2017年2月12日日曜日

ディスコミュニケーション 〜「Thrill Mad Natural」て、どんな曲?



皆様、お久しぶりです。
今更ですが、2017年あけましておめでとうございます。


昨年は長期入院を3回も繰り返してしまい、
また目も包帯で塞がれた状態が続いたため、更新もままなりませんでした。

楽しみにされていた方には、申し訳ありません。

自分としても『重箱blog終了まで、あと2回』と言いながら、
一向にケリをつけることができず、もどかしい日々を過ごしていました。



そんな中、どうせあと2回は「小ネタ☆スペシャル」なんだから、
全部を一度にではなく、小ネタ1つずつを書き上がった順にアップしていけばいいじゃないか!
と思いつき、早速執筆に取り掛かったのですが、
これが大誤算!!

どんどん記事の内容が膨れ上がり、
「小ネタ」どころではなくなってしまいました。



よって今回は番外エントリーとし、
「小ネタ☆スペシャル」はこれとは別に、
予定通り、あと2回更新いたします のでご安心ください。


では、今回も重箱のスミを突きまくります!






---------------------------






一時期、偶然ながらも初対面の方に
『「Thrill Mad Natural」はお好きですか?』
と問われることが、やたらと続いた。

ミツカワも一応、れっきとした大人 なので、事を荒立てるような真似はせず、
『ええ、好きですよ』と、涼しげな表情で簡潔に答えていたのだが、
実はその裏で、どうしようもないモヤモヤが溜まっていった。




それが、今回のテーマである
『そもそもTMに「Thrill Mad Natural」という
 タイトルの曲は存在するのか?』という問題だ。






---------------------------






先にぶっちゃけたことを言うと、今現在、これほどこの呼称が一般化している以上、
存在する、としか言いようがない。


すなわち…

1990年冬〜91年春にかけて行われた「RHYTHM RED TMN TOUR」の模様を収録した
DVD「RHYTHM RED LIVE WORLD'S END I」

ここに収められた、シンセ・小室哲哉とドラム・阿部薫による、
掛け合い的なインストルメンタルのこと を、
世間(?)では「Thrill Mad Natural」と呼んでいるわけだ。






















































これは初発のビデオ時代から、そうクレジットされているので 間違いではない。

また、この演奏自体はそのままの形で、
1990年12月「RHYTHM RED TMN TOUR」スタート時から存在していた。

ここでミツカワが問いたいのは、
ではツアー・スタート時から「Thrill Mad Natural」というタイトルは、
"この演奏" のためのものだったのか?
ということだ。






---------------------------






少々、分かりづらいので細かく説明しよう。


まず一般のファンの中で "このタイトル" と "あの演奏" が一体化したのは、
1991年3月に当該ビデオが発売された時から だろう。
ビデオのパッケージには "あの演奏部分" について、
はっきりと「Thrill Mad Natural」とクレジットされていたからだ。


もちろん「Thrill Mad Natural」というタイトル自体は、ツアースタート時から、
雑誌等、各メディアにて発表されたセットリストにも存在はしていた。

ただ、その時点では
"あの演奏" を「Thrill Mad Natural」と呼んでいたファンはいなかっただろう。



 何故か?



ここで「RHYTHM RED TMN TOUR」のセットリストの一例(注)を見てみよう。
「Thrill Mad Natural」の前後を確認してほしい。

 (注)このツアーでは公演日によって、セットリスト後半部分がかなり変更された。
    ただ、本項目には関係ないので割愛する。ここに載せたのはツアー初日のもの。







































まず押さえていただきたいのは、このセットリストから分かるのは
「Secret Rhythm」と「Time To Count Down」の間が
「Thrill Mad Natural」である、ということでしかない ということだ。


なぜこんな、持って回った言い方をするかというと、
この「Thrill Mad Natural」に該当する部分が、
実際のコンサートでは10分以上あった からだ。
しかも、その内容は1つの演奏(1曲)ではない。


この部分もツアー中に、内容・時間共に細かく変化したのだが、
ここではまず、前曲「Secret Rhythm」の終わりから、
次曲「Time To Count Down」スタートまでの、基本的な流れを見てみよう。






---------------------------






全体は大きく4つに分けられる。
ここでは便宜上、番号をつけて呼ぶ。




 [演奏 - その1]

「Secret Rhythm」演奏終了後、メンバーは舞台を去り、
ステージ上には葛城哲哉1人が残される。

ここで、まずは葛城哲哉による文字通りの1人舞台が始まる。

ツアー開始当初は単にギターソロコーナーだったのだが、
すぐに彼の生声によるシャウトも加わるようになり、その後は
実質、葛城哲哉パフォーマンスショーコーナー になっていった。
このパートはツアーが進むにつれ、どんどん長くなり最終的には4分程度にまで育った。

特筆すべきはホール公演だけでなく、アリーナ公演になってもマイクを通さず、
生声でやりきっていた(!)ことだ。

ステージも客席も真っ暗な代々木体育館の舞台上、一人ピンスポットを浴びながら
♫〜 Tokyo Baby ! とシャウトする葛城の姿は圧巻で、
実のところミツカワにとっては、このライブで一番印象深いシーンだった。

この葛城哲哉ソロコーナーの終わりで、小室哲哉と阿部薫が舞台に戻ってくる。




 [演奏 - その2] (DVD収録パート)

ここで演奏されるのが、DVDに収録されている "例の演奏" である。
以降 [演奏 - その2] と呼ぶ。
これはDVDのままなので割愛する。

なおリハーサル(公開リハーサル「The Formation Lap」を含む)時点では、
この演奏直後、間髪を容れず高速のドラムが始まり、
それに合わせ、小室哲哉のアドリブ風シンセソロが演奏されていた。
しかし、実際のツアーでは演奏された形跡がない。




 [演奏 - その3]

前の演奏から引き続き、ここから小室哲哉のソロコーナーが始まる。
基本的にはTMやソロの作品をシンセで演奏するといった形である。

「天と地と」や同サウンドトラックの曲、「SEVEN DAYS WAR」
またツアー途中から(小室哲哉曰く「勝手に指が動き出して」)
「A Day in the Girl's Life」も演奏されるようになった。
ツアー最終日には、ここで「天と地と」のサビを本人が歌ったそうだ。

この演奏が終わると、待機していた阿部薫、葛城哲哉、浅倉大介も加わり、
注目すべき次の演奏 が始まる。




 [演奏 - その4]

ミドルテンポの演奏の上で葛城哲哉のギターがメロディーが奏でる、
ロックバラードといった風合いのインストルメンタル。
「天と地と」の様な、オリエンタルで大陸的な雰囲気も感じさせる。

ここは演奏メンバー・内容ともに、ツアー終了後の4月に行われた、
北九州スペースワールドにおける小室哲哉ソロコンサートの原型と言えるだろう。


この [演奏 - その4] は [演奏 - その2] のような、
楽器同士のセッションといった体のものではなく、
イントロ ー Aメロ ー サビ といった構成があり、
独立した楽曲として成立している。
さらに間奏部分ではギターソロからシンセソロまで用意されていた。


少なくともミツカワは、他でこの曲を聴いたことがない。
同時期の Mr.マリック「Psychic Entertainment Sound」や
「天と地と」サウンドトラック等との関連性を疑ったが、やはり違うようだ。

ということは、
このツアーのために制作された "名も無いインストルメンタル曲" ということになる。
同様の例としては、1986年のホールツアー「Fanks Dyna☆Mix」の
小室ソロコーナーで演奏された、アップテンポのインストルメンタル曲がある。




3分以上かけてこの曲が演奏された後(ツアースタート時のセットリストでは)
小室哲哉のピアノが鳴り響き「Time To Count Down」からライブ後半戦がスタートする、
というのが全体の流れだった。

途中書いたように、この「Thrill Mad Natural」は
 [演奏 - その1] 及び [演奏 - その3] 部分が、ツアーが進むにつれ時間がどんどん伸び、
最終的には全体で15分近くにまでなった。






---------------------------






ここまでの説明で、ミツカワが抱き続けていたモヤモヤが分かっていただけただろう。

つまり「Thrill Mad Natural」とは、特定の演奏につけられた曲名ではなく、
「RHYTHM RED TMN TOUR」内での『コーナー名』
だったのではないか?
というのが、当時から今に至るミツカワの見解だ。



ただし最初に書いたように、
ここまで [演奏 - その2] 単独の曲名として一般化してしまった以上、
もう、事実上の曲名と言えるだろう。

そのこと自体に意義はない。

ただそのことによって、実際のツアーで行われていた
「Thrill Mad Natural」の実態がその影に隠れてしまったため、
この場に書き残そうと思った次第である。






---------------------------






さてここまでは、ミツカワが当時からもんもんと考えていた個人的見解である。
では、オフィシャルではこの「Thrill Mad Natural」、どういう解釈なのだろう?



ここで2つの資料を引っ張り出してきた。

 1つはツアースタート時にヤマハから発行された「SPEED OF SOUND」
 「RHYTHM RED TMN TOUR OFFICIAL SOUND GUIDE」と銘打たれたガイド本だ。

 もう1つはツアー終了後に発行された藤井徹貫氏著のドキュメント本。
 「TMN “RHYTHM RED” TOUR DOCUMENT」



特に後者。

熱心な重箱blogの読者の方なら、この本にまつわる
の滲むようなエピソードがあったことをご記憶だろう。

ミツカワは以前、こちらのエントリーで、
そのコンサート演奏部分にまつわる
全内容をリストアップし再構成する という 苦行 を行ったことがある。
(現時点で『人生における無駄な時間 ワースト10』に、見事ランクインしている)


そう!
実はその際、このエントリーを書く日が来ることを見越して、
リスト内に「Thrill Mad Natural」用の別項を作り、
密かにその関連記述をリストアップしていたのだ!!





というわけで、ここからは 満を持して送る、
『そこんとこオフィシャルではどうなの?!』コーナー!






---------------------------






まずはツアースタート時点ではどうだったのか?
「SPEED OF SOUND」より、
セットリスト各楽曲解説から「Thrill Mad Natural」部分を見てみよう。





































冒頭に "異色のナンバー" と書かれているので1曲として扱われているのかと思いきや、
その後を読むと、
・葛城哲哉のソロコーナー
・小室哲哉のソロコーナー
・小室哲哉と阿部薫による [演奏 - その2]
3つが内包されていることが分かる。

(コーナーの順番が違うが、これはまだツアースタート前なので、
 リハーサルを元に執筆されているからであろう)

というわけでツアースタート時点では、
例の [演奏 - その2] 単独で「Thrill Mad Natural」、という扱いではなく、
[演奏 - その1] 及び [演奏 - その3] を含んでいる ことが分かる。






---------------------------






次にツアー終了時点ではどうか。


お読みになった方はお分かりだろうが、この「TMN “RHYTHM RED” TOUR DOCUMENT」は、
オフ日や移動日なども含めた、あくまでツアー全体のドキュメント本なので、
各楽曲が一覧できるようなものではない。

公演日によっては 演奏内容にほとんど触れていない日さえある。

また、ハッキリと曲名を書かないまま描写が続く文章もあり、
リストアップする際には、非常に気を使った。(というか、すり減った)



その上で、確実に「Thrill Mad Natural」のことを描写していて、
なおかつ本エントリーの参考となる部分を書きだしたのが、次のリストである。

鍵となるのは、当時『TMN 第4のメンバー?!』とまで言われた
謎のロボット「ガルボア」に関する演出部分 だ。























 ここでなんと、驚くべき大どんでん返しが起こる!!





[P.31]
 ガルボアが姿を現わす。
    〜中略~
 そこから葛城哲哉のギター・ソロ、
 小室哲哉のキーボード・ソロ(ドラムとのセッション 〜「天と地と」)
 が終わるまで静止する。
    〜中略~
 「Thrill Mad Natural」の最後でガルボアは再び動き始める。
    〜中略~
 そして、ステージ脇へと姿を消す。



[P.44]
 ギター・ソロ 〜 キーボード・ソロから続くインスト「Thrill Mad Natural」の後ろに
 「Good Morning Yesterday」が入った。



[P.97]
 ガルボアがステージから去る「Thrill Mad Natural」を短く、〜

(ページナンバーは後から発売されたペーパーバック版とは異なるので注意)





まず [P.31] [P.97] に書かれている "ガルボアの退場シーン" は、
上記 [演奏 - その4] 部分での演出 である。

一応(伝わったかどうかは別として)実際のライブでは、
完成したもののすぐに動かなくなってしまったガルボアが、
メンバーたちの奏でる [演奏 - その4] によって再生し、
舞台を去っていくという演出になっていたわけだ。

(なので、[演奏 - その2] しか収録されていないDVDでは、
 前曲「Secret Rhythm」で登場したガルボアのその後がうやむやになってしまっている



この記述を見る限り、このドキュメント本でも
[演奏 - その4] を「Thrill Mad Natural」として扱っている ことが分かる。




問題はここからだ。

[P.31] では [演奏 - その2] を、
小室哲哉のキーボード・ソロの一部(ドラムとのセッション)として扱っている。


その上で [P.44] を読むと、
「Thrill Mad Natural」という曲は [演奏 - その4] のことであり、
[演奏 - その1〜3]  は、単なるギター&キーボード・ソロ に過ぎず、
=「Thrill Mad Natural」には含まれない、
という風にも読めてしまう!!





         まさかの展開…





…ただである。


はっきり言ってしまうと、この件に限らず当ドキュメント本の記述には、
全体に渡って かなり揺れがある と感じる。

そもそも執筆にあたって、
藤井徹貫氏の中に「Thrill Mad Natural」の確固たる定義付けがあったのかも疑わしい。
また 誤植が非常に多い ことも、以前のエントリーで指摘した通りだ。


しかし、それでもガルボアの退場シーンに言及している以上、
やはり [演奏 - その4] は間違いなく「Thrill Mad Natural」であるという認識 なのだ。






---------------------------






さらに補足しておくと、[演奏 - その2] は先に書いた
1991年4月・北九州スペースワールドでの小室哲哉ソロコンサート「THINK of EARTH」にて
「SPACE WORLD(注)」と称された曲の1部分として演奏されている。
 (注)翌年のV2ライブで演奏されたものとは同名異曲。

これを見ると、ツアーの時点では小室哲哉自身も独立した一曲というより、
"パーツ" 程度の認識 だったのではないかと思われる。








































     小室哲哉ソロコンサート「THINK of EARTH」の様子。
     「RHYTHM RED TMN TOUR」の終了から1ヶ月にも関わらず、
     この時点で既に、MOOG SYSTEM 35 / ソリーナ / ハーモナイザーなど、
     次ツアー「Tour TMN EXPO」の機材セットが完成していることに驚かされる。







---------------------------






以上2冊の記述をまとめると、オフィシャル的な観点から見ても
「Thrill Mad Natural」というのは、[演奏 - その1 〜 その4]  までを含む、
全体のコーナー名として設定されていた と言える。

実際、ビデオのクレジットも、
読み手次第で "曲名" としても "コーナー名" としても、どちらともとれる わけだ。


結局、オフィシャルでの設定はなく、
ビデオ発売後にファンの間で [演奏 - その2] の曲名として広まったものが定着し、現在に至る…
というのが真相ではないだろうか。

もっと言えばファン同士の間でも、お互い確認していないだけで、
Aさんは "コーナー名" として発言し、それを聞いたBさんは "曲名" として受け取るという、
すれ違いの会話をしている可能性もある。


さて、
あなたの「Thrill Mad Natural」は一体どちらだろうか?






---------------------------






最初に紹介した『「Thrill Mad Natural」はお好きですか?』という質問に、
『ちょっと待ってください!あなたの仰っている「Thrill Mad Natural」とは
 〜ウンヌンカンヌン〜』などと言わなくなった最近の自分を省みると、
あー、俺も大人になったなぁ… と思います。



まあ、TM関連に対して言わなくなっただけだけどね。
特撮関連だと もっと悪化してる 気がするけどね…。


『ちょっと待ってください!あなたの仰っている「ハカイダー」とは
 「人造人間キカイダー」に登場したライバルキャラクターのことを言っているのか、
 それとも「サンダーマスク」第6話に登場した…湯hrjg:;h;fpkg:slhんk、p@:!!』




       …はぁ、はぁ、はぁ、




また次回まで、お時間をいただきます。
なかなかコメントのお返しも出来ませんが、ありがたく読ませていただいております。

んじゃ、また。







1つ書き忘れていたので、追記いたします(2017年2月13日 午前2時30分)

TM関連の楽曲を管理する「音楽出版ジュンアンドケイ」では、
[演奏 - その2] に対し「Thrill Mad Natural」が曲名として付けられ管理されています
ただこれは、ビデオに収録され商品化されたものを、機械的に追認しているに過ぎません。

夢物語ですが、もしもこの先
「RHYTHM RED TMN TOUR」が全収録されたDVDなどが発売された場合、
どのような曲名が付けられて管理されるのか、興味あるところです。







2016年8月14日日曜日

[ラストまであと2回] コロシアムと「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 地の巻

前回からずいぶん間が空いてしまいました。
ミツカワです。



この「TM NETWORK の重箱のスミ!」は本エントリーを含め、あと2回のため、
今回も内容を詰め込みすぎました。
いつもの事とは言え、スクロールのしすぎで腱鞘炎にならないように、お気をつけください。

とにかく内容が多いため、とっとと始めますが、
このエントリーはシリーズの為、いきなり読んでもなんのことやら分からないと思います。
まだお読みでない方は、こちらから順にお読みください。

・コロシアムを暴け・下準備編 /「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 前編
・コロシアムを暴け・下準備編 /「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 中編
・[ラストまであと3回] コロシアムと「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 天の巻





一応ですが、先に 当シリーズの前提を2つ。

・代々木3公演のうち、初日(1988年3月14日)は収録が行われていない(根拠はこちら

・CD「TMN COLOSSEUM」の制作には、メンバー3人が関わっていないため、
 新しく演奏されたパーツは無く、基本的に有り物の素材を切り張りして作っている。



また前回同様、ここでは当エントリーの主題である、1988年春に行われたアリーナツアー
「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」のことを『KDD』と表記します。

では最後の「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」編、
スタート!!












—————————————————












♫ 1988年3月15日(代々木公演二日目)の映像

各曲を個別に見る前に、長いことほったらかしにしてあった、この件にふれておこう。
DVD「FANKS the LIVE 2」における3種類の映像素材
・1988年3月15日 - 代々木公演二日目
・1988年3月16日 - 代々木公演三日目
・1988年4月4日   - 広島公演
の内、代々木公演における2種類の見分け方である。


なお前回でも念を押したが、ここでの検証は全て
CD「TMN GROOVE GEAR」に収録されたKDD関連曲4曲

「SELF CONTROL [LIVE VERSION]」
「NERVOUS [LIVE VERSION]」
「ALL-RIGHT ALL-NIGHT [LIVE VERSION]」
「DON'T LET ME CRY [LIVE VERSION]」

に付けられた “1988年3月16日収録” というクレジットがスタート地点になっている。
この公式クレジットが誤っていた場合、
このエントリーの筋立ては全て崩れ去ることをお断りしておく。




———————




その上で結論であるが、素材として収録された1988年3月15日・16日の内、
このDVDに使われている 映像は大半が16日のもの である。
(音声は完全に16日のもの)

この根拠は非常に単純で、


Aコース

3月16日とクレジットがある「TMN GROOVE GEAR」に収録された「All-Right All-Night」と、
このDVDのアウトテイクである ビデオ「FANKS the LIVE 4」に収録された
「All-Right All-Night」の音が同じ。

その ビデオ「FANKS the LIVE 4」収録の「All-Right All-Night」において、
映像と音がズレているカットは全て広島公演のもの。

つまり「All-Right All-Night」における代々木公演の映像は、ほぼ全て16日のもの。


Bコース

同じく3月16日とクレジットがある「TMN GROOVE GEAR」に収録された
「Self control」「Don't Let Me Cry」にのっている音割れノイズと同種のノイズが、
「TMN COLOSSEUM」収録の「Resistance」「Self control」にも発生している。
前エントリー参照

その「Resistance」と同じく、DVD「FANKS the LIVE 2」に収録された
「Resistance」の音声部分にも同じ場所、同じ量、ノイズが発生している。
前エントリー参照

その音声素材は、同日、つまり3月16日の収録である可能性が高い。

以下、Aコースと同じ。
その音声と映像がズレているカットは全て広島公演のもの。

よって、代々木公演の映像はほぼ全て16日のもの。


Cコース
上記2曲に限らず、このDVDの最初から最後まで、
音とズレていると気付いた映像は、全て広島公演のものであった。



こう見ると、音声・映像、共に、
むしろどこに、パッケージにクレジットされている
 “1988年3月15日” の素材が使われているのか疑問 だ。

先に強調しておくが、今回見ていく3曲には “3月16日以外の素材” も使われているが、
それらは いずれも3月15日のものではない。




———————




では、15日の映像は使われていないのだろうか?
というと、そうでもないのは以前みたとおり
あまりに微妙なカット ↓ だが…。



































そこで最後に、その他の 3月15日の映像ではないか?と疑われる、
(でも多分違う)
カットを紹介しておく。




♫〜 下手側のカメラ

気になったのは代々木公演の映像に映っている、下手側(舞台向かって左)に設置された、
この大きな三脚に設置されたカメラだ。


























これは上手側に設置されたカメラのようにタイヤが付いているわけではないので、
その大きさから見ると移動させるには、それなりの手間がかかるようにみえる。

にもかかわらず、設置場所が映像によって変化しているのだ。








コンサートスタート時(まだ幕が閉まった状態)




























コンサート前半




























コンサート後半





























ただ、これだけでは何とも言えない。

というのも、この DVD「FANKS the LIVE 2」は、収録曲のバランスが、
異常なほどコンサート前半に偏っており、後半は最終「Human System」1曲のみ。
(「Children Of The New Century 〜 KOMURO keybord solo」から「Human System」までは、
  途中7曲も飛んでいる!

これ以外の後半曲としては、当時の特典ビデオ「FANKS the LIVE 4」収録の
「All-Right All-Night」が存在するのみだ。

その「All-Right All-Night」にしても
「Children Of The New Century 〜 KOMURO keybord solo」からは3曲飛んでいるので、
これだけあれば、この大きな三脚を担いで移動させる事は可能だ。



さらに実際のライブとDVDでは
「Kiss You」⇄「Resistance」
「Time Passed Me By」⇄「Telephone Line」
曲順が組み替えられている

これでは実際の流れが見えてこない。







♫〜 木根尚登のドリンク

さて、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
映像チェックをしていながら、すっかり忘れていたのだが、以前小ネタで
"木根尚登のドリンクが1曲目にして落下する" という話を書いたことを思い出した。

『そうだ!これほど判りやすい収録日シンボルはないじゃないか?!』

というわけでまずは、1曲目でロストしたドリンクがどの時点で復帰するのか確認した。
結果、このDVDに収録されている曲の中では
「Telephone Line」の時点で復帰していることが判る。


ということは1曲目「Be Together」の2番から「Telephone Line」までの間、
つまり「Resistance」「Kiss You」の映像(注)で、
木根尚登のラックの上にドリンクが乗っていれば、
それは 落下した日とは違う公演日の映像 ということになる。



というわけでドキドキしながら再度、該当箇所をじっくり見直したのだが、
結果 "ドリンクのある映像" は全て広島公演のものであった。

もちろんこれは、木根尚登の背後のラックの上が確認できるカットのみの話なので、
これをもって、代々木ではほぼ単日の映像しか使われていないと断定するわけにはいかないが、
やはり代々木の映像は大半が3月16日であり、
使われていたとしても、3月15日のものは補助的な役割にとどまっていると言えるだろう。




 (注)ただし、DVDではこの後に収録されている「Time Passed Me By」も、
    本来の曲順では「Telephone Line」の前に演奏されていた。
    しかしこの曲の映像には、木根尚登ブースが一切映っておらず、
    残念ながら判断はできなかった。

    このDVD収録曲中、唯一この曲のみ、
    広島の映像が使われず代々木公演の映像だけで構成されている
    これは以前指摘したように、
    ツアー中盤からこの曲における小室哲哉の立ち位置が変わったため、
    映像を混ぜることが出来なかったのであろう。

    なので “代々木の別日映像” を検証するにはうってつけの曲なだけに、
    このドリンク判定が使えないのは残念だった。





ではここからいよいよ本題。 

CD「TMN COLOSSEUM」収録の "B群" 3曲
・Fool On The Planet
・Beyond The Time
・Be Together
を個別に見ていこう。










—————————————————












「Fool On The Planet」


前回は「TMN COLOSSEUM」収録のKDD音源の中で、
2曲(「Resistance」「Self Control」)に発生していた音割れノイズに注目したが、
もう1曲、これとは別種の不可解なノイズがのっている曲がある


それが「Fool On The Planet」である。


歌が終わった後、エンディング部分に注目してほしい。
4:13 と 4:24 の2箇所で、かなり大きく “ボコッ”
『異音』ともいうべき音が入っている。


当初、自分の印象としてはマイクに何かが触れたような、
あるいは大きな風圧がかかったような音に聴こえた。
通常であれば、ボーカルマイクでよく発生するような音だ。

しかしこの部分、宇都宮隆は既に歌い終わっている
もしボーカルマイクにのったノイズなら
オフにしてしまえばいいだけ なので、
この “ボコッ” という音がボーカルマイクに起因するものとは考えにくい。



では、これはどこで発生したノイズだろうか?。
ここでヘッドフォンを着け、腰を据えて聴いてみると別の理由が浮かび上がってきた。




———————




以前、こちらのエントリー"アリーナツアーに切り替わるタイミングで、
幾つかの曲に補助的に、打ち込みのシンセベースが導入された" と書いた。

この『試験』を経て、同年8月の東京ドーム公演から人間のベーシストが消え、
全編打ち込みのシンセベースに切り替わるわけだ。



この異音。
どうも、その シンセベース絡みではないか? と思われる。

問題の箇所を聴いてみると、このエンディング部分、
かなり低域でシンセベースが鳴っている



…のだが、なぜか 7〜8小節目だけ空白になっている。

ここで終わったのかと思ったら、9小節目にはまたシンセベースが入ってきて、
不自然というか、トラブルの臭いがプンプン する。
で、この空白部分の頭に例の “ボコッ”(2回目)という音が入っているわけだ。(譜面参照)



また、その前のエンディング 1〜2小節目では、入っているのかどうか分からない程、
薄い音だったのが “ボコッ”(1回目)という音の後
3小節目からは急に可聴帯域のボリュームが上がっているようにも聴こえる。

歌い終わってからの12小節





























この状況を鑑みるに、この “ボコッ” という音の正体は、
収録時にレコーダーがシンセベースの重低音についていけず、
クリップを起こした音 なのではないだろうか。




どちらにせよ、この部分は単に曲のエンディングというだけでなく、
2枚に渡る CD「TMN COLOSSEUM」全体のエンディングにもあたる部分である。
ここに「Fool On The Planet」を置いたのは、制作側もそれを意識したに違いない。

にもかかわらず、この異音は一度気付くとかなり目立ち、興ざめさせてしまう。

こういうところこそ、本来なら修正すべきだと思うのだが、
なぜこのノイズが素通りしてしまったのか、理解に苦しむ。




———————




さて、異音以外のところを見てみよう。

同じくエンディング部分についてであるが、この「TMN COLOSSEUM」版では
既に Bass 担当の日詰昭一郎は演奏を終えている。

だが代々木3公演を終えた後、次の名古屋公演からは、
彼もこのエンディング部分に音を加えることになる。
Drum のシンバルロール(これは代々木の時点で既に行われている)に合わせ、
スライドアップを挿入という、演奏というよりは “雰囲気モノのSE” といった感じの音だ。

つまり、このプレイの入っていない「TMN COLOSSEUM」収録の音源は、
代々木3公演での演奏ということになる。
またその他のパートも、多くが前回の3曲同様 3月16日 のテイクで間違いない。



例えば3月16日の演奏で、1番特徴的な(判りやすい)ところは、
全ての演奏が終わった後、1人残った小室哲哉の演奏する “アー” というボイスサンプルが
A → E→ A(オクターブ下)
という、半ば投げやりなフレーズで終わる ところだ。




———————




ところが、ここからが前回分析した3曲と異なる部分なのだが、
この「TMN COLOSSEUM」版「Fool On The Planet」には
"3月16日以外の音" が混ぜられている



まず、はっきり言えるのは 歌が違う。

こう言い切る根拠は単純明快。
実際の3月16日は歌詞を間違えていた からだ。


この日の宇都宮隆は、1番のAメロを

♫〜 星の降る小高い丘まで
   今すぐに君を連れて行く
   窓越しじゃ物足りないから
   今すぐに君を連れて行く ⇦ (正しくは ♫〜 できるだけ夜空の近くへ)

と、歌ってしまったのだ。

そんなわけで、この「TMN COLOSSEUM」版は、ボーカルが差し替えられているのだ。
この件は、次の「Beyond The Time」でもう一度、触れる。




———————




またもう一点、注目すべきところがある。

この時のライブアレンジで特徴的な、本来2番にあたる所を丸ごとカットして、
マルチテープからサンプリングした小室哲哉による多重コーラスを延々流す箇所があるが、
ここで聴けるサンプリングコーラスは、
編集、および差し替えである。



まず前提として、あまり言及されないがこの長い間奏部分。
これでも実際の演奏より、短く編集されているのである。

「TMN COLOSSEUM」版 → 28小節
         本来の演奏 → 32小節

このようにそもそも尺をいじっているわけで、素材そのままでは使えないのだ。




それを踏まえた上で、ここに入っているサンプリングコーラスを2種類に分ける。

まずは
♫〜 You might think  ♫〜 just a dream
という原曲サビのコーラス。

これは別日の演奏に差し替え、あるいはCD制作時に後付けされた可能性が非常に高い。
実際のツアーでも、この歌詞付きのコーラス自体は流れていた。
ここでは "3月16日以外のテイクに差し替えた” 可能性を指摘している

つまり、もともと流れていた ♫〜 アー や ♫〜 ウー などのコーラスの上に、
後付けで歌詞付きのコーラス部分を『盛った』のではないかということだ。


一聴して判るが、この歌詞付きのコーラスだけ、
バックの ♫〜 アー や ♫〜 ウー などのコーラスとは別物の、
ド派手なディレイがかけられている
実際のライブではこんな派手なエフェクトはかけられておらず、
これは確実に スタジオで加工したもの だ。

また実際のツアーではワンセットで流れていた
♫〜 Make a wish ♫〜 make it true というパーツが、
この「TMN COLOSSEUM」版には欠けている。




さらに背景の ♫〜 アー や ♫〜 ウー というコーラスも、
別の日のテイクと差し替えている可能性がある。
実際の3月16日は、もっとモジュレーションを深くかけたり、
メロディーっぽく弾いたりして、少々サイケデリックな感じであった。




個人的には両方とも全取っ替えされていると見ているが、これに関してはあえて断定しない。

というのも、このサンプリングコーラスはサラウンドで会場を駆け巡っていたため、
聴き手の位置によってそれぞれ聴こえ方が違い、これが正解という実態が掴みにくい。
「TMN COLOSSEUM」で聴かれる音は、
あくまで CD (2ch) 用に再構築したものである。
(これに関しては DVD「FANKS the LIVE 1」における
 「Get Wild」「Maria Club」のイントロも同様)

ただ先に書いたように尺が異なっている以上、手が加えられている事は確実だ。




———————




ここまでお読みいただいたように、前回取り上げた “A群” 3曲と異なり、
今回取り上げる “B群” 3曲は、それぞれ DVD「FANKS the LIVE 2」の音声トラックと、
同様の素材(3月16日分)を使用しつつも、
一部、あるいは大胆に別日のトラックと差し替えられていることが特徴だ。

では、次の曲を見ていこう。












—————————————————












「Beyond The Time」

この曲は非常に興味深い。

以前「Ipanema'84(TMN COLOSSEUM での表記)」を取り上げた際
ボーカルの声質に関し “初視聴時に違和感を覚えた曲がもう1曲ある” と書いておいたが、
それがこの「Beyond The Time」である。
極端に言うとヘリウムガスを吸ったような声に聴こえ、ギョッとしたのだ。

そもそも小室哲哉の発言によれば、
この曲のAメロ・Bメロにおけるメロディーというか音域は、
"宇都宮隆の暖かみのある中音域を活かす" という意図で組み立てられていたはずだ。

ところがこの「TMN COLOSSEUM」版では、その中音域の膨らみがバッサリと欠け、
ペラペラの声になっている。

同じような声質の「Ipanema'84」に裏があったように、
この曲にも 何かしらの細工が施されている と思われる。




———————




まずは “なぜ、そんな細工をする必要があったのか?” という点。
その理由は非常に単純だ。

実はこの曲の素材が収録された3月16日の公演にて、
宇都宮隆は2番の歌い出しを 入り忘れてしまい、
空白になってしまったのだ。


具体的に言うと ♫〜 夢と言う船に導かれて 〜 という部分は無言で、
 ♫〜 過ちの 〜 から歌い出している。

さらにその後も動揺したのか、
♫〜 いつかまた 戻れる日がある 〜 と歌うべきところを 
♫〜 この胸を 君に差し出して
と間違えてしまい、結局 2番のAメロ全体がグダグダ になってしまった。


「TMN COLOSSEUM」制作時にこの空白部分を補うため、
別のところからボーカルを持ってきたのだ。
そして、そのテイク違いの辻褄合わせのために声質を整えた結果、
違和感のある声になってしまったと思われる。


ここまでは「Ipanema'84」と同じ。
しかし、この曲の本当に興味深いのはここからだ。




———————




せっかく差し替えたのに、その差し替えた、
2番の歌い出しの歌詞が間違っている


♫〜 愛という ←「TMN COLOSSEUM」版
♫〜 夢という ← 正しい歌詞


普通に考えれば、修正するのにわざわざ歌詞を間違えたテイクを持ってくる理由は無いわけで、これはつまり、
修正用として用意できた別素材が、
歌詞間違いをしたテイクしか存在しなかった、
ということを示唆しているわけだ。



というわけでこの “別素材” が、いつ、どこでの収録テイクなのかは、
 ♫〜 愛という〜 と間違って歌ってしまった日・会場が解れば、
パズルが一気に解けるはず(注)なのだが、
このエントリー執筆時点では、残念ながら解らなかった。
ご存知の方はぜひお教え下さい。

 (注)もっとも『予備の録音テープは山程あるけど、
    全部歌詞を間違えてました!てへ♡』という可能性が無いとは言い切れないが…
    言い切れないが… 言い切れないが…




ただ調べたところ、少なくとも
DVD「FANKS the LIVE 2」ジャケットにクレジットされた 3月15日(代々木公演2日目)では、
ちゃんと ♫〜 夢という〜 と歌っていたので、なぜここから流用しなかったのか?
DVDに15日の映像がほとんど確認できなかったことも合わせ、
かなり不可解 な部分である。


これはかなり穿った見方であるが、3月15日分は映像なり音声なりに問題があり、
そのために急遽、メインの3月16日分に対する予備素材として、”最終公演一つ前” という
微妙な日程の広島公演の撮影をしたのでは?という深読みも成り立つ。
(先の「Fool On The Planet」のシンセベース由来の異音を聴けば、
 前日の15日分ではもっと録音に問題が起こっていたという可能性も考えられる)



そして “代替パーツが別の1公演分しかない” ということは、
先の「Fool On The Planet」における差し替えパーツも、
この ♫〜 愛という〜 と歌ってしまった公演日と同じ日が出処という可能性が高い。




———————




木根尚登のコーラスも、一部差し替えられている。

3月16日の公演では本来2カ所、歌詞を間違えていた。
以下の通りである。

1:33  ♫〜 君だけが信じる全てだから →  [修正後] 望む
1:45  ♫〜 You can change your future 時の向こう → [修正後] destiny




———————




さて、ここまではヴォーカルに注目してきたが、それ以外の演奏パートに関しても見ていこう。
この曲の公演日毎の判りやすい違いとして、イントロとアウトロ が挙げられる。


イントロ最初の8小節は小室哲哉の手弾きによるもので、公演毎に微妙に異なる
左手を入れるタイミングが違ったり、装飾的なフレーズを付けたり、
途中からオクターブ上にしたり、コードをベタで抑えているだけの時もあった。


エンディングに関しては、バンド演奏が終わった後、
シングルCDバージョンで聴かれるような、
不穏なシンセストリングスのフレーズも小室哲哉の手弾きだ。
ここも公演日によってはかなり引っ張る日と、あっさり終わる日があった。
(「TMN COLOSSEUM」版はお聴きの通り、あっさり終わっている)


また、トリートメントされて、ほとんど目立たなくなっているが、
3:16  ♫〜 You can change your future 闇の向こう
で左側に聴こえる小室哲哉のミスタッチも3月16日独特のものだ。


以上の点から見ると、少なくとも、
小室哲哉の手弾きパート + 松本孝弘の特徴的なギターソロは3月16日のものである。




———————




では、歌以外の演奏は全て3月16日のものかというと、そうではない。
まず注目すべきは2番の終わりだ。



この「TMN COLOSSEUM」版では2番終了部分の “ウー” というボイスサンプルの直後に
“ゴーッ” というSE が入っているが、
これはアリーナツアー終盤になって加えられた音である。

この部分、代々木を含むツアー序盤から中盤までは、1小節間丸々無音であった。
しかし実際に演奏してみると、この1小節は意外と長く感じられたようで、
観客側には曲が終わったのかと戸惑う様子も見られた。
そのためSEを加えて隙間をなくしたと思われる。

つまり この部分(瞬間)は、ツアー終盤の音 が使われている。



しかしだ。
その直後、再びバンドが in してきてから最後のサビが始まるまでの8小節。(3:45 〜 4:02)
ツアー終盤になると、この部分で小室哲哉がソロを弾くようになる。

しかしこの「TMN COLOSSEUM」版では特に目立つ動きをしていない。
つまり ツアー終盤のテイクではない ことになる。


という訳で、この部分だけを見ても「TMN COLOSSEUM」版は、
複数公演の演奏をチャンポンして作ったトラックということになる。




———————




もう一つ、3月16日の演奏ではないものがある。
Drumトラック だ。

このアリーナツアーの中でも「Beyond The Time」は発売直後の新曲中の新曲である。(注)
それもあってか、他の演奏曲に比べてもアドリブ要素が少なく、
かなり原曲に忠実に演奏されている。

 (注)
 ・「Beyond The Time」シングル発売 1988年3月5日
 ・「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」1988年3月14日 スタート
 (このページ ↓ 順番を間違えてます。どなたか権限のある方、修正願います。
  単語記事: BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を超えて~




しかしここで、
イントロ部分のDrumの入り方 (0:16) に注目していただきたい。

原曲では2拍目に入るスネアのショットが「TMN COLOSSEUM」版には無く、
3拍目からスタートしている。














  原曲での Drum in 部分。赤丸で囲ったところが「TMN COLOSSEUM」版では欠けている。




これはライブアレンジではない。

通常、この部分はツアースタート時から最終日まで変化することなく、
原曲に忠実に演奏されていた

つまり「TMN COLOSSEUM」で聴けるテイクは、
ただ単に、山田ワタルが本来の2拍目から入りそびれてしまっただけと思われる。


で、問題なのは3月15日(代々木公演2日目)も16日(代々木公演3日目)も、
この部分は原曲通り演奏されていたということだ。
なので、当初は16日の演奏から何らかの理由で、
頭のスネア2発を削除しただけかと思ったのだが…



しかし、その後の演奏にも16日と異なる部分が見つかった。
その部分が、1番の最後の小節だ。

「TMN COLOSSEUM」版には3拍目の裏に Tom が一発入っている (2:02) が、
これは ツアー中盤以降の特徴 だ。
Tom では無くスネアの時もあったようだが、
どちらにせよツアー序盤の時点では、ここに仕掛けは組み入れず、
原曲通りストレートに演奏されていた。


この2点から見ても、
この Drumトラックは代々木公演のものでは無い。




———————




以上まとめると、この「TMN COLOSSEUM」版「Beyond The Time」は、
複数のテイクをツギハギして作られている
片方(小室哲哉の演奏など)は3月16日のテイクで間違いないが、
もう一方はいつのテイクだろうか?



・3月15日は歌詞を間違えていなかった。(なのに、それは使われていない)
・“ゴーッ” というSE部分が存在している。
・Drum トラックの特徴。

という点から、この予備テイクは代々木体育館3公演のものではない。
もう少し踏み込むと、SEやDrum の項で触れたように、
ツアーもかなり終盤のものと思われる
ただし最終日ではない。

となるとやはり、DVD の映像と同じく、
『4月4日 広島サンプラザホール』のテイクが使われているのだろうか?




なお、この曲でも3:42のところで “プツップツッ” と2回、プチノイズのような音が入る。
ただこれは収録時のノイズではなく、
この “ウー” というボイスサンプル自体に付いていたノイズのようだ。












—————————————————












「Be Together」

さて自分としては、この曲こそがKDD関連曲に限らず
「TMN COLOSSEUM」全体で見ても1・2を争う問題曲だ。

本題に入る前に、まずはこれを。


前回書いたように、 DVD「FANKS the LIVE 2」ではバッサリ☆カットされていた
木根尚登の声が、このコロシアム版では無事サルベージされている


また DVD「FANKS the LIVE 2」版の方が、若干テンポが遅く、その分時間が長い
ただこれは以前「イパネマ '84」で指摘したのと同じく、
制作時期の違いからくるマスターテープの状態や再生機器の違い程度のことで、
テイク違いというわけではない。




———————




さて、KDD演奏曲に関しては DVD「FANKS the LIVE 2」と
CD「TMN COLOSSEUM」で収録曲が3曲被っているが、
前回見たように他の2曲「Resistance」「Telephone Line」が、
基本、同じテイクのミックス違いでしかないのに対し、
この曲はDVD収録のテイクとははっきり異なる。

自分は1992年8月21日午後2時(その瞬間、時計を見たので憶えているのだ)
このCDを初めて聴いたのだが、冒頭流れてきたオープニングSE音から
『これはDVDと同じ音声だ…』と思いこみガッカリしていたところに、
全然聴いたことのない演奏 が始まって、かなり驚いた。



ただし、今回改めてじっくり聴いたところ、さらに驚く羽目になった。
これだけ印象が異なるのにも関わらず、
冒頭の『Welcome to the FANKS!』を含む、
歌、ギター、ベース、ドラムはDVDと同じテイクだったのだ!!
その差から DVD とは丸ごと別日の演奏だと思っていたので、今になって再び驚いた。




ちなみに、この印象的な『Welcome to the FANKS!』は、
代々木公演終了以降、派手なディレイがかけられるようになり
『Welcome to the FANKS! FANKS! FANKS!…』となる。

ここからも、この「TMN COLOSSEUM」版、
および DVD の『Welcome to the FANKS!』部分は、
代々木公演のテイク であることが判る。




ということは、この「TMN COLOSSEUM」版は、
DVDと同じ音声素材(3月16日・代々木公演3日目の演奏)から、
小室哲哉のパートだけを丸ごとカットして、
ショルダーキーボードの演奏と差し替えてあるのだ。

これについては当時、ライヴ・スタート直後から、
小室哲哉がショルダーキーボードでフロントに飛び出してきた公演日があった…

という情報を見たか聞いたかしたような憶えがあるのだが、
どの雑誌だったのか、あるいは別の媒体だったのかも含め、あまり自信がない。
もし、ご記憶の方はお教え願いたい。




———————




ところで、派手なショルダーキーボード・プレイに耳を奪われがちであるが、
もう一つ、この「TMN COLOSSEUM」版にはDVDのテイクと大きく異なる点がある。

それは曲全体にわたって、
固めのエレピっぽい音色によるコードバッキングが加わっている点だ。
この音色は地味ではあるが、かなり存在感がある。

個人的には、このバッキングの存在が
「TMN COLOSSEUM」版「Be Together」のカラーを決定付けているように感じる。
特に1番Bメロの ♫〜 2人だけがリアリティー の部分に裏打ちで入る所など、
他の「Be Together」では味わえない、おしゃれ感を演出している。





















また、そのフレーズをじっくり聴くと、
・繰り返しが少ない。(コピペではない)
・全編に渡って、バッキングパートにしては、かなりアグレッシブに動く。
という点に耳がいく。

この辺りを聴くと、小室哲哉の特徴である、
全編、手弾きで一気にデータ入力(して、一気にクオンタイズ)したトラックのようだ。




———————




このパートが加えられた理由は簡単に推測できる。

小室パートが通常と異なり、単音しか弾かなくなった結果、
Aメロなどで誰も和音を弾いていない状態が生まれているからだ。
本来、こんな時こそ木根尚登の出番 だと思うのだが、
彼はこの部分では一切ギターを弾かず、ボーカルに専念している。




だが、このバッキングパート。
元素材の出所となると、全くの謎 である。

この(擬似)LIVE CD「TMN COLOSSEUM」が制作・発売された1992年の時点で、
「Be Together」が演奏されたのは以下の通り。

・Kiss Japan Tour(ホールツアー)
・KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX
・STARCAMP TOKYO(東京ドーム公演)
・CAROL TOUR(ホールツアー)
・Camp Fanks!! '89
・RHYTHM RED TMN TOUR

ご覧のように「EXPO」関連以外では毎回演奏されているものの、
いずれのツアーバージョンにも、このようなバッキングは入っていない

特に「CAROL TOUR」(ホールツアー)での同曲は、
「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」のアレンジがそのまま流用
(ただしベーシストがいなくなったので、Bassパートは新たに打ち込み)されており、
最初はここを疑ったのだが、違うようだ。

また、アルバム「humansystem」収録のオリジナルバージョンについてであるが、
確かにこのバッキングパートとよく似た音色・フレーズが入っているのだが、
リズムが細く異なっている
よって、ここからパーツを流用して、貼り付けたというわけでもない。






となると考えられるのは、このエレピ・バッキングは、
ショルダーキーボード・プレイ時の公演専用に用意されたパートであり、
「TMN COLOSSEUM」制作時にショルダーキーボード・パートと、
ペアで移植されてきたという可能性だ。


ただ何故、わざわざ2つのテイク(3月16日 + x月x日)を、
混ぜ合わせる必要があったのかは謎 だ。


DVD「FANKS the LIVE 2」を聴くと、
小室哲哉パートに前回指摘したのと同様の音割れノイズが発生している。
(例えば2番直後のギターソロ部分・左側)
これを回避するため、小室哲哉パートを一旦、全削除したのだろうか?

ただそれなら “小室哲哉パートのみ移植” などとせず、
どうしてショルダーキーボード・バージョンのテイクを、ドラムやギターなど、
丸ごとそのまま収録しなかったのだろうか?




これこそ、ミツカワ個人の考える「TMN COLOSSEUM」最大の謎だ。

真相は闇の中であるが、どちらにせよ、
このようなレア・テイクが聴けたのは素直に嬉しかった。
(で、テンションが上がったところで、
 次曲の「Resistance」がDVDと同じテイクでガッカリしたのだが…)




———————




最後に余談であるが、DVD「FANKS the LIVE 2」での同曲の修正に触れておく。
「TMN COLOSSEUM」版では、丸ごと差し替えられた小室哲哉のキーボード・パート。

本来、3月16日での演奏は、ギターソロが終わった後、
全員でキメのリズムを演奏する部分の後半で、リズムを大きく崩してしまっていた
このテイクが活かされている DVD「FANKS the LIVE 2」では、
この部分がうまく修正されているが、よく聴くとその痕跡を聴き取ることができる。



ちなみに音の修正は効いても、映像がそのままではすぐにバレてしまう。
このDVDではご丁寧に、
その瞬間だけ小室哲哉からカメラが外れる。

これだけでも随分と音の乱れが気にならなくなるものだから、
人間の感覚なんていい加減なものである。




小室哲哉をフィーチャーしていた映像が…




























問題の箇所では、こんな映像(しかも広島公演)に…
この瞬間の小室哲哉パートをよく聴くと、乱れているのが判る。




























問題箇所が過ぎた途端、また映像は小室哲哉に…





































—————————————————












さて次回の企画で、このTM NETWORK の重箱のスミ!」いよいよファイナルとなります。
最後の企画は、以前お伝えしたように「小ネタ☆スペシャル」とさせていただきます。


ただ現在困っているのが、この小ネタ。
いざという時(?)のために、結構貯め込んであった んですよね

だもので、その中から3つ選び出すというのがなかなか難しく、
正直申しまして、1エントリーに詰め込むのには無理がある状況です。
しかし2回に分けてエントリーするのには、やはり時間がなく


というわけで非常に歯切れが悪いですが、
次回のエントリーかどうかはともかく、
『次回の企画』でファイナルなのは間違いありません。

またしばらく間が空きますが、最後まで全力投球いたしますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

またコメントいただく方々にお返事できずにすみません。
その分、小ネタ放出という形でお返しさせていただきます。



んじゃ、また。










2016年4月21日木曜日

[ラストまであと3回] コロシアムと「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 天の巻

ミツカワです。

本来ならこのエントリー、今週の土曜日にupする予定でした。
ただ、今朝起きて「重箱」を覗いたら、なんだか突然アクセス数が急上昇していて
「ん、なんだ? なにがあったんだ???」
と思ったんですが、カレンダーを見て納得。
デビュー記念日だったんですね。

とはいっても僕が TM NETWORK にハマったのは1984年の秋、
ラジオから流れてきた「金曜日のライオン」だったので、
4月21日自体には、あまり感慨はないのです。


とはいえこのアクセス数の急変には、期待とプレッシャーを感じざるをえません。
ということで 本日の予定を全てキャンセル(完全実話)して、
今日中のupを目指し、校正作業にかかることにします。


さあ、4月21日中にアップできるのか?!








—————————————








♫ グラサン、入店お断り。


今回から2回に分けて、いよいよ LIVE CD「TMN COLOSSEUM」の音源分析に入るのだが、
その前に参考資料の DVD「FANKS the LIVE 2 KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」について、
ひとつ書きとめておく。



これに気付いたときは、驚くというより半ば呆れてしまったのだが、
このDVD、木根尚登の声がほとんど消されている。


さすがにコーラスがないと成立しない「Time Passed Me By」では消されていないが、
それ以外の曲は全て、

・「Be Together」のAメロ
・「Kiss You」のBメロ
・「Resistance」のサビ
・「Human System」のサビ

などなど、口をパクパクさせているだけで音声が入っていない。















































         上・ 「Be Together」 /  下・「Human System」





ちなみに「Human System」の大サビ
♫〜 She is here and he is there in the human system にて、
ようやくその声が聴こえるが、これはライヴの生声ではなく
レコードからサンプリングされたコーラスが、打ち込みで鳴っているだけである。


人間の耳は曖昧なもので、目の前で一生懸命口をパクパクさせている映像が映ると、
なんとなく 声が聞こえてきてしまうから恐ろしい。
こういうことがあるので通常、音に関する検証は映像を切って行っている。





以前こちらで、1988年秋にテレビ番組「eZ」で流れた「Kiss You」では
映像は最後の2秒以外はこのDVDと同じだが、音声のミックスはまったく異なると書いた。

今回それを思い出して確認してみたら、案の定「eZ」版ではカットされていない
Bメロ(♫〜 地球を駆け巡る冷たいニュース 〜)などで、
上をハモっている木根尚登の声がはっきり聴こえる。

なので、もともと声が収録されていないわけでは無い。
映像商品化される際に、意図を持って削除された ということになる。




はっきり言って、TMのライヴにおける木根尚登の存在意義の第一はコーラスなので、
こうなってしまうと本格的に “この人なんのためにいるの?” 状態である。
いったい制作陣の意図はどこにあるのか?知りたいところだ。




だが、この点については DVDに限った話ではなかった。
この後、曲毎に見ていく。








—————————————








では、駆け足になってしまうが1曲ずつ見ていこう。

なお曲順は当エントリーの流れに沿ったものであり、実際のライブの曲順、
あるいは CD「TMN COLOSSEUM」での収録順とは異なることをご了承いただきたい。


また特に注釈がない場合、これ以降は

・当エントリーの主題である、1988年春に行われたアリーナツアー
 「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」のことを『KDD』
・その模様を収録したDVD
 「FANKS the LIVE 2 KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」のことを『DVD』

と表記する。




また、ここでは CD「TMN COLOSSEUM」に収録された全23曲中、
KDDでの演奏楽曲・全6曲を、2つのグループに分ける。

このグループ分けの意味は、お読みいただければ分かる。


A群
・Resistance
・Self Control
・Telephone Line

B群
・Fool On The Planet
・Beyond The Time
・Be Together

B群については次回、採り上げる。








—————————————








♫「Resistance」


前回『コロシアム攻略のための簡単で確実な “別ルート” に気付いてしまった』と書いたが、
その 別ルートの入り口 がこの曲である。




一応、まずは DVD と CD「TMN COLOSSEUM」それぞれの「Resistance」を並べて、
正攻法の聴き比べをしてみた。

これに関しては以降の曲も同様であるが、基本的に演奏フレーズだけでなく、
たとえ譜面上、同じように演奏しても
再現不能な(再現する意味もない)箇所を集中してチェックした。

例えばドラムであれば、ハイハットをオープンにしたまま叩き続けた時の音のうねり方。
ギターであればフィードバックのかかるタイミングやその長さ・音の消え方などである。

結果、MIX は異なるものの、ボーカル・ドラム・ベース・ギター・シンセなど、
演奏はすべてDVDと同じ = 3月16日のテイクである。
(3月16日と判断した理由は後で述べる)




ただし実際のライヴの演奏そのままというわけではない。
CD / DVD とも同じ箇所に手が入れられている




TM NETWORK の特徴のひとつは、派手なライブアレンジであるが、
数々の名アレンジに混ざって、
正直なところ "頭を抱えるようなもの" も存在した。




その内の1つが、この「Kiss Japan Tour」
〜「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」の時期に演奏された「Resistance」である。

といっても DVD や CD「TMN COLOSSEUM」では分からないだろう。
両者とも、その “問題箇所” がすっぱりカットされているからだ。




しかし当時、ライヴ会場でこの曲を生体験された方は憶えているはずだ。
サビの ♫〜 レジスターンス と言う部分に、サンプラーでいじくりまわした、
まるで地獄の底から聞こえてくるような
超低音の ♫〜 レジスターンス というボイスが重なっていたことを。

曲調と関係なく、というよりむしろ曲をぶち壊すような、
夢に魘される様な恐ろしい声 だ。
ミツカワはこれのおかげで、
ライヴの「Resistance」が、気持ち悪くて仕方がなくなってしまった。(注)



これがCDとDVDは別MIXにもかかわらず、両者ともバッサリとカットしているということは、やはりスタッフから見ても、常識的に考えれば “ナシ” だったのだろう。

おかげで今ではミツカワも、このライヴバージョンを心穏やかに聴くことができる。




(注)しかしある時、気付いたのだ。
   『これ、ライヴアレンジじゃない!CDの「Resistance」にもあの声が入っている!?』

   ただしレコードでは、入れた意味がない程ほとんど聴こえない。
   問題の声を知っていて、アルバムにも入っているはずと集中して聴いたところで
   初めて聴こえてくるレベルだ。
   あえて言うなら、1番最後のサビが割と聴きとりやすい。








—————————————








さて、ここからいよいよ 本題の “別ルート” に入る。


このライヴ版「Resistance」の重要なところは演奏ではない。
結果的にかなりのロングパスになってしまったが、
実は前企画のネガティブエントリー3回目において、今回の為の前フリをしておいた。
それがDVDにおける “Resistance の音割れ” である。

詳しくはこちらの『♫ 八千草薫よ永遠に…。』部分をお読みいただきたい。
(ギターソロ13小節目で左側にノイズが入り、20小節目の辺りでまた小さいノイズが入る)




これを踏まえたうえで、「TMN COLOSSEUM」版の「Resistance」を聴いてほしい。
トリートメントされてDVDの音声ほどは目立たないが、
しかしやはり同じタイミング(長さも含め)で同じ種類の音割れノイズが確認できる



これが何よりも雄弁にCDとDVDが、同じテイクであることを物語っている。



さらに興味深いのは、両者のノイズがのるタイミングは同じだが、パンニングが
・DVD「FANKS the LIVE 2」→ 左側
・CD「TMN COLOSSEUM」→ 右側
と、異なっていることだ。

つまりこのノイズは、2MIXのマスターテープに起因するものではなく、
MIX前のマルチトラックテープの段階(おそらくライブ収録当日の時点)で、
既に音割れしていた ことになる。



そしてDVD (左側)・ CD「TMN COLOSSEUM」(右側)
それぞれのノイズと同じ空間に位置しているものといえば…
小室哲哉の手弾きによるシンセである。


つまりこの音割れは、小室哲哉の手弾きシンセで起こっているわけだ。








—————————————








ここで一旦コロシアムを離れ、
参考資料として CD「TMN GROOVE GEAR」を聴いてみよう。

ここに収録されているKDD関連の4曲は、
すべて 1988年3月16日とクレジットされている。




→ 今更ですが、当検証は全て『このクレジットが正しい』ということが前提になっています。




またその製作期間、およびコンセプトから「TMN GROOVE GEAR」では、
「TMN COLOSSEUM」のような手の込んだ編集はされていない。

その上で各曲を注意深く聴くと気付くだろう。
DVD および「TMN COLOSSEUM」の「Resistance」と
同じ類いの音割れが聴きとれる ことを。


・「Self Control」→ 4:26(右側) 0:38もか?
・「Don't Let Me Cry」→ 0:42〜50 2:12〜22(右側)
            その他、曲中・エンディングなど断続的に起こっている。





ここからもDVDの音声部分、および CD「TMN COLOSSEUM」の音声が、
3月16日収録のテイクを元に製作されたことが分かる。

もっとも 音声収録班が毎回やらかしていた のなら話は別だが、
たとえそうだとしても「Resistance」と、この後触れる
「Self Control」「All-Right All-Night」の3曲は、それぞれ肝心の演奏自体が同じなわけで、
歌を含む演奏+このノイズが完全に一致することを考えると、
それぞれ1988年3月16日・代々木体育館3日目のテイクが元となっているのは間違いない。



だったら何故、DVDのパッケージには『3月15日』とクレジットされているのか
謎すぎるが、
ひょっとすると映像は15日が主となっているのだろうか?

これについては、次回に。








—————————————








♫「Self Control」


さて「TMN GROOVE GEAR」版の「SELF CONTROL [LIVE VERSION]」と、
CD「TMN COLOSSEUM」の「Self Control」は同テイクを素材として製作されている


ここで両者の「Self Control」を比べてみよう。
CD「TMN COLOSSEUM」ではイントロの頭4小節がカットされているが、
その後の演奏および歌唱は CD「TMN GROOVE GEAR」と全く同じである。

例えばボーカルでいうと、2番のAメロ ♫〜 君のドアを叩くよ 〜で、
ピッチが不安定になるところなど、両者が一致するのが判るだろう。





ただし「TMN GROOVE GEAR」版と「TMN COLOSSEUM」版では、
尺以外に 大きく異なる点がある。




なんと「TMN COLOSSEUM」版では(またしても)
木根尚登の声がバッサリと消されているのだ!!

本来であればこの曲、彼は冒頭からずっと宇都宮隆とユニゾンで歌い続けているのだが、
「TMN COLOSSEUM」版では宇都宮隆が一人で歌っていることになっている。

しかし「TMN GROOVE GEAR」版を聴けば、ちゃんと木根尚登の声も収録されているのだ。
つまりこれも、意図を持ってカットされたことになる。






一方、例のノイズについてだが、この曲でも
「TMN GROOVE GEAR」の「Self Control」と同じ位置に、
同じ類いの音割れノイズがのっている。
(こちらはむしろ「TMN COLOSSEUM」版の方が目立つ)

つまり「TMN GROOVE GEAR」のクレジットに倣うなら、
「TMN COLOSSEUM」の「Self Control」も、
1988年3月16日・代々木体育館3日目の演奏ということだ。


既に「TMN COLOSSEUM」に収録されていたのにもかかわらず、
なぜ「TMN GROOVE GEAR」にも同じ音源を入れたのか謎だが、
結果的に同じ素材を使っても MIX でこれだけ雰囲気が変わるということが、
よく分かる例になっている。(特にドラムの音色は全く別物に聴こえる)



なお「TMN COLOSSEUM」とは関係ないが
「TMN GROOVE GEAR」収録の「All-Right All-Night」に関しては、
以前、検証したようにビデオ「FANKS the LIVE 4」に収録のものと同一のテイクである。








—————————————








♫「Telephone Line」DVD「FANKS the LIVE 2」版


一曲くらい、サラリと終わらせよう。
この曲については特に語ることはない。
歌・楽器類、共にDVDと同テイク = 3月16日の演奏だ。


…すまん。
ミツカワは生まれてこのかた “バラード” というものに興味がないのだ。
(理由は単純 → チャカポコしていないから!)
これでも一応、必死に聴き比べたんだからね!!





というわけで、さすがにこれだけではサービスが悪いので お土産情報。

この曲の頭に入っている、アナログ・デジタル問わず電話の着信ベルは、
アリーナツアー(KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX)になってから付け加えられたもの。
ホールツアー(Kiss Japan Tour)の時はアルバムで聴けるとおり、
トゥルルルル という音だけであった。

ここからも、この演奏がアリーナツアーのテイクであることが分かる。







        はい、おしまい!







…と、次の曲に行こうとした瞬間、気付いてしまった。
DVD と「TMN COLOSSEUM」とで違うパートがある?!

打ち込みで鳴っている…といってもシーケンサーではなく、
リズムマシンで鳴らしているパーカッション。
シェイカーとタンバリンのリズムパターンが違う のだ!!




とはいえ、主たる演奏自体は先程書いたように DVD と同じ = 3月16日のものだ。
間違いない。
つまりこのパーカッションは CD「TMN COLOSSEUM」制作時に差し替えられたものだ。








—————————————








「TMN COLOSSEUM」版の話をする前に、まずDVD版を見てみよう。
こちらで聴けるリズムパターン(譜面参照)が、本来のライヴで流れていたものだ。





















だが注意して聴くと、変なことに気付く。
“2番に入ってから2小節目の3拍目の裏” という、
中途半端な所からスタート しているのだ。

これは一体どうしたことだろう?…と考えた途端、
あることを思い出して、思わず
『あああっ!!』と声を上げてしまった。






先に書いたように、この検証は映像を視ずに音声だけを繰り返し聴いている。
さらに言えばビデオ発売当時、購入した日にカセットへ音声部分を録音し、
その後はそれだけで楽しんでいたので、
実のところ映像自体は、この検証始めるまで数えるほどしか視ていない

特に自分はバラードに興味が無いので、
この曲に関しては音すらもよく聴いていなかった。





しかしそれでも1989年、この曲の映像を初めて視た時に、
怪訝に感じたこと を強く憶えている。


『この人(小室哲哉) は、曲中に持ち場を離れて一体何をしているんだろう?』
『次曲の準備にしては、早すぎるよなぁ…』


慌ててDVDを引っ張り出し、映像を確認する。
やはりそうだ。
その怪訝に感じた部分こそ、まさに問題の箇所「Telephone Line」の2番冒頭だったのだ。






画像で確認しよう。


2番が始まった途端、小室哲哉が急にキーボードから離れ、
自分の後ろに並べられた機材ラックに向かっていく。






























そこで何か操作をしているのだが、肝心の部分は木根尚登の影に隠れ見えない。






























その後、再びキーボードの前に戻りストリングスの音色で演奏を再開する。






























この時、小室哲哉が操作した機材は何か?

真横から撮っているので前後の距離感が掴みづらく、
はっきりと “どのラックの、この機材” とは断定しづらいのだが、次の画像を見て欲しい。



























小室哲哉の背後に林立する機材ラックは全部で6つ。
そのラックから3つの機材がライブ中、常に引き出され操作できるようになっている。

その内、2つがシーケンサー。
そしてもう1つ、この画像では1番手前に映っているのがリズムマシンだ。




これを踏まえた上で、もう一度例のシーンを見直してみよう。
どうだろうか?
まさに 小室哲哉が操作していたのは
リズムマシンではないだろうか?




つまり小室哲哉はこの時、
本来なら2番が始まったところで発音しだすリズムマシンがシンクしていないことに気付き、
一旦持ち場を離れ、リズムマシンをマニュアルでスタートさせたのではないだろうか?

だからDVDで聴けるような中途半端な位置から
シェイカーとタンバリンが鳴り始めるのでは?と考えられる。



見方によってはこのDVD、ライヴにおける
プチ・トラブルの発生と解消までを、
つぶさにとらえたドキュメント映像
だったのである!!








—————————————








♫「Telephone Line」CD「TMN COLOSSEUM」版


ここでようやく CD「TMN COLOSSEUM」版の「Telephone Line」に話を移す。
次の譜面が、新しく差し替えたパーカッションのリズムパターンだ。
このMIXでは左側に位置している。





















ただなんとも奇妙なことに、わざわざ差し替えたわりには、
やはり中途半端な場所(DVDと同じ箇所)からスタートしている。

これを聴く限り、新しく打ち込み直したのではなく、
元から鳴っていたリズムパターンのお尻だけを切り取ったのではないだろうか?(譜面参照)





















なんでわざわざフレーズを変えたのか謎すぎるが、穿った見方をすれば、
新しいパターンは1小節ベタで鳴ってない分、
途中からスルっと入ってきても目立たないといえば目立たない。

遅刻して授業中に、
こっそり教室に入ってくる奴みたいだが…。





ただし、この「TMN COLOSSEUM」版の頭の痛いところは、
元々鳴っていた(DVDで聴ける)シェイカーとタンバリンが完全に消えておらず、
バンド演奏がブレイクした瞬間やエンディングなどで静かになると、
結構、大きな音で聴こえてしまっている ということだ。



・新しく加わえたリズムパターン → 左側
・元々のリズムパターン → センター



MIX をやり直したはずなのに、なんでこんなことになっているのか?
どこかのマイクにカブり込んでしまい、完全に消すに消せなかったんだろうか?

そのため演奏が完全にブレイクする 4:21 〜 4:25 などは
両方の音が混ざり合って聴こえ、
気持ち悪い音像になってしまっている。

全くもって 意味が分からない修正 である。





ただしDVDで聴ける本来のライヴ音声では、
小室哲哉のオルガン音色ソロが終わった後、
同期しているリズムマシンがループ垂れ流しで発音しているため、
シーケンサーのテンポが刻々と変わっていくのに完全同期して、
同じリズムパターンが じわーっとテンポが変わっていく、
という妙なことになっているが、
(人間のパーカッショニストなら、こんな編曲・演奏はしないはず)
修正された「TMN COLOSSEUM」版では、この部分からパーカッションが消えている。

少なくともミツカワにとって差し替えた意味が唯一、理解できるのはここだけである。
しかしそれなのに、上で指摘したように
元の音声がうっすら聴こえてしまっているのだが…。





ただ、この修正方法を見る限り「TMN COLOSSEUM」の制作作業というのは、
基本的にあり物の素材を寄せ集め、切り張りしているだけであり、
メンバーが参加していない以上、新しくスタジオで加えられた演奏は無いとみえる。

つまり「TMN COLOSSEUM」の中に聴き慣れない(既発商品には含まれない)パーツ、
ギターソロやシンセブラスなどが存在すれば、
それは 別のライブ・テイクの収録音源が存在している ということになる。








—————————————








というわけで、今回見てきた『A群・3曲』は手は加えられているものの、
基本的に1988年3月16日の演奏を加工したものであった。

しかし次回、採り上げる
『B群・3曲』は、どうもこの枠に収まらないようだ。




というわけで、
この『KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX 地獄』は次回ついにファイナル!!
どうにも時間が作れず、ノロノロ運転が続きますが、次回も気長にお待ち下さい。

んじゃ、また。







まだ具体的な発表ができる段階ではなく、もどかしいのですが、
ミツカワは現在、自身の音楽活動において、
人生に何度も訪れないような、大きな転機を迎えています。

そのため、どうしようもなく時間が足りず、皆様のコメントに対する返信ができません。

どう書いても言い訳になってしまい、誠に心苦しく感じてはいますが、
返信に費やす時間を、少しでも本文の内容をブラッシュアップさせることによって
『お返し』とさせていただければと思っています。

残り2回も全力投球いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

                        2016年4月21日






2016年3月31日木曜日

Are you hungry? 〜 「重箱」は何の為に 〜

前回、『このblogはあと2回で終了です』とお伝えしましたが、
最初の1本を書き進めるうちに膨大な量になってしまいました。
そこで、書きあがった分から複数のエントリーとして分割upしていくことにします。

よって次回から2回に渡る
「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」関連のエントリーはまとめて1回分です。
決してこのまま最終回ではないので、ご安心ください。







その昔、「蒼き流星SPTレイズナー(1985)」と言うアニメがあった。
























…あ、いや、このblogは「TM NETWORKの重箱のスミ!」で間違いないのでご安心を。

その「レイズナー」
設定やストーリーは、このblogとは関係ないので省く。


問題はその最終回。


この番組、視聴率は悪くなかったものの “スポンサーの自己都合による降板” という
特殊事情がきっかけで打ち切りになることとなった。
しかしその決定が遅れたため、
残りの話数に合わせストーリー展開を修正することができなかった。


そこでレイズナー制作陣がとった手段とは…


最終回1話前までは当初の予定通り製作・放送し、その翌週、
そこから 最終回に至るまでの数話を一切カット し、
(ダイジェストなどではない)純然たる最終回をオンエアする、
という、とんでもない方法だった。


もちろん、その前話とは全く繋がっていない。


どれほど繋がっていなかったかと言うと、事情を知らない視聴者は何の疑問も持たず
「あ、自分は前回の放送を見逃してしまったんだな」
と、素直に思ってしまったほどである。(この話の顛末は最後に)







で、その話と、
この「重箱のスミ!」になんの関係があるのか?


途中に別企画を挟んだが、今後のエントリーの流れとしては
以前、進めていた DVD「FANKS the LIVE 2」検証に戻るつもりでいる。

だが実はこの企画、『中編』を書き始めたあたりで、
モチベーションが急激に下がってしまったのだ。


え?飽きたんだろう?


そうではない。
飽きる・飽きないという話だったら、もうバンダナが…とか、アクセが…
とか言ってる時点でとっくに飽きている。
この手の検証作業は、むしろ飽きたところからがスタートだ。





では何故やる気が失せたのかと言うと、
先に答えが分かってしまった から…。





当シリーズのエントリータイトルに “下準備” と書いてあるように、
本来、この DVD「FANKS the LIVE 2」検証は、
あくまで CD「TMN COLOSSEUM」検証のための通り道でしかない。

しかしそのコロシアム音源の検証について、
もっと簡単で確実な “別ルート” に気付いてしまったのだ。



誤解されている方も多いようだが、このミツカワ、
決して コマ送りフェチとかではない ので、
目的もなくDVDを全編コマ送りすることが楽しいわけでは決してない。

できれば本当はやめたいのだ。

アーティストのDVD = 演奏や演出を楽しむ
という、ここしばらく忘れかけていた、ごく普通の幸せを手に入れたいのだ。




あくまで本丸は CD「TMN COLOSSEUM」である。
  ↓
『重箱』に残された回数は少ない。
  ↓
とてもこれ以上 DVD「FANKS the LIVE 2」にエントリーを割いているわけにいかない…。




そこで頭をよぎったのが、
“20世紀が生んだ大発明”『レイズナー方式』である。



DVDの件はぶん投げて、いきなりコロシアムの話を始めちゃおうか…。

  始めちゃおうか…。
        ちゃおうか…。
                おうか…。






…とは言ってもね…
↓ ここまで引っ張っておいて、全く放り投げてしまうようなわけにもいかないよね…
  人として…。

・コロシアムを暴け・下準備編 /「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 前編
・コロシアムを暴け・下準備編 /「FANKS the LIVE 2」を暴け!☆ 中編




というわけで次回から駆け足ではあるが
・CD「TMN COLOSSEUM」
・DVD「FANKS the LIVE 2」
2点まとめて、曲ごとに細かく見ていくことにする。

ただしあくまで本丸はコロシアムなので「FANKS the LIVE 2」中、
コロシアムに収録されていない(かぶっていない)数曲に関してはスルーさせていただく。

それでも取り上げた曲に関してはかなり突っ込んで分析しているので、
その方法論は他の曲にも応用できるはずだ。
ぜひ次回以降、読んで興味を持った方は御自分で分析されて欲しい。




…はあ、やっぱり俺は甘ちゃんですよ…
…俺には V-MAX発動 なんて出来ないっすよ…。







———————————————







さて今回は『重箱』最後となる分析エントリーの前に、
本来書くつもりのなかった “重箱の原点” を吐露しようと思います。

ただしこれは、終わりを迎えるから…ではなく、
blogスタート時とは、状況が変わったと判断したからです。

私情の塊エントリー ですので読む人によっては、
あまり楽しい内容では無いかもしれませんが、
よろしければお付き合いください。







———————————————







♫ なぜ重箱のスミを突くのか?

この「重箱のスミ!」を始めて以来、特に直接お会いした方々からよく受けたのが
『何のためにこんなことしてるんですか?』
という、ある意味ミもフタもない質問だ。

なんで?と言われても『やりたいから』としか言いようがない。
そう答え、それ以上の事は言及しなかった。



とはいえ、ここまでお付き合いいただいた方にはご理解いただけると思うが、
やはり、ただ『やりたいから』だけでは乗り越えられない、
苦行のようなエントリー も多々あった。
やはり自分なりに思うところがあって、この『重箱』を続けてきたのだ。

それは端的に言えば飢餓感危機感である。
しかし『重箱』を始めた時から、
その “リビドー” とも呼べる衝動は 口にするまいと決めていた。

どれだけ筆を尽くしても伝わるものではないし、
場合によっては誤解を招くと思ったからだ。



しかし最近、2014年〜15年にかけて行われたTM30周年の活動を、
『重箱』読者の多くの方々が体験したことによって、
『状況が変わった』『自分の言いたいことが伝わりやすくなった』と感じるようになった。







———————————————







もともとこのblog「TM NETWORKの重箱のスミ!」はスタートする際こちらに書いたように、
“80年代のLIVE活動” を中心テーマ としている。

これはアルバムなどのスタジオ作品よりもLIVEの方が、
TM NETWORK の素がむき出しになっていた、
と感じているからだ。
(これは通常のロックバンドでも同じではあるが、しかしTMの場合、さらに加えて、
 当時のテクノロジーが未熟なため、素が “見えてしまっていた” という側面もある)




先ほどの "リビドー" 。
あえて本音をむき出しにすると、

飢餓感とはー
 ・現在、残されているパッケージに “80年代の TM NETWORK の実像” は無い。
  TM NETWORK の特異性はこんなもんじゃない。


そして危機感とはー
 ・当時の体験・記憶を持つ者と、持たない方との間で、
  TM NETWORK 像にズレが生じている。

ということになる。



しかしこんなことを書けば、すぐさま
『いや、そんなの TM NETWORK に限らず、どのバンドだって同じだろう!』
と言われて、あっという間に世代間論争と化すことが目に見えている。

それは本意ではないし、きっと自分が本当に言いたいことは伝わらないだろう、
という諦めもあり、この『重箱』では禁句としてきた。







———————————————







だが、どのバンドだって同じではない。
TM NETWORK に関しては特殊な事情がある のだ。

その特殊な事情を箇条書きにしてみる。
詳細は後ほど説明する。


[特殊事情] その1
 ・TM NETWORK における “ホールツアー” と “アリーナツアー” は、
  同タイトルのツアーでも内容がかなり異なる、事実上別内容となっている。

[特殊事情] その2
 ・80年代の TM NETWORK のホールツアーは、全くと言っていいほど商品化されていない。

そして…

TM NETWORK の本質はホールツアーにこそある。
つまり後追いの方が『80年代の TM NETWORK の実態』を追体験する手段が残されていない。




さらに…

[特殊事情] その3
 ・商品化されているものにしても、80年代のモノは曲順の入れ替えや、
  実際のライブとは違う演出など、作為的な編集が多く、
  実際のライブとは印象が異なるものも多い。
  さらには収録時間がかなりコンパクト(収録曲数やブツ切り編集)なせいで、
  流れが見えない。



よって当時の体験・記憶を持つ者と、持たない方との間で、
かなり TM NETWORK 像にズレが生じている。

このズレをなんとかしたい。
自分はそんな焦りや苛立ちをずっと抱えてきた。







———————————————







今回、なぜこのような角の立ちかねない『禁句』を書く気になったかというと、
先ほど書いたように『状況が変わった』と判断したからだ。


例えば今まで [特殊事情] その1 に関して
 『ホールツアー「Kiss Japan Tour」と、
  アリーナツアー「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」は全然違うんだ!!』
と口酸っぱくわめいても、
 『それはお前が細かいことに拘っているからでしょ。
  普通に考えてアリーナツアーの方が豪華に決まっているんだから、
  それが見られればいいじゃん』
という感じでスルーされてきた。




しかし、2004年冬から年を跨いで行われた、ホールツアー「Quit30」と
アリーナツアー「QUIT30 HUGE DATA」を体験した方には、
すんなりと理解してもらえるのではないだろうか?
「QUIT30 HUGE DATA」が
「Quit30」の代替になりえないことを。

また、その後出たBlu-rayのパッケージからは、
数年後 [特殊事情] その2 と似た状況になる可能性も孕んでいる。

(ただし “本質はホールツアー” に関しては「Quit30」は例外だった。詳細は後に)







———————————————







なお 旧TM NETWORK 及び TMN の活動で、アリーナツアーと銘打ったのは2本しかない。
しかしここで言う “アリーナツアー” とは、
いわば ホールツアー終了後のお祭り のことである。
よって以下のものも含む。

この話題と関連するツアーだけを書き出してある。カッコ内の数字は公演回数。









ご覧のように商品化されているのは全てアリーナツアーの方である。
特に酷いのは TM NETWORK がようやくブレイクし、
そこから人気絶頂へと至る、黄金期であった
1987年〜89年のホールツアーが一切商品化されていない。







———————————————







・TM NETWORK における “ホールツアー” と “アリーナツアー” は、
 同タイトルのツアーでも内容がほとんど異なる、事実上別ツアーとなっている。

・アルバムのコンセプトを明確に反映しているのはホールツアーの方であり、
 アリーナツアーはいわばツアー終了時に行われる『お祭り』(注)

これはミツカワのノスタルジー混じりの主観ではなく、
小室哲哉自身が 旧TM NETWORK 時代に認めている。

その理由が非常にわかりやすく、納得のいくものなので紹介しておく。

 (注)ここは「QUIT30 HUGE DATA」と違う点だ。
    これはすでに「QUIT30 HUGE DATA」の翌月に、
    お祭りライブ「TM NETWORK 30th FINAL」が行われることが決まっていたから、
    という特殊事情によるものだろう。





どんなにリハーサルを重ねても実際にツアーに出れば、
そして、長いツアーになればなるほど
『ここはこうしたい』『あそこはこうしたい』という欲求が出てくる。

通常のバンドならライブ当日のリハーサルにでも、示し合わせればよいのだが、
打ち込みがライブ全体を支配している TM の場合
そう簡単にはいかない。


あくまで80年代当時のテクノロジーである。
”エンディングを16小節伸ばしたい”
ただそれだけでも打ち込みのデータを修正し、ドラマーと打ち合わせをした上で、
初めてリハーサルの俎上に乗るわけだ。
もちろん次の曲へのデータの繋がりにも注意をはらわなくてはならないだろう。
PAや照明と連動している場合もある。



つまり小回りが全然効かない。
そのせいで気軽に修正できず『こうしたい』が溜まり溜まっていく。



そのフラストレーションをホールツアーとアリーナツアーの間の、
まとまった準備期間で一気に解消しようとするわけだ。
その結果、ライブアレンジや演出が一新され、同タイトルを冠していながら、
ホールツアーとは似ても似つかぬアリーナツアーとなるのである。



この発言を裏付けるように、大半が生演奏で行われた
「RHYTHM RED TMN TOUR」においてはアリーナツアーが存在していない。
(メンバー・スタッフ間では、区切りとして終盤の大阪・東京・名古屋の3箇所は
 アリーナツアーと認識していたようだが、
 一般客に向けてはそのようなアナウンスは行われなかった)

そのかわり、このツアーでの演奏は初期の “固める時期” が過ぎると、
日々刻々と形を変えるようになっていく。







———————————————







もう一つ。
これは直接アリーナツアーについて言及したものではないが、
結果的に同じことを指しているので紹介しておく。



小室哲哉曰く『TM(のツアー)は東京で観るより地方で観る方が面白いよ』とのこと。



その理由は東京(大都市)でのコンサートは、
テレビや雑誌などマスコミ関係の取材や、映像収録が入ることが多く、
それだけにあまり TM NETWORK のパブリックイメージから
かけ離れたことをするわけにはいかない。
ある程度パブリックイメージをなぞるような優等生的なコンサートを意識せざるをえず、
つまり、はっちゃけたことは演りづらい。


それに比べ地方のツアーは “旅の恥はかき捨て” ではないだろうが、
TM NETWORK のイメージを飛び越えたような、
その場限りの演奏や演出が行われることも多かった。
特にホールツアー最終日が地方公演だった場合は、
まさに無礼講だった。




ちょっと脇道にそれるが、自分にとって強い印象が残っている
「CAROL TOUR」最終日(1989年8月18日・大阪公演)の様子を紹介しよう。

  ・まだライブ開始前。
   テープによる『Kaoru Abe on Drums』という出演者アナウンスが流れたとたん、
   閉じた幕の向こうで既にスタンバイしていた阿部薫がドラムを叩き出し、
   客席に笑いと歓声が広がる。

  ・ミュージカル中に変な動きをして笑いをとるライーダが混じっている。

  ・「Kiss You」のブレイク箇所で
   通常なら宇都宮隆が「♫〜 I Kiss You」と言って演奏が再開するところ、
   この日はニヤッと笑って「最後だぜ!」

  ・「GET WILD '89」で、通常なら小室哲哉がショルダーキーボード、
   宇都宮隆がハンドマイクで『ゲゲゲゲ』とやりあうところが、この日は逆に。
   つまり、宇都宮隆がショルダーキーボードでボイスサンプルを連打し『ゲゲゲゲ』!
   それに合わせて小室哲哉がハンドマイクを持って、
   生声で『ゲゲゲゲ』(←もちろん言えてない)!!





ここでは地方 VS 大都市という話になっているが、
マスコミの注目度という観点から考えれば、
そのままホールツアー VS アリーナツアーと置き換えても通じる話だ。

結果、アリーナツアーとなると演出は派手になるものの、手堅いものとなって、
セットリストもヒットメドレー(いつものあの曲)化する。
ライブアレンジもホールツアーの方が、良くも悪くもラディカルなものが多い。


やはり TM NETWORK の本質(アルバムコンセプト)はホールツアーにこそある。
私感ではあるが、しかし当時の体験がある方なら理解いただけるはずだ。







———————————————







 [特殊事情] その3 について

ここまでは商品化されていないものの話をしているが、TMの場合、
商品化されているモノについても深刻 だ。


例えば次エントリーの主題である「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」は本来、
TMの歴史上・初の専属ダンサーが舞台に立った、1つの転換期である。
(ホールツアーの「Kiss Japan」までは専属ダンサーはいなかった)



しかし商品化されている DVD「FANKS the LIVE 2」では、
この要素がバッサリ切られて、
映っているのは「Kiss You」わずか1曲。
しかも、ほとんど背景と化している。


だが実際のライブでは、フロントで宇都宮隆と並んで踊り、
曲数はそれほど多くないものの、かなり印象的な活躍を見せた。
この時、なにしろ宇都宮隆がダンサー(しかも女性)と一緒に踊る、というのは
初めてのことなので、特に女性ファンの反応は凄かった。

CD「TMN GROOVE GEAR」収録「DON'T LET ME CRY [LIVE VERSION]」の
間奏部分(4:14〜)で突然沸き起こる歓声というか悲鳴は、
ここで宇都宮隆とダンサー陣が絡み合うような動きをしたからである。



しかしDVDには、この記念すべき初代専属ダンサー陣の 名前すら記載がない。
あまりに不憫なので、ここに明記しておく。































とまあ、商品化されていてもこの体たらくなので、
商品化されていないホールツアーの実態など、体験されていない方には知る由もない。

ここから生じる TM NETWORK のイメージのズレが、
自分としては歯がゆくて仕方がなかった。

TM NETWORK の実像をみんなで共有し、そしていずれ来る
TM NETWORK が存在しない時代 へと伝えたかった。







———————————————







ここまで書けば2015年1月に公開された映画「TM NETWORK THE MOVIE 1984~」に
どれだけ期待し、そして落胆したか
分かっていただけただろう。


これをもって Epic Records を責めることは簡単だが、
だがしかし自分はこれを、自分たちファンの敗北だと感じた。



多くの方々と話しても飢餓感を感じない。



大人として現状に理解を示し受け入れている、というのなら構わないのだが、
冒頭の「レイズナー」のように、すっ飛ばされていることに気付いていないのでは?
と感じることが多かったのだ。



Epicにとっては商売なので値付けはともかく、売れると判断すれば、
いきなり商品化することはなくとも、先の映画のような場で断片的にでも混ぜて、
ファンの反応を伺う事はしたであろう。

(そういえば映像自体はNHK放送版と同じであったが、
 1988年8月の「T-MUE-NEEDS STARCAMP TOKYO」が、
 映画用にブラッシュアップされていたのには驚いた。
 これは1種の観測気球なのだろうか?と思ったのだが、その後何の音沙汰もなし…)







———————————————







♫ なぜ動画の編集を見るのか?

しかし、いくら『実像をみんなで共有したい』などと鼻息荒く言っても、
当時、収録されていなければどうしようもない。

そこで『どのホールツアーが収録されていたか?』という尻尾を掴むために、
検証を始めたのだ。


以前も書いたが、結果から見る限り TM NETWORK のライブでは
(商品化目的での)音声収録は行われておらず、
商品化されているライブ音源は全て映像収録からの副産物である。




これを逆に考えると、
ライブ音声が存在していると言う事は、その映像も存在していると考えられる。

つまり CD「TMN COLOSSEUM」などのライブテイクの中に、編集素材として、
ギターソロなど、たとえ一部でも商品化されていないパーツが紛れ込んでいれば、
"そのパーツが実際に演奏された日" の映像も存在する可能性が高いということだ。
(そして「TMN COLOSSEUM」内にそのパーツは存在している。詳細は今後)




ただし映像・音声とも収録セッティングはしたものの、
映像は(当時はフィルム代が高かったので)一部分だけ収録して撤収。
音声班だけ残って全編収録したという可能性もなくはない。
「RHYTHM RED TMN TOUR」における1991年2月の仙台公演は、
残念ながらそのパターン のような気がする。




しかし、以前こちらで検証したように、
「Fanks! Bang The Gong tour」は、かなり絶望的ではあるが、
「Kiss Japan tour」と「CAROL TOUR」に関しては
確実に全編収録されている のだ!

最近、新たに気付いたのですがこのシーン ↓








おそらく「Fallin' Angel」のエンディング近くの映像と思われます。







———————————————







自分たちは1番コアな部分を食べられずにいる。
この現状に対し、みんなにもっと飢餓感を持って欲しい。
その一心で書いてきたのが、
この「TM NETWORKの重箱のスミ!」だった。






以上、内容はともかくミツカワの必死感のワケが伝わればと書き連ねました。
私情たっぷりのエントリーにお付き合いいただき、ありがとうございました。

さて次回から2回に分け CD「TMN COLOSSEUM」収録の
「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX」演奏曲を見ていきます。
合わせて DVD「FANKS the LIVE 2」の気になる点も見ていきますので、お楽しみに!


んじゃ、また。







———————————————







 レイズナー・その後。

一応、この空白の部分は放送終了4ヶ月後に『OVA』という形で発表された。
でも80年代中期って、やっとこの手の流通方法が一般化するかしないかって時代ですからね。
メイン視聴者層だった中高生には1本1万円近くするビデオはなかなか手が出せず、
結局 この空白を埋められなかった人は多かった です。

ちなみにミツカワは、ちょうどこのビデオ発売時期が
秋の文化祭シーズンだったこともあり、
某大学の某サークルで上映会をやることを聞きつけ、潜り込んで見てきました。