2013年3月13日水曜日

「小室っぽい」ってなんだろう? その1


個人的な話で恐縮だが
その昔、ポコ太が初めて「曲を作ろう!」
と思った時から決めていたことがある。


「細野晴臣」と「小室哲哉」のような曲は作らない。



何故かというとこの御両名、あまりにもアクが強く
「ちょっとエッセンスをいただく」
というようなことが出来ないのだ。


結果「毒を食らわば皿まで」と『丸呑み』するしかない


例えばどう頑張って作っても、少し「小室風のリフ」が聞こえただけで
他人からは「パクリ」に聞こえるのだ。
(悔しい様な嬉しい様な微妙な気持ちになった方、いるでしょう?)








では「小室哲哉らしさ」とは何だろう?
「TMっぽい」「小室っぽい」当時よく聞かれた言葉である。


サウンドだけに絞っても

・打ち込みによるシークエンス
・(常軌を逸した)転調
・付点八分音符の多用
・歌が早口言葉(十六分音符の連続)
・キャッチーなリフ
・イントロが長い

などなど




他の邦楽アーティストの「〜っぽい」というのが
歌詞やボーカルの歌い方、パフォーマンスを指していた時代に、
これほどサウンドやメロディーに
「〜っぽい」と言われた存在は希有では無いだろうか。



当時よく、ユニコーンの「PTA~光のネットワーク」に対し
「バカにされた」と憤慨しているファンがいたが、
ポコ太はむしろ誇るべきだと思っていた。

だって他のアーティストをネタにして、
こんな「サウンド」のパロディーが成立する?







話を本筋にもどす。


80年代後半 〜 90年代、小室哲哉がメジャーになるにつれ
このような『形』をなぞった数多のフォロワーから
パクリ、パロディーまで、次々と生まれてきた。


しかしポコ太、それらにはまったく反応しなかった。
ポコ太にとって『一番大事な部分』が欠けていたからだ。







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というわけでお待たせしました。
今回のテーマは

[ポコ太の考える『小室哲哉の本質』〜肉体性〜 編]







たしかに上にあげた特徴には重要な点もある。
このうち


『(常軌を逸した)転調』はいずれ別に取り上げるつもりだ。


また、バッキングやメロディーに見える『十六分音符の連続』に関しては
よく言われるように、キース・エマーソンの影響(というより物真似)
と思われるので、ここでは特にふれない。



たとえばこの動画の 0:14〜 を聞けば「そのまんま」のバッキングが聞ける。



(余談だが RHYTHM RED TOUR の衣装って ↓ コレが元ネタでは?)













ではポコ太はどこに小室哲哉ならではのものを感じるのか?


小室哲哉というと「洒落た付点八分音符」や
「華やかな十六分音符」の印象が強いと思うが
ポコ太にとって重要なポイントは


[野太い(骨太な)八分音符の連打によるたたみかけ]






まずこの譜面を見てほしい。















3小節に渡り、ただただ八分音符の連続である。
実はこの曲、TM名義の曲では無いのだが、
そのメロディーの特異さを伝えるため、
あえて曲名も歌詞も書かなかった。


この曲については次回の [〜精神性〜 編] で採りあげるが
ポコ太の考える『小室哲哉の本質』がよく現われている為、
先に譜面だけ見てもらった。






もちろんこれはTM曲のメロディーにも顕著で

・「Kiss You」のサビ前  ♪carry on your dream
・「WILD HEAVEN」のサビ  ♪運命が揺さぶる ♪すれちがわないで
・「I am」の展開が変わる直前  ♪人が生きるため ♪イメージしたなら
・ 小室ソロ「SHOUT」のサビ  ♪ シグナルを睨んでる

などなど枚挙にいとまが無い。
全てを上げるのは不可能なので、後はみなさん各自で探していただきたい。






またこれの応用で、
『独立した二つのフレーズの間を八分音符の連打によって強引に繋いでしまう
というのもよく出てくる。 たとえばこんな感じ ↓


小室ソロ「RUNNING TO HORIZON」






















さて、この話はつまるところ、彼のリズム観(感ではなく観)の話なので
打ち込みのドラムにも曲調にかかわらず顔を出す。


たとえば

・「Your Song」の 0:39〜 のサンプリングボイスや全編にわたるスネアのFill
・「DIVE INTO YOUR BODY」4:08〜 のシンセタム
・「一途な恋」では 2:01〜 ドラムが八分音符の連打をはじめ、
     さらに 2:03〜 はオーケストラヒットまで重なってくる。
・ また、最新シングルの「I am」でも、1:57〜 のスネア、
     2:31〜 や 3:46〜のタムなど、随所で聞く事が出来る。



特に、歌に入る直前だったり、最後の一盛り上がり直前など
「ココゾ」という場所に入ることが多い。


ただ、レコーディングでは修正したり音を付け加えたりすることによって
『着飾る』ことが出来るため、特にドラムはこれでも自重しているほうだと思う。









しかしライブでの生演奏となると、そうはいかない。
ファンの方なら ↓ この動画の 5:02〜 こういうノリ、見覚えがあるだろう。



まるでダダをこねる子供のようだが、彼は演奏中盛り上がってくるとよくこの
「首をカックンカックンさせながら八分音符で体を大きく縦揺れさせる」ノリを見せる。










このノリはどこから来たのだろう?



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『八分音符のたたみかけ』
 ポコ太の見立てではこれは

小室哲哉の原体験である - 60年代終わり〜70年代、
まだジャンルが細分化されていく前 
『骨太なロック』の表出 だと思われる。







実はポコ太のTMに対する最初期の認識は
『ファンタジック+骨太』だった。


これが極まった曲が「YOUR SONG」だろう。
全体としてはファンタジックな第1期TMサウンドの集大成。

しかし、リズム隊だけを聞けば
「ロック」を通り越し、ほとんど「ヘビメタ」だ。
さらにAメロではド派手なBassが左右にパンニングまでしている。


当時『ファンタジック』と『骨太』を
これほどPOPに両立させているバンドは非常にめずらしかった。






しかし、当時の日本の風潮では
『ファンタジック=線が細い=女の子向け』であり
ビジュアル戦略(木根ちゃん…涙)を抜きにしても
初期のファン構成が女性中心だったのも頷ける。

彼らが『SF』ではなく『ファンタジー』と
言い続けていたところからすると
それは意図的なプロモーション戦略だったのかもしれない。



  (正直に言ってポコ太は、男性友達の中で
   「俺、TM NETWORKのファンなんだ」と言いづらかった。
    個人的な体感では「Come On Let's Dance」の頃から
    男性ファンも声をあげはじめた様に思う。
    しかもその曲調よりPVのイメージ効果が凄かった) 






このブログの『はじめての方へ』と題した文章で

  ポコ太にとって『TM NETWORK』とは
  1)プログレバンドである。
  2)ライブバンドである。
  3)男声コーラスグループである。

と宣言した。


これは別の言い方をすると
小室哲哉にとって「打ち込み」は本質では無い
ということだ。
(この件に関しては、またいずれ新たなエントリーを建てます)


ミュージシャンとしての小室哲哉は
パブリックなイメージよりも
はるかに古くさい昔気質の存在なのだ。





今回採りあげた『骨太なロック』の原体験
これは新人デビューとしては高齢だったからこそのバックボーンだ。



そしてこのバックボーンの有無こそ
「シンセ」や「打ち込み」を入口として入ってきたフォロワー達(注)や、
表面をなぞったパクリ曲にポコ太が反応しなかった理由なのだ。

(最初期DTM世代といえる浅倉大介が RHYTHM RED TOUR に参加する際
 「ディストーションギターの音に馴染みが無い」と言っていたのが印象的)










(注)もっともは近年はシンセや打ち込みをフィーチャーしたジャンルの方が
  『骨太』な音やリズムを好む傾向があるので、
   最近はこの状況も変わりつつあるのかもしれない。





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さて次回は
[ポコ太の考える『小室哲哉の本質』〜精神性〜 編]

こちらでも唯一無二の
『小室哲哉』を探る予定なのでお楽しみに。





んじゃ、また。








5 件のコメント:

  1. 青い惑星の愚か者2013年3月21日 2:01

    ごぶさたしてますー
    今回のエントリー面白く拝読しました
    打ち込みは小室さんの本質じゃないってのは、同意します
    小室さんの核は70年代ロックですよね
    特にライブだと、それが強く現れると思います

    前回の白田朗さんの記事も、知らないことが色々書いてあって、勉強になりました
    次は小泉洋さんの記事も是非!
    この二人についてはスルーされているんじゃなくて、TMブレイク前にサポートから外れたから、情報が少ないということだと思うんですよね

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  2. わざわざコメントありがとうございます。

    旧 Network 時代も使っているのはDX7でも実際は
    「オルガン音色でオルガンプレイ」っていう事、結構有りましたもんね。
    音としてはアルペジエーターとかも好きですけど
    ライブではやっぱりオルガンとモノシンセとメロトロンていう
    70年代プログレセットが一番いきいきして見えます。


    ところで白田氏に関するエントリーは実はそちらのBlogコメント欄に書こうとしていた内容なんですよ。
    ただそのタイミングで埼玉のライブが決定してその話題で盛り上がっていたところに水をさすようで控えただけなんです。

    なので今後のエントリーも含め、少しでもお役に立つような内容が有りましたら、
    ドンドン持ち帰ってそちらのBlogの肥しにしてください。

    そちらにも邪魔にならない程度に伺って
    また気付いたことを書かせていただきますね。

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  3. こんにちは、おそばせながら今日、このブログを知り読み漁っていたところです。
    このエントリ、まさに自分が小室哲哉と浅倉大介の音楽の間に感じていたことそのまんまです。
    告白は踊るにあるように( どこまで本人が書いたかは置いて置いて)小室さんにはヴォーカルやギターへの憧憬が強いようで、キースとの出会いで緩和されたとはいえ、キーボードでロックをすることに少し引け目を感じていたかと思います。キーボードではいくら頑張ったとしても本流にはなれない、みたいな気持ちだと思います。
    その気持ちへの反骨心が反映されてキーボードで魅了する曲を志向したんだとおもいます。もしかしたらキースやウェイクマンの系譜の上に自分を置いて新しい形の魅せるキーボードになろうとしてたのかもしれません。
    対して、浅倉大介にはその反骨心がない、小室さんが敷いたキーボードでもかっこいいんだという路線の上にただ安住しているだけの気がします。

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  4. 加えて、小室さんには70年台までのロックをの影響を伺えるのに対して、浅倉大介やいがらし等のフォロワーからはうわべだけをすくった拡大再生産に聴こえて、自分が聴き込むまでにはいたりませんでした。

    余談ですが、ビルボードのインタビューで、小室さんが初期のtmの目指してたところ、ときかれて洋楽を聞いてもらうこと、と答えていました。自分はtmからプログレにはまりその延長でいまは洋楽ばっかり聞いていて、たまにtmの元ネタを見つけてにやっとしています。このように洋楽からの影響を感られるたびに小室さんおルーツはロックだな、思います。
    まとまらない文章、浅倉さんを引き合いに出してしまったこと申し訳ありませんでした。

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  5. コメントありがとうございます。


    僕も浅倉大介氏をTMの文脈に入れてしまうのは浅倉氏にとっても失礼だと思います。
    (彼自身は喜びそうですけれども)


    実は僕、1988年頃TMともEOSとも関係のないところで、
    浅倉氏を何度かお見かけしたことあります。(主に渋谷のYAMAHAで)
    その時、徒然なるままに鍵盤を弾いてる氏を見ていると、映画音楽や初期YMOに代表されるテクノポップ、
    当時のリアルタイムだとスクリッティ・ポリッティみたいなのが好きなのかなと感じました。


    TMに関しては聴いてはいたんでしょうけど、スタッフとして関わるまでは
    あくまで『シンセを使ったユニットのひとつ』程度の関心だったと思います。
    でなければ「アクシデント」に対して「この曲ってシングルだったんですか?!」
    (2005年のDVD「SPIN OFF from TM -8songs,and more.-」)
    なんて発言しないでしょうし。


    それでも浅倉氏がTMファミリーを自認してくれているのは、音楽的にというより
    プロとしての有り様、見せ方を勉強出来たことや
    音楽を作る仲間が出来たという喜びが大きかったからではないでしょうか。

    個人的には浅倉氏には歌モノより
    映像と結びついたinstrumentalを多く手がけて欲しいと思っています。




    こちらも長々と失礼しました。
    今後ともよろしくお願いします。

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