「クロコダイル・ラップ」=「ブルースハープ」
というイメージが最初からあったようだ。


その後、木根尚登がブルースハープを演奏することから
彼にこの役割を受け渡したのだろう。





次にもうひとつのキーワード『牧歌的』に移ろう。


「初期Live ver.」特有のメロディーやコーラスに加え
『牧歌的』な雰囲気をさらに強めているのが Bass のフレーズだ。


1984年7月17日 バナナホール(大阪)でのLiveより採譜







このベタベタなフレーズの上に例のコーラスや
ブルースハープがのると、もうお祭りの始まりだ。




ここで当時のインタビューを思い出してみよう。


小室哲哉は「クロコダイル・ラップ」を
「Karma Chameleon」(Culture Club)
の影響下で作ったと述べている。


確かに「リズムのノリ」や「曲の構成」などは似ているが
どちらも定番と言っていいものであり
「クロコダイル・ラップ」のCD ver.を聴いて
「Karma Chameleon」が元ネタだと感じる人はいないだろう。


少なくともポコ太は小室哲哉のインタビューを読んだ後さえ
「一体どこが似ているんだ?」と思っていたぐらいである。








だがここで、いまいちど「Karma Chameleon」を聞いてみよう。





どうだろう? 印象に残りましたよね  ↓  このじいさんが。






















…じゃなくて気付いただろうか?

・冒頭からサビ、間奏にいたるまで鳴り響くブルースハープ
・全体を包み込む牧歌的な雰囲気
・ラスト近くで一旦ブレイクし
 リズムとコーラス、メロディーだけになる。



これはたしかに当ブログで
『クロコダイル・ラップ (初期Live ver.)』と
名付けてきたものと共通している。


前回のエントリーでは
「初期Live ver.とはアルバム制作初期に作られた
 demo ver. だったのでは?」と推測した。


「初期Live ver.」と「Karma Chameleon」の共通点を見ると、
この仮説を裏付けている様に思えるのだがいかがだろうか?







いよいよ結論に入ろう。


アルバム『RAINBOW RAINBOW』制作当初、小室哲哉は
「Karma Chameleon」を発想の出発点として
「クロコダイル・ラップ」の demo ver. を作成した。

           ↓

この時点ですでにオリジナリティーのある「完成版」であったが
keyの問題もあり、本番までに手を入れることに。

           ↓

これを機会にさらに確固たるオリジナル曲とすべく
コーラスやサビのメロディーを新規作成などし
「Karma Chameleon」の陰を完全に払拭することにした。

           ↓

アルバム『RAINBOW RAINBOW』完成



その後の経緯は前回のエントリーで
〜しかし demo ver. のコーラスとのコンビネーションも
なかなか評判が良かったのでLiveで披露することにした〜
のではないかと推測した。


今回はこれに加え、もうひとつの仮説をたてておく。


そもそも曲名自体が
「Crocodile Rock」(Elton John) のパロディーである。
小室哲哉自身がインタビューで元ネタを
嬉々として語るような人であることを考慮すると
「ちょっとしたネタばらし」という意味合いもあったのかもしれない。






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というわけで、ようやくここに
「クロコダイル・ラップ編」を終えることが出来た。

次回からはもう少し軽く読めるものをと考えているが、
もともと「クロコダイル・ラップ」も
そのつもりで書き始めたんだよなぁ…。

これからもこの調子でポコ太の
『推測と妄想の狭間』を行き来する内容となりますが
もしよろしければ、お付き合い下さい。


んじゃ、また!



【関連エントリー】



2013年1月23日水曜日

クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 完結編


まず、最初に謝らなければならない。
前回、エントリーの最後に書いた予感は当たってしまった。
今回は『完結編』だが、『これで終わり』ではない…。
あともう一回だけ『クロコダイル・ラップ編』は続くことになった。
なんか『映画版 宇宙○艦ヤ○ト』の様になってきたが
もうホントにスマン。

でもいいよねっ。
「クロコダイル・ラップ」が嫌いな人って
ポコ太、会ったこと無いし♪(←開きなおった)




さて今回は前二回の検証を踏まえて、
さらに一歩踏み込み

[そもそも初期Live ver.とはナニモノなのか?]

を考えていく。
なお、ここからは完全に
ポコ太の推測であることをお断りします。




最初に結論を書いてしまうと
前二回のエントリーで「初期Live ver.」と呼んでいたものは、
実はアルバム『RAINBOW RAINBOW』制作時に作られた
デモバージョンではないだろうか。

つまりこちらの方がオリジナルで
CDで聴けるバージョンの方が、
修正されたものではないか。



ポコ太の考える制作時の流れはこうだ。


1)デモテープ作成
  仮歌録音時にややkeyが高いと判明。
  keyを下げることに。
    ↓
2)keyを下げると同時にコーラスの部分を捨て
  サビのメロディを新規作成。
    ↓
3)CD ver. 完成



メンバーの証言によると
デビューアルバムのレコーディング時に
本番のTrackを作成後、
ボーカルをレコーディングしてみたら
keyが高くて歌いづらかった為
お蔵入りした曲があるらしい。

この曲が何という曲だったのかは
インタビューなどによって
「グリニッジの光を離れて」だったり
「悲しい16歳」だったりするのでよく分からないが
そういうことがあったのは確かなようだ。



実はこういうケースは
ライブを何度も積み重ねデビューに至る『バンド』と違い、
TMのようなユニット形式の
デビューアルバムには割と見られる。

・まだ作曲者がボーカルの音域を完全に把握していない。
・歌詞の無い状態(ラララ〜)では歌えても、歌詞が付くと歌えない。
・そもそも別人が歌うために書いた曲である。

などが理由である。



前回のエントリーで 
「(初期Live ver.の)keyの高さから見えてくるものがある」と書いたが
おそらく「クロコダイル・ラップ」も
最初のデモテープではkeyが高かったのだろう。

そのためkeyのほか、メロディーなどの修正を行い
CD ver. を完成させた。



しかし、前回書いた様に
コーラスを絡めたアレンジもまた
大変印象的であるためメンバーも愛着があり、
レコーディング程ボーカルに
シビアさが求められない(注)ライブでは
こちらのバージョンをやることになったのではないだろうか。

(注)あくまで "繰り返し何度も聞かれる" CDに比べての話であり
   ライブではまた別のシビアさが求められる。




以上がポコ太の考える
クロコダイル・ラップ 初期Live ver.の『正体』である。
いかがだろうか?


さて今回は意図的に深く触れなかった部分がある。
そこが次回のテーマだ。
……というわけで
『クロコダイル・ラップ編』はもうちっとだけ続くんじゃ。




【関連エントリー】
クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 前編
クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 後編
クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 復活編




2013年1月15日火曜日

クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 後編


さて今回もみんな大好き『クロコダイル・ラップ』である。
泣こうがわめこうが『クロコダイル・ラップ』
(しかもLive ver.)なのである。
ここはもうあきらめてお付き合い願いたい。




さて今回のテーマは
[なぜメロディー違いのVersionが演奏され続けたのか?]



前回は初期Live ver.の特徴を
メロディーとコード進行の違いと述べたが
その他にも特徴的な違いが2つある。

 1)keyが違う
 2)オリジナルのコーラス部分がある

では、ひとつずつ見ていこう。




まず、keyの違いから。
前回載せた初期Live ver.の譜面は86年8月
『FANKS "FANTASY" DYNA-MIX』での演奏のものである。
これはkeyがCD ver.と同じ演奏だったため、
メロディーの違いを比較しやすいと考えたからだ。


しかし、アルバム『RAINBOW RAINBOW』の時期の演奏は
keyがかなり高い。

CD ver.のサビが key=G なのに対して
公式の記録が無い為、はっきりしたことは言えないが
どうやら key=B で演奏されていたようだ。
わかりやすくカラオケに例えると、音程を4つ上げた状態である。
これだけ高いとボーカルもかなり張り上げて歌っているが
何カ所かはシャウト気味にして乗り切っている。
前編に参考動画を載せてあります)

この [keyの高さ] から見えてくるものもあるのだが、
ここではひとまず次にうつる。




次はオリジナルのコーラス部分を見てみよう。
初期Live ver.ではイントロやサビ等にCD ver.にはない
オリジナルの歌詞付きコーラスが入る。
(今回も譜面を用意しました)


[Chorus 1984 ver.]


[Chorus 1986 ver.] 
(実際にはこの6度上や3度下などに他のメンバーのハモリが付きます)



先ほど挙げたkeyの違いに合わせ
コーラス部分も84年頃と86年では
違うメロディーになっている。


このコーラス部分、
最初の84年6月「渋谷Live-Inn」での頃はイントロ部分を
ハーモニカ音色によるシンセで演奏しているが、
それ以降のライブではサビ部分も含めメンバーが歌っている。

このコーラスは CD ver. のコード進行では成立せず、
それ故、初期Live ver.のメロディーは
このコーラスと一体と考えていいだろう。
つまりこのコーラスアレンジを演奏したい時は、
自動的にメロディーが変わってしまうということだ。


そしてここが重要なのだが
初期Live ver.では、すべての時期に共通して後半部分で一旦ブレイクし
リズムとコーラス、メロディーだけになる部分がある。
この部分はかなり印象的で、
この曲の顔であるラップ部分よりも目立つほどだ。
おそらくこれこそがメロディー違いのVersionが
演奏され続けた理由ではないだろうか?





と、結論らしきものが出かかったところで
次回『クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 完結編』へ続く。

え? まだ『クロコダイル・ラップ』をやるのかって?
フフフ…ポコ太としては、むしろ
「本当に次回で完結するのか」を心配している。


では、また。





【関連エントリー】
クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 復活編


2013年1月7日月曜日

クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 前編

   
いきなり曖昧な記憶で恐縮だが
確か『DRAGON THE FESTIVAL』の12インチシングルが出たとき、
雑誌のインタビューで『DRAGON THE FESTIVAL』
『金曜日のライオン』『クロコダイル・ラップ』などを例にあげて

「皆さんはどうぶつ好きでいらっしゃるんですか?」


と言う質問があり、そんなアホなと思ったものである。
だがその数ヶ月後、ニューアルバム発売の告知を見てポコ太は驚愕した。
「ご、ゴリラ…!?」






と、まぁツカミはこんなところで
本題の『クロコダイル・ラップ』である。
『Get なんとか』とか『Self なんちゃら』ではなく
『クロコダイル・ラップ (Get Away)』である。
しかも Live version の話である。
もうこの時点で誰か読んでるんだろうか、このブログ…
とか気にせず、早速始める。



今回のテーマは

[なぜ Liveではメロディー及びコード進行の一部が違うのか?]


ファンの方なら『クロコダイル・ラップ』の初期Live ver.では
サビのメロディーおよびコード進行が
CDに収録されているものと違うことをご存知のはず。

(そんなの知らねえよという方のために譜面を用意しました)

[CD ver.]




[初期Live ver.]  1986年8月23日『FANKS ”FANTASY” DYNA-MIX』より採譜


赤線をひいた部分がCDと違うところだ。
コード進行もCDでは {G-C-D-D} となっているが
初期Live ver.では {G-C-G-D} に変わっている。

(メロディーの違いを動画で聞けるようにしました)





未発表曲であればメロディーや歌詞が違うという事はよくある話。
しかし『クロコダイル・ラップ』は
デビューアルバム『RAINBOW RAINBOW』に収録されている曲。
という事は最初のライブの時点ですでに既発表曲な訳だ。


普通、ライブ先行で発表された曲でもCD収録された時点で
CD ver. に歌詞やメロディーなど統一されることが多い。
TM だと有名なところでは『永遠のパスポート』や
『Tomorrow Made New』などがそれにあたるだろう。


  (話はそれるが Rhythm Red tour のビデオに
  『RHYTHM RED BEAT BLACK』がサビしか収録されていないのは、
   Bメロが CD ver. と違うメロディーで
   歌われていたためではないだろうか)



だがしかし、そんなこと関係なく『クロコダイル・ラップ』は
Live ver. として独自のメロディーで歌い続けられる。
先ほど初期と書いたが、実際は1986年8月の野外ライブ
『FANKS ”FANTASY” DYNA-MIX』においても
未だCDとは違う演奏している。


結局その後、90年冬スタートの Rhythm Red tour において
初めて  CD ver. のメロディー、コード進行の演奏が行われる。
(アレンジはかなり違うが)
このバージョンはDVDに収録され、今でも見ることができるが
実は『Live ver. クロコダイル・ラップ』
 (Rhythm Red tour ではサブタイトルの『Get Away』と表記)
の歴史の中でとても珍しい演奏だったのだ。



さて次回は「なぜメロディー違いのversionが演奏され続けたのか?」を
推測してみよう。

have a good time!




【関連エントリー】

クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 完結編
クロコダイル・ラップ (初期Live ver.) の謎 復活編



(2013.01.14)
・Live ver.の譜面に一部、誤りが有ったため訂正しました。
文中に「Album ver.」「Studio ver.」「レコード ver.」などの表記が
 混在していたため『CD ver.』に統一しました。

(2013.02.23)
・「クロコダイル・ラップ」のメロディー譜に音声動画を追加しました。